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映画のはなし シネピック

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新しい映画と出会える。映画をより深く楽しめる。そんなコンテンツをお届けしていきます。担い手は、映画ライターSYOさんなど個性豊かな面々。それぞれの感性が作り出す映画愛は必見です!…
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記事一覧

『オッペンハイマー』と『関心領域』の真逆といえる「音」へのアプローチを紐解く

文=SYO @SyoCinema  2024年も終わりに近づき、映画ファンの皆さまにおかれては「2024年の極私的映画ベスト10」を選出するフェーズに入ってきたのではないだろうか。  かく言う自分もそのひとりだが、やはりこの2本を抜きには語れない。 『オッペンハイマー』と『関心領域』だ。  前者はクリストファー・ノーラン監督が“原爆の父”を描いた作品で、その題材と内容から日本国内でも議論を呼んでいた1本。後者は、ポーランド・アウシュビッツの強制収容所の隣に住んでいたとい

【11月の激レア映画!】レオナルド・ディカプリオ×ロバート・デ・ニーロ共演の『ボーイズ・ライフ』や高倉健主演の超大作『八甲田山』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 ひき逃げ事件の現場に居合わせた目の不自由な女性が、担当刑事や事件を目撃した青年とともに犯人を追う韓国サスペンス ①[廃盤]『ブラインド(2011)』 レア度…★★★★☆  まずは[廃盤]になっている作品から。ロマンティックコメディの女王として人気だったキム・ハヌルが、盲目の目撃者という難役に挑戦し、役柄を大いに広げたサスペンス『ブラインド(2011)』です。見えてはいませんが、さまざまな要因で事件の目撃者となり、犯人から追われる立場になる流れが自然なのが

松村北斗×上白石萌音。個々の魅力が2人一緒になることで「倍増」する、とびきり優しい1本の映画を、2人の自然体な演技から紐解く

文=SYO @SyoCinema  映画とは、“出会い”を描くものだ。  それによって変化・成長してもいいし、しなくたっていい。最高の出会いでも最悪の出会いでもいい。そして私たち観客もまた、そんな“出会い”を描いた作品との“出合い”を通して心に何かが生まれる。  そうした“出会い×出合い”の豊かさを、ことさらに感じた映画がある。 瀬尾まいこの人気小説を三宅唱監督が映画化した『夜明けのすべて』だ。  本作は、PMS(月経前症候群)に悩む藤沢さん(上白石萌音)とパニック障害

【10月の激レア映画!】陣内孝則主演のニューウェーブ・ヤクザ映画『ちょうちん』や、映画の巨匠に密着した『ヒッチコックの映画術』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 韓国で2005年度興収ナンバーワンヒットを記録した感動作 ①[廃盤]『トンマッコルへようこそ』 レア度…★★★★☆  最初にご紹介するのは、ソフトがすでに[廃盤]となっていて、2005年に韓国で大ヒットした戦争ファンタジー『トンマッコルへようこそ』です。  朝鮮戦争の真っただ中、本隊からはぐれた北朝鮮軍の兵士3名、韓国軍の兵士2名、そして戦闘機が不時着した米軍のパイロット1名が、山奥で暮らす小さな村にたどり着きます。そこに暮らす村人たちは今が戦争中だと知

自らを“ちょうどいい俳優”と語る岡山天音。そんな彼が“芝居の怪物”と化した1本の映画から、その魅力を紐解く

文=SYO @SyoCinema  ここで初めて告白するが――自分は常々、俳優と映画ライターは割と近いところにいるのではないかと思っている。  どちらも1からそれ以上を生み出す仕事がメインで、誰かから声を掛けてもらえなければ活躍の場はなかなかない。俳優がインタビューで「作品選び」について聞かれることがよくあるが、「選べる」のは依頼が殺到している人気俳優の特権であって、本来は「選ばれる」立場だろう。どれだけ成功しても自分が出たい作品のすべてに携われるわけではないし、悔しさが

【9月の激レア映画!】役所広司と周防正行監督がタッグを組んだ『Shall we ダンス?』や、ヴィム・ヴェンダース監督作3作品をはじめ、デジタルリマスター版・未DVD化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 ①[廃盤]『黒い瞳(1987)』 レア度…★★★☆☆  まずはDVDが[廃盤]になっているタイトルからご紹介します。  ロシアの文豪、チェーホフの短編「犬を連れた奥さん」の再映画化『黒い瞳(1987)』です。監督は巨匠ニキータ・ミハルコフ。主演はマルチェロ・マストロヤンニ。原作では保養地で銀行員が人妻に恋するドラマですが、映画ではロシア人の人妻に恋するイタリア人の男性という、国をまたいだ恋愛ドラマに改変されています。国の組み合わせから見ても、名作『ひまわり

杉咲花の“ギアチェンジ”の始まりともいえる映画『市子』。その役を生きる彼女の“生活芝居”を紐解く

文=SYO @SyoCinema  人生を生きていく中で影響を受けた人――保護者や友人、画面の向こうにいる有名人などそれぞれに異なるだろうが、こう聞いたときにパッと思いつく人たちがいるのではないか。  ただきっとその該当者に会える機会は、歳を重ねるごとに減っていくもの。「自分」というアイデンティティが確立されてゆくこともあるだろうし、影響を受けるまでに他者を信用することも、自分を変化させることも怖い/リスキーだからだ。  僕も同様で、いつも一歩引いた安全地帯に身を置きなが

【8月の激レア映画!】小林聡美出演の『キリコの風景』や、日本初公開となる『ヌードの映画史~黎明期から現代へ~』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 ①[廃盤]『セルロイド・クローゼット』 レア度…★★★☆☆  まずは[廃盤]になっているこちらの『セルロイド・クローゼット』。  今でこそ、LGBTQを声高に訴えることが可能になっていますが、ちょっと前までは、同性愛の描写はハリウッドではご法度でした。それを前面に出すと心の準備のできていない観客たちは物語に集中できなくなってしまうでしょうし、ゲイやレズビアンの人々の存在そのものが世の中に受け入れられていなかったからです。でも映画の作り手たちはさまざまな手法

綾野剛が『カラオケ行こ!』の“歌がうまくなりたいヤクザ”役で魅せた「スマートな違和感」を紐解く

文=SYO @SyoCinema  2024年も、綾野剛の快進撃が止まらない。 『花腐し』(’23)での激賞、Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」(’23)の衝撃が冷めやらぬまま、今年1月に映画『カラオケ行こ!』が劇場公開し、スマッシュヒットを記録。Netflixシリーズ「地面師たち」(’24)では豊川悦司とW主演を務め、『ラストマイル』(8月23日(金)公開)、『まる』(10月公開)、『本心』(11月8日(金)公開)と新作映画が多数待機中。いずれも話題作であり、彼の演技

日本とフランスをつなぐ「フランス映画」。その魅力をフランス映画愛にあふれる2人が語り尽くす

映画が導いた、素敵な出会い中山結衣(以下、中山)「ボンジュール! 本日はよろしくお願いします。まず自己紹介をお願いできますでしょうか?」 エマニュエル・ピザーラ(以下、ピザーラ)「もちろん! エマニュエル・ピザーラと申します。ユニフランスの東京オフィスの代表を務めています。パリの映画業界で約10年間働き、その間にフランスとアジア、特に日本とをつなぐ機会が多くあり、今の仕事につながっています」 中山「お仕事に就かれる前は、どういった勉強をされていたのですか?」 ピザーラ

【7月の激レア映画!】カトリーヌ・ドヌーヴ主演で4Kレストア版でよみがえった『インドシナ』や、アラン・ドロン主演の代表作2本をはじめ、廃盤・未ソフト化・HDレストア版など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 ①[廃盤]『シャロウ・グレイブ』 レア度…★★★★☆  まずはソフトが[廃盤]になっている作品からご紹介します。  『スラムドッグ$ミリオネア』('08)でオスカーを受賞したダニー・ボイル監督が、出世作『トレインスポッティング』('96)の直前に作ったデビュー作で、現在[廃盤]となっている『シャロウ・グレイブ』です。シェアハウスに暮らす3人が、4人目の入居者を迎えるが、彼は突然死亡。残された大量の麻薬と大金により、さまざまな思惑が駆け巡るサスペンスです。丁

神木隆之介の本質的な特異性―不朽ともいえる“青さ”―を『ゴジラ-1.0』を中心に紐解く

文=SYO @SyoCinema  2歳で芸能界に入り、芸歴はもうすぐ30年に到達する大ベテラン。俳優・神木隆之介の演技力、つまり《技術》について、今さら語ること自体がやぼとも言える。なぜなら、このキャリア自体が唯一無二の存在証明に他ならないからだ。彼のすごさは説明するまでもなく、皆が知っている。  むしろ、彼の本質的な“特異性”があるとするならば――それはまさにエバーグリーン(=不朽)と言っていい“青さ”であろう。熟練の技術者でありながら、神木からわれわれ観客が感じるの

【6月の激レア映画!】濱口竜介監督の実験的短編『天国はまだ遠い』や、石井裕也監督の長編第1作『剥き出しにっぽん』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 【6月の激レア映画9作品】①[廃盤]『川の底からこんにちは』/②[廃盤][HDテレシネ]『剥き出しにっぽん』 レア度…★★★★☆  最初に紹介するのはDVDが[廃盤]になっている石井裕也監督の商業デビュー作『川の底からこんにちは』です。監督デビュー作といえば、その後の方向性を決めてしまうほど、本人にとっても周囲にとっても重要な作品です。この映画、一応ジャンルはコメディとなっていますが、とにかく主人公のどん底ぶりが徹底していて、笑っていいのか迷ってしまうほど

ボクサーのプロライセンスを取得した横浜流星。「演技」の領域を超えた規格外の進化を1本の映画から紐解く

文=SYO @SyoCinema  僕は独立して4年弱になるが、この仕事の一番の財産はやはり人との出会いだと感じる。恩人であり、この人と巡り合えなければ自分の人生はまったく違ったものになったであろう確信――僕にとって、そのひとりが俳優・横浜流星だ。  初めて彼について書く機会を得たのは、まだ独立前の2019年。この連載の前身となる「WOWOWシネピック」だったかと思う。盟友・藤井道人監督との初タッグ作『青の帰り道』(’18)を中心に、横浜が見せるリアルな“痛み”に着目して

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