【守本和宏コラム】バイエルンの盤石。ムシアラ17歳363日最年少ゴールが示す“チーム一丸で戦える強さ”
昨シーズンのUEFAチャンピオンズリーグで、史上初となる全勝優勝。主要タイトル3冠(CL、ブンデスリーガ、DFBポカール)を達成し、無類の強さを見せたバイエルン・ミュンヘン。今シーズンもCL決勝トーナメント ベスト16では、ラツィオ相手に盤石の出だしを見せた。その象徴が、17歳363日(1st Leg時点)でバイエルンのCL史上最年少ゴールを決めたMFムシアラと、その後ろのボランチ、キミッヒとゴレツカだったように思う。
見違えたラツィオの攻守、それでも崩れないバイエルン
2nd Leg、ラツィオは見違えるようなパフォーマンスを見せた。1st Legでは開始直後に浮足立ったDFのミスを突かれて失点したが、起用選手を調整して修正。攻撃のビルドアップも、中盤でことごとく潰されたのを回避。縦の速さと横の揺さぶりを活かして、14分のミリンコヴィッチ=サヴィッチのヘディングなど、チャンスを作り出した。
しかし、少しペースを握られたぐらいで崩れないのが、バイエルンの強さだ。冷静な守備と、そこから始まる攻撃は、絶大な安定感を誇る。前半33分には、右CKからゴレツカが倒されて得たPKをレヴァンドフスキがゴール。エースFWのCL歴代3位、通算73ゴール目で勢いづいたチームは、雪が徐々に大粒になる中でも動きを良くしていった。
試合の大勢は、後半に入っても変わらない。前線の4人を絡めた攻撃の形を作れず、ホアキン・コレアも孤立したラツィオに対して、バイエルンは73分、交代直後のカメルーン代表FWシュポ=モティングが、キミッヒ、アラバと繋いだパスから追加点。ラツィオも後半終盤に今後につながる動きを見せ、FKからパローロのヘッドで一点を返すが、試合はバイエルンが2-1で勝利。アグリゲートスコアを6-2とし、20年ぶりのチャンピオンズリーグベスト16進出を果たしたラツィオを退けた。
リーグ戦では25試合35失点、30年前の91-92シーズン以来の失点の多さが指摘されるバイエルン。しかし、CLの大舞台における試合巧者ぶりはさすがの一言。ただ、このCLベスト16の2試合を通じてのポイントは、1st Legのムシアラのゴール、そしてその後方で献身的に動いた2人のMFの存在だろう。
CL初スタメン、ムシアラの躍動と“世界最高のボランチ“コンビ
1st Leg、直前のリーグ戦はあまり良い内容ではなかったバイエルン。それでも、チャンピオンズリーグの試合は別とばかりに、序盤から質の高いプレスを展開。開始8分には、相手のミスからレヴァンドフスキがゴールを奪い、迎えた前半23分だった。
ケガ人の多さもあってチャンピオンズリーグ初スタメンとなったMFムシアラが、左サイドのデイヴィス、ゴレツカが浮き球で右に流したパスを受けて、狙いすましたシュート。これがゴール左に決まり、17歳363日でバイエルンにおけるチャンピオンズリーグ史上最年少得点をマークしたのだ。
レヴァンドフスキが空けたスペースをうまく使ったこの得点も見事だった。だが、このゴールを含めたムシアラの活躍は、彼を1列後方から支えたダブルボランチ、キミッヒとゴレツカの“世界最高のボランチ“と呼ばれるコンビあってのものだ。
1st Legでは、特にキミッヒが前線から後方までいたるところに顔を出し、コロナ陽性から復帰して間もないゴレツカは、相手ボールに素早いプレスで対応。彼らを中心に、チーム全体が連動したハイプレスは、ラツィオにパスの余裕さえ与えず、得意のカウンターを封じ込めた。最終的に、動き・集中力・強さの面で上回ったバイエルンが、4-1で勝利。2戦通じての大局を決め、連覇へ向けて大きな一歩を踏みだした。
ひとつの方向を向いて戦える、その強さ
1st Legの試合後、ゴレツカは語っている。「ムシアラは先発出場を喜んでいたから良いプレーをして欲しかった。彼が自由にプレーできるよう、後ろからのサポートに力を尽くした。彼には自由なスペースが必要だ。今日はいい結果を出してくれたね」
ちなみに、キミッヒはムシアラがトップチームに上がった日、ロッカールームで誰か他の人のスペースに座ってはいけないと待っていたムシアラに対し、どこに座ればいいのか、一緒に探してくれたと、本人が話している。
1st Legから3日後、18歳の誕生日を迎えたムシアラは、バイエルンと5年のプロ契約を締結。注目されたA代表の選択は、ユース年代で主にプレーしたイングランド代表ではなく生まれ育った国であるドイツ代表を選んだ。今後のドイツサッカーを担う逸材として、これから欧州サッカーシーンの主役の1人となる可能性を秘めている。
バイエルンの試合運びの巧さ、守備と攻撃の安定感は当然知られるところだ。加えて、チームにはムシアラのような大切な若手を、全員で大事にする姿勢がある。それは言い換えれば、全員が同じ方向を向いて戦える、チーム一丸となって戦える、という強さだ。そこにこそ、バイエルンの盤石ぶりを感じた決勝トーナメント ベスト16だった。
photo by Getty Images
text by 守本和宏
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