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原作者・吉田修一氏インタビュー

吉田修一氏に今回のドラマ化の感想ならびに作品の見どころについて語ってもらいました。

原作者・吉田修一氏

まずはご覧になった感想をお聞かせ下さい。

連続ドラマとして自分の作品が映像化されるのは久しぶりです。原作者なので、物語の展開はわかっているのですが、それでも純平たちを必死に応援していました。とにかく俳優さんたちが魅力的でしたね。鈴木京香さん、高良健吾さんはもちろん、それぞれの役がもうこの役者さんたち以外では考えられない。特に高良くんは映画『横道世之介』でも主演を務めてもらって、彼は僕が描くキャラクターを感覚として理解してくれているんだなと、絶対の信頼感を寄せています(笑)。

ほかのキャストのみなさんについてはいかがですか。

鈴木京香さん演じる夕子は原作と比べると1トーン、2トーンくらい明るい夕子になっていて、楽しめました。鈴木さんの少しハスキーな声はとても独特で、たとえば「あなたは大丈夫」というようなときにとても響くような気がしました。逆に高良くんの声は、「ぼくは大丈夫」というときにハマるというか。とにかく鈴木さんの声は魅力的ですね。
美月役の福田彩乃さんのことはもちろん存じていましたが、ドラマでは一人の女優さんとして新鮮な気持ちで見させていただきました。夫役の浅香航大くんとのやりとりもとても面白かったです。木島兄弟(マキタスポーツ、ボブ鈴木)は怖がるべきなのか、笑うべきなのか、正直まだ迷っています(笑)。 行定勲監督とはつき合いも長いですが、ここ最近はもうベテランとしての迫力がありますよね。年齢的にもキャリア的にも一番、脂が乗っている時期だと思いますし、その中でこの作品を選んでくれたのは嬉しいです。

吉田さんがこの作品に込めた思いとは何でしょうか。

くさい意味でなく、人ってつながるんだな、ということでしょうか。この作品は 物事の顛末を一枚絵で見せる「屏風絵」みたいな小説を書きたいと思い、その中で復讐の物語である『猿蟹合戦』がイメージとして浮かんできて、『平成猿蟹合戦図』というタイトルが決まっていったのですが、これまでの自分の作品とは違い、地方から東京に出てきた、さらにその後にまた地方へと、登場人物たちが移動し、物語の舞台も変化していきます。もし、彼らが東京に出てこなかったら、長崎の人と秋田の人がつながることはなかったかもしれない、そのつながりを維持しながら、また彼らは別々の場所に移動していく。小説を書いた時からそこに何かしらの“可能性”みたいなものを自分なりに感じていたのかもしれませんが、さらに、いま、その「つながり方」の可能性を感じています。日本だけじゃなく、世界にも目を向ければ、これから先の、人の流れ方って、さらにこういうふうになっていくのではないかと思うんです。

では、最後に改めてこの作品の見どころをお願いします。

シリアスなものの中にある「クスッと笑えること」って、印象に残りますよね。その逆に、この作品はわりとコミカルにドタバタ進むけれど、じつは、それぞれのキャラクターたちは「生きづらさ」みたいなものをずっと抱えていることがわかってくる。明るければ明るいほど、そこにある哀しみも浮かび上がってくる。この『平成猿蟹合戦図』に出てくる登場人物たちは、たぶんそういう人たちだと思うんです。だから、このドラマを見ていくと、そういう登場人物たちのこと、主人公の純平のことを応援したくてたまらなくなる。ドラマが終わってからも、彼らがどう生きていくのだろうかと、さらにその先を見たくなりました。

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