トゥヘルの見事なマンマネジメント術が、堅守対決でチェルシーを勝利に導く【CLコラム】

  • 2021/04/09

トゥヘルの見事なマンマネジメント術が、堅守対決でチェルシーを勝利に導く【CLコラム】

UEFAチャンピオンズリーグ準々決勝1st Leg・ポルト戦の直前、週末のリーグ戦でのチェルシーの状態は最悪だった。降格圏に沈むウェスト・ブロミッジ(WBA)を相手にホームで2-5の敗戦を喫したのだ。

負け方も悪かった。前半29分にブラジル代表DFチアゴ・シウヴァがやや不運な形で2枚目のイエローをもらって退場になると、そこからチームは一気に崩れていく。その時点では1点をリードしていたので、力の差を考えれば数的不利でもうまく行けば勝ち点3、少なくとも勝ち点1を拾える展開になるはずだった。しかし最終ラインの不注意から同点弾を決められると、チーム全体がばたつき前半のうちに逆転を許す。そして最終的に5失点も喫してしまった。戦前時点でのリーグ戦で、今季20ゴールしか決めていない19位のチームに許していいゴール数では決してない。

しかも試合翌日の練習場では、ある事件も起こった。英メディア『Sky Sports』によると、リュディガーとケパが練習中の接触プレーをきっかけに小競り合いを起こしてしまったのだ。その結果、リュディガーは一時的にロッカールームに戻される処置が行われるなど、深刻な状況だったという。その後チームメイトに謝罪し、この件は終わったそうだが、チャンピオンズリーグ準々決勝という大一番を前に嫌な出来事が起こってしまった。

WBA戦の大敗がチームに影を落としたのではないかと邪推されたが、この件について、ポルト戦の前日記者会見で監督のトーマス・トゥヘルは「(小競り合いは)敗戦とは関係ないことだ」と明かした。続けて「(接触プレーに対する)反応としては良くはなかった。しかし選手たちの対応は素晴らしく、お互いへの敬意を示していた」とも語っている。

いずれにしても、チームは予想外の大敗を喫し、練習場では小競り合いが発生するなど、お世辞にもチーム状況が良い状態ではなかった。しかしこの負のエネルギーを、チェルシーは良い方向に昇華させることに成功する。

敗戦と小競り合いの当事者たちをスタメン起用

まず驚きだったのは、クリステンセンとリュディガーのスタメン起用だろうか。前者は直近一ヶ月のパフォーマンスは非常に高かったものの、WBA戦で途中出場でミスを連発してしまい、5失点を喫する戦犯のうちの一人だったからだ。後者に関しては言わずもがな、小競り合いの当事者だからである。そしてチアゴ・シウヴァは、チャンピオンズリーグでは出場可能にも関わらず、スタメンから外れた。

稀代のディフェンスリーダー抜きで堅牢な守備ブロックを構築できるのか、筆者は心配しながら試合に臨んだが、これは完全な杞憂に終わる。

主将のアスピリクエタと彼ら3バックの面々は90分間集中したプレーを見せたのだ。縦に素早く当てて、時にはフィジカルでゴリ押ししながら攻め込もうとするポルトの攻撃を完全にストップすることに成功する。

集中していたのは、最終ラインの陣容だけではない。チーム全体として高い守備意識が徹底されており、ポルトが攻め込む時間帯も前半にはあったが、それでもほとんどチャンスらしいチャンスを与えなかったのだ。直前にネガティブな出来事が続いたからこそ、汚名返上を目指すために、チーム全体に活気と集中力がもたらされたのかもしれない。問題を起こした選手たちを信頼して起用し、その機会を与えたトゥヘルの采配は称賛されてしかるべきである。

マウントとチルウェルが一瞬の隙をついてゴール

一方でチェルシーは攻撃でも高い集中力を見せた。

試合展開としては攻めあぐねていたものの、それは集中できていないのではなく、機会を探り続けていたようだ。

そもそもユヴェントスを破ってベスト8に進出しているポルトの守備の堅さは折り紙付きで、この試合でも縦パスのコースを切りながら、サイドに追い込む守備のクオリティは高かった。

その守備に苦しまされたチェルシーの状態はスタッツにも現れており、ポルトはパス全体のうち31%がアタッキングサードで回したものだったが、逆にチェルシーは17%しかアタッキングサードでパスを成功できていない。要するに高い位置にまでボールを持ち運べていなかったのだ。

しかしチェルシーは集中力を切らさず、虎視眈々と相手の守備ブロックの穴を探し続けると、前半32分に好機が訪れる。ジョルジーニョがマウントに縦パスを入れると、ポルトの左サイドバックのザイドゥが不用意に食いつくものの、ボールには触れず最終ラインに穴を空けてしまった。

その一瞬の隙をマウントは見逃さなかった。素晴らしいターンで前を向き、打ちやすい位置にボールを置くと、鋭いシュートを放って先制に成功する。チェルシーとしては1本目のシュートで、ゴールを記録することになった。

シュートにまで持ち込めない停滞感が漂う展開ながら、ゴールへの意識を忘れず、穴を見つけた瞬間、一発で仕留めたマウントのプレーの質の高さには脱帽である。一方でポルト目線で言うと、無理にザイドゥがインターセプトを狙わなければ、あるいはマウントのスーパーなターンがなければ生まれなかったゴールだっただけに、悔しい失点になったと言えるだろう。

85分のゴールも唐突だった。コヴァチッチが低い位置から、相手の最終ラインの裏のスペースにロングフィードを送った。ただボールの飛距離が十分ではなく、最終ラインに吸収されて守る右ウイングのテカティートにカットされるなんでもない場面からゴールが生まれたのだ。

この場面で素晴らしかったのは左ウイングバックのチルウェルだ。裏のスペースに走り込んでいたものの自身の下にまでボールが届かないことを素早く察知すると、相手にボールをカットされる前に、攻守の切り替えを行いすぐさまテカティートへのプレスを開始した。するとテカティートが背後からの圧を感じたのかトラップミスを犯してしまう。そのこぼれ球をチルウェルが拾うと、そのままドリブルで独走し、GKもかわして追加点を決めた。

光ったトゥヘルのマンマネジメント能力

お互い堅守を見せ、均衡した展開だった。しかし試合結果は2-0。2点も差が開いた。この差は、一瞬隙を見せてしまったポルトと、集中力を90分持続させたチェルシーとの差である。

ただ、チェルシーは万全の状態でこの試合に挑んだわけではなく、戦前に様々なネガティブな事象が起こっていた。その状態からチームを一致団結させ、試合に集中させたトゥヘルの手腕はさすがである。どちらかというと、戦術家として名高いドイツ人監督だが、マンマネジメント能力の高さも見せつける一戦となった。

photo by Getty Images
text by 内藤秀明


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