マガジンのカバー画像

映画のはなし シネピック

170
新しい映画と出会える。映画をより深く楽しめる。そんなコンテンツをお届けしていきます。担い手は、スピードワゴン・小沢一敬さん、フォトジャーナリスト・安田菜津紀さん、映画ライターSY… もっと読む
運営しているクリエイター

フォローしませんか?

記事一覧

岸井ゆきのの“頼もしさ”—独自性の高いキャラクターに命を吹き込む彼女を紐解く

文=SYO @SyoCinema  表現者にとって、“代表作”に出合えるかどうかは活動上の生命線ともいえる。ブレイクするきっかけにもなるだろうし、転機や原点にもなり、時には越えなければならない壁にもなるだろう。何にせよ、代表作は必殺技みたいなもので、あるのとないのとではその後の人生が大きく異なる。往々にして代表作は自分だけでなく他者も含めた得票数で決まるため、ある種の総意ともいえるだろう。  俳優・岸井ゆきのにおいては、やはり『ケイコ 目を澄ませて』がそれにあたるはずだ。

【投票受付中!】教えてください、あなたのベスト3「W座映画賞」開催!

 はじめまして! 「W座からの招待状」5代目プロデューサー・Tです。  今年「W座からの招待状」では、「W座映画賞」を開催することになりました。noteでは、番組と映画賞の内容をお伝えできたらと思います。 ▼【W座からの招待状】「W座映画賞」ランキング投票大募集! まずは「W座からの招待状」のご紹介から…!  この番組は、WOWOWが3チャンネル開局をするタイミング(2011年10月)に誕生し、WOWOWが自信をもってオススメする珠玉の作品を放送している日曜午後9時の映画

難役が坂口健太郎の“進化”を促す。彼から放出される“言葉を超えた何か”を紐解く

文=SYO @SyoCinema  執筆業を行なっていると、時折監督や俳優サイドから「指名」をいただくことがある。そうした瞬間は、飛び上がるほどうれしいものだ。誰かに自分の感性を肯定され、必要とされる喜び――。  俳優であればオファーが届く状態がそれに当たるだろうが、もう一つ上の「当て書き」という誉れが存在する。「当て書き」とは、演じる俳優を想定して役を書くこと。「あなたのためにこの役を用意しました」というラブコールなのだ。  今回紹介する映画『サイド バイ サイド 隣に

前世を記憶する子どもたちのセリフにゾッとする――大泉洋、有村架純、目黒蓮、柴咲コウらが共演した『月の満ち欠け』を観てスピードワゴン・小沢一敬が心撃ち抜かれたセリフとは?

(※初回放送 10/7(土)後8:00、以降リピート放送あり) 取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken ──たまたまなんですが、今回は前回の連載と同じ廣木隆一監督の作品となりました。 小沢一敬(以下、小沢)「前回ここでしゃべった『母性』('22)も廣木隆一監督だっけ? 今回の『月の満ち欠け』は、思ってたよりも不思議な話だったね。なんて言うか、『世にも奇妙な物語』('90~)みたいにも感じるというか。原作は直木賞作品なんでしょ?」 ──2017年に第157回直木賞を受

【完成報告】「斎藤工×板谷由夏 映画工房」新キービジュアル制作プロジェクト

【御礼】 こんにちは! 「映画工房」番組プロデューサーの樋浦悠真と申します。  このたび、「映画工房 新キービジュアル制作プロジェクト」にて最優秀賞を受賞されたヤマシタケンスケさんとともに、打ち合わせやフォトセッションを行ない…  ついに新キービジュアルが完成いたしました!  改めて、本プロジェクトにご参加いただき、短い制作期間の中、イラストや実写にとどまらず、絵画や模型、版画などさまざまなアイデアを形にしてくださった皆さまに、御礼申し上げます。  こちらの記事では、

表現者・稲垣吾郎の“生活感のなさ、純度の高い清廉さ、あるいは神々しさ”を、『窓辺にて』から紐解く。

文=SYO @SyoCinema  映画・ドラマ・演劇――“芝居”において、演じ手と観客の間ではある約束が交わされる。「演じ手を役だと信じ込む共犯関係」だ。その物語の中では俳優本人はかき消え、役として認識しようとするものだ。われわれ観客はそれを当たり前のように行なっているが、改めて考えてみると奇妙な話ではある。そこにいるのは、紛れもないその人(俳優)なのだから――。  観客も、俳優も、制作サイドも「イメージ」というものにある程度は振り回される。好青年の印象がある俳優に狂気

目の前で母親と恋人が溺れていたら、どっちを助ける? 戸田恵梨香、永野芽郁が共演した『母性』を観て、劇団ひとりとの想い出がフラッシュバックしたスピードワゴン・小沢一敬が心撃ち抜かれたセリフとは?

(※初回放送 9/9(土)後8:00、以降リピート放送あり) 取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken ──今回の作品は、湊かなえさん原作の『母性』です。 小沢一敬(以下、小沢)「うん。最初、俺はミステリーだと思って観てたのよ。湊かなえさんだから、いわゆるイヤミス(“読後に嫌な気分になるミステリー”の略)のジャンルの話なんだろうと思ってて。後で調べたら、原作小説のほうは、わりとミスリードをしたり、どんでん返しのあるミステリー的な作りになってるみたいなんだけど、この映画自

この社会でマイノリティーとして暮らす人々が、より生き心地のよい社会となるよう、『RENT/レント』が色あせることなく、社会に響き続けることを願う

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り上げるのは、トニー賞ほか数々の賞に輝いたブロードウェイのロングラン・ミュージカルを映画化したクリス・コロンバス監督作『RENT/レント』('05)だ。製作でロバート・デ・ニーロも参加している。 (※9/7(木)後4:05、ほかリピート放送あり)  マーク役のアンソニー・ラップほかミュージカルの初代キャストらも出演し、ボヘミアンたちの1年を、巡りゆく季節とともに描く。貧困や病、差別の渦巻く時代にありながらも、時に手を携

役に“溶ける”妻夫木聡の演技のすごさを、『ある男』から紐解く。

文=SYO @SyoCinema  これは私見だが、映画にハマるきっかけは多くの場合「俳優」からなのではないか。たまたま目にしたドラマやCMで見かけた俳優に惹かれて「じゃあ次は」と映画を観てみる。そうして俳優の“推し”になり、出演作を追いかけていくうちに「監督」や「脚本家」、あるいは「テイスト」や「ジャンル」へと興味が拡大していく。  自分も、そのルートをしっかりたどって今がある。ものすごく影響を受けているのはオダギリジョーさんで、中学、高校、大学と彼の出演作を観ていく過程

映画担当イチオシ3作品!【WOWOWオンデマンド】夏の特別企画「語り尽くしたいプレイリスト ~2023年、夏。~」より、WOWOW映画部若手社員のセレクト映画を紹介

【映画担当イチオシ!スターが魅せるアクション!】① 映画部・池貝のイチオシ! 『ブラザーフッド』(’04)  レイトショーを目指して今日も小走りで退勤する映画部の池貝です。 映画はキャストよりもテーマや内容に注目して観賞することが多い私ですが、この作品については「チャン・ドンゴンかっこいい!」と感動しました。  目を背けたくなるほど生々しく描かれた、朝鮮戦争の凄惨(せいさん)な戦場。そんな壮絶な環境で、文字通り“命懸け”で弟を守るため、危険な任務に向かっていく姿はまさしく

それでも生きていくんだし、生きてる以上はやるべきことが何かあるんだなって――二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人ら出演『ラーゲリより愛を込めて』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?

(※初回放送 8/12(土)後8:00、以降リピート放送あり) 取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken ──今回の作品は『ラーゲリより愛を込めて』です。 小沢一敬(以下、小沢)「うん。まず正直言うと、俺は普段から、戦争映画というのはほとんど観てこなかったのね。好きじゃないとかじゃなくて、どうしてもつらい内容になるから観てるとしんどくなっちゃうというか。ただ、戦争のことを後世に伝えていくという意味で戦争映画にはすごく存在意義があると思うし、こういう機会がないと観なかった

ジェンダー平等はどこまで実現しているのか――『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』をきっかけに私たちの足元を見つめたい

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り上げるのは、#MeToo運動が広がるきっかけともいえるニューヨーク・タイムズ紙の調査報道を題材にしたマリア・シュラーダー監督作『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』('22)。ブラッド・ピットらが製作総指揮を務め、記者役のキャリー・マリガンが第80回ゴールデン・グローブ賞助演女優賞にノミネートされた作品だ。 (※8/20(日)後9:00、ほかリピート放送あり)  記者たちが報じたのは映画界の大物プロデューサ

眞栄田郷敦の規格外の成長曲線。『カラダ探し』で魅せる“生きざま”と“死にざま”から紐解く

文=SYO @SyoCinema  役者の成功にも多様なパターンがあるだろうが、その一つに「打率の高さ」が挙げられるように思う。例えば「この人の出ている作品は癖が強くて面白いな」や「ヒット作に連続して出演しているな」と思えるような存在――。その領域まで行ければ盤石だが、当然ながら一朝一夕で到達できるものでもない。特に国内の若手俳優の場合はさまざまな作品を通して経験を積み、30歳前後でより個人の志向を反映した作品選びへとシフトし、第2フェーズに進むといった流れが王道だろう。と

『ザリガニの鳴くところ』から、ウィシュマさん死亡事件を考える――社会を前に進めるために

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り上げるのは、全世界で1,500万部以上を売り上げたディーリア・オーエンズの同名ミステリー小説を映画化したオリヴィア・ニューマン監督作『ザリガニの鳴くところ』('22)。 (※7/16(日)後9:00、ほかリピート放送あり)  リース・ウィザースプーンが自ら映画化権を獲得し製作を担当。テイラー・スウィフト自ら楽曲参加を懇願した作品だ。湿地帯の自然の中、たった一人で生き抜いてきた主人公カイアの半生から、SDGsの「目標5

映画のはなし シネピック|WOWOW