昨季王者に雪辱のPSG、“本物”の突き抜けた存在へ【CLコラム】
試合には負けたが、パリ・サンジェルマンは勝った。ネイマールは「あとほんの少しが足りず」、エンバペはオフサイド判定に悩まされ続け、ひとつもシュートが決まらなかった夜の終わりに……最も大切な目標は達成された。バイエルン・ミュンヘンをアウェーゴール差で退け、クラブ史上3度目にして2年連続のUEFAチャンピオンズリーグ準決勝進出をもぎ取った。
いくつもの悪魔をついに振り払った。カタール資本参入の翌年から9季連続でチャンピオンズリーグ決勝トーナメント進出を果たしてきたPSGにとって、ベスト4入りの壁はひたすら厚かった。1年前にようやくセミファイナル進出、さらには初の決勝進出を果たしたものの、本当の意味で突き抜けたとはみなされなかった。
昨季の過小評価の理由は、対戦相手の名前のせいでもある。組み合わせ抽選会の翌日に、フランスの日刊紙『レキップ』が「このレベルでは経験の浅い対戦相手。(優勝まで続く)ロイヤルロード?」と書いたように、たしかに25年ぶりの快挙だったし、たしかにアディショナルタイムでの劇的な逆転勝利ではあったけれど、どこかアタランタには勝って当たり前という空気が漂っていた。一方で今回はネイマールや、内転筋を痛め欠場のマルキーニョスに代わってキャプテンを務めたキンペンベが強調したように、「ヨーロッパチャンピオンにして世界チャンピオンを退けた」ことが、去年の決勝のリベンジより、むしろ格式的な観点から重要だった。
また、新型コロナウイルス禍の影響で、昨季のいわゆる「ファイナル8」は、ポルトガルでの1試合勝負だったことも大きい。なにしろPSGはこの9年間で、1stレグを制しながら2ndを落として敗退した苦い経験を、3度も味わっている。特に2017年ベスト16の対バルセロナ戦は1st Legをホームで4-0と圧倒し、2nd Legも90分間は1-4と踏みとどまりながら、そこから2ゴールを奪われ大会を去った。2019年にはマンチェスター・ユナイテッド相手に敵地で2-0とリードして折り返しながらも、地元で1-3で敗れ敗退。「あの時はしばらく立ち直れなかった」と、今試合の後に初めて、キンペンベが当時の辛かった思いを吐露したほど。
しかも今年も4年前と似たような状況(ベスト16、対バルサ、1st Legを4-1と大勝)で、2nd Legを1-1で切り抜けたものの、GKケイラ―・ナバスのスーパーセーブ連発以外はすべてが酷評の対象とされた。PSGのスポーツディレクターであるレオナルドも「いつも2ndが駄目なんだ。2戦目を上手くコントロールするため、アプローチを変えねばならない」と、4月7日のバイエルン戦1st Legを3-2と敵地で制した直後に指摘していた。
だからこそ今回はホームで0-1のスコアにも関わらず、試合内容から「2戦合わせての勝利」という印象を強く残した。PSGはついにチャンピオンズリーグにおける2nd Legの戦い方を憶えた、と試合直後の討論番組で手厳しいジャーナリストたちも口々に評価する。
「バルセロナは2試合の末に退けたのであり、バイエルン戦もやはり2試合で退けたのだ」と記者会見で語ったマウリシオ・ポチェッティーノ監督は、新型コロナ陽性明けのヴェッラッティとフロレンツィの投入による4-3-3への復帰を避けた。1st Legと同じ4-2-3-1でディ・マリア—ネイマール—ドラクスラー—エンバペの攻撃ラインを変えず、代わりにディフェンス時のポジショニングを改善するほうに注力したという。特に両サイドで攻撃陣が効果的なプレスバックを展開。「攻守ともにひとつのチームであること」というポチェッティーノの理念に従い、最後まで前に後ろに精力的に動き回ったネイマールは、「ディ・マリアだって今日はよく走ったよ!みんなを褒め称えなきゃ」とチーム全体での勝利を強調した。
たしかに地元で勝てなかったことは残念だ。過去2シーズンでたった3試合しかパルク・デ・プランスで負けていないPSGが、今季はホームで6敗を喫している。しかもこの2月末からだけで4敗。無観客試合が続き、我らの応援の声が届かないせいかもしれない……と、今試合のためにサポーターグループが観客席に巨大な「Allez Paris(がんばれパリ)」の文字を飾り付けた。19時以降は外出制限が布かれているにも関わらず、試合中には近隣で打ち上げ花火さえ上げた。
そんなファンたちは早くも、チャンピオンズリーグ決勝トーナメントでバイエルンを退けたチームは最終的に優勝する、というジンクスを信じ始めている。データもたしかに存在する。2007年以来、ドイツの強豪は通算13回決勝トーナメントに進出し、自らが優勝2回、敗退した相手の決勝進出10回、そして優勝が9回!去年は優勝までの道を、まるで赤絨毯が布かれているかのように夢想した『レキップ』紙が、今回は「坂はどんどん険しくなり、空気も薄いが、視界は良好」と表現するのもあながち間違ってはいないのだ。
photo by Getty Images
text by 宮本あさか
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