辻村深月×木村多江 スペシャル対談

連続ドラマW『鍵のない夢を見る』第3夜「石蕗南地区の放火」について
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場面写真
辻村

「石蕗南地区の放火」の主人公、笙子を木村さんが演じてくださると聞いて、とても嬉しく思いました。私、木村さんが主演された映画『ぐるりのこと。』が邦画ベスト3に入るくらい大好きなんです。その時から木村さんの大ファンです。

木村

本当ですか。ありがとうございます。ご期待にそえる演技ができているといいんですけれど…。私自身は笙子を演じるのがすごく楽しくて、ご褒美のようなお仕事でした。これは全5話のなかでもいちばん日常的なお話ですね。

辻村

この放火の話は身につまされたという声が多いんです。地方都市のOL、36歳の笙子が放火事件をきっかけに昔一度デートをした男性、大林に再会するんですよね。大林は自分のことを格好いいと思っていているような、傍からみるとイタイ男の人。だけれども、読み進めていくうちに主人公の笙子もちょっとおかしいな、と思える話にしたつもりです。

木村

脚本を読みながら「あるあるー!」って思うところがたくさんありました。女性のちょっと脆くて滑稽でイタイ部分も描かれている。笙子さんは人の目を気にしていて、人を好きになることもならないこともいちいち理由づけして考える人。人のマイナス面ばかり見ているんですよね。

辻村

「学生時代にモテた私がお見合いだなんて」というようなプライドを持っていて、そこから自由になれない女性なんです。

木村

「本人は分からないだろうけれど、こういう人いるよね」って思って読み進めていくうちに、ふと「あれ、私もそうかも」と気づかされます。適当にうまくやって楽しんでいればいいのにそれができない、というのは自分も通ってきた道です。つまらないのに楽しそうにしている自分を嫌だと思ったり、大勢でいるのに孤独を感じていたりした頃を思い出しました。

場面写真
辻村

脚本を読んで嬉しかったのは、パワーストーンのブレスレットやおみくじの結果を気にする点など、原作には書いていない部分で笙子の性格がよく分かる描写が加わっていたこと。同じ女性を別の角度から描写してもらったようで面白かったです。あとは笙子の心の声があるんですよね。ニコニコ笑いながら心の中で毒を吐いていたりとか。端的に気持ちを表してくださっているなと思いました。

木村

みんなの前でいい人として振る舞っていても心の声は違う。しかも家に帰ると心の声を口に出てしまうという(笑)。笙子だけでなく、大林さんも不器用な男性ですよね。バスの中で女子高生に注意して得意げになって、笙子を引かせてしまったりしますよね。ああいうリアルなエピソードをよく作り出せるなと感じました。

辻村

想像で書いたものですが、読み返して「こういう人いるよな」って自分でも思いました(笑)。実は書いた時は大林に対して、なんてスマートじゃないんだろう、と憤りを持っていたんです。でも今読み返すと、笙子さん、大林を選べばよかったのに!という気持ちになって。

木村

あの不器用さは愛おしいですよね。

辻村

まわりが自分を見ている目を気にしなければ、笙子も大林とつきあっていたと思うんです。今回、大林役が大倉孝二さんだと聞いて、期待度が上がっています。

場面写真
木村

撮影ではもう、大倉さんがおかしくて、笑わないようにするのが大変でした。デートに遅れて来るシーンでも、急いで来て「待った?」と言うのではなく、ゆっくり歩いてきて「やあ」って言うんです。まさに"俺、格好いい"って思っている人なんです。

辻村

しかもその時〈LEMON〉と描かれた服を着ているんですよね。いちばんがっかりする言葉は何だろうって考えて書いたものなんですが、ちゃんと映像にしてくださって。

木村

普通デートの服で〈LEMON〉はないですよね。しかも小さく〈suppai〉って文字もあるんですよ(笑)。衣裳さんが作ってくださったんです。

辻村

わあ、そうなんですか。映像が楽しみです。

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