インド洋に浮かぶ“光り輝く島”を鉄道で巡る新風景。

輝きの島スリランカを行く

26年間続いた内戦が2009年に終結。スリランカは現在、ニューヨークタイムズ紙にも“世界で訪れるべき観光地ナンバー1”に選ばれた、世界屈指のリゾートアイランドとして再び煌めきを放っています。海のシルクロードの拠点として栄えた“光り輝く島”は、今なお美しい街並みと自然にあふれています。中心都市コロンボから、インド洋と紅茶畑の絶景路線を抜け、世界遺産の仏教史跡へ。海岸や高原をのんびりと走る鉄道に乗り、スリランカの魅力を余すことなくご紹介します。

INTERVIEW

現地取材ディレクター インタビュー

Q今回、取材先にスリランカを選んだ理由をお聞かせください。
A「2009年に内戦が終結し、新たな南国のリゾートアイランドとして注目されているスリランカは、Railway Storyでは手つかずの国のひとつ。ぜひ一度紹介したい場所でした」。
Qスリランカはどんな印象の国でしたか?
A「自然は美しく、人々は穏やかで、いい国でしたよ。特にコロンボからゴールに至る黄金海岸沿い、そしてコロンボから高原に向かう山岳鉄道は、海外でも人気の、変化に富んだ絶景路線です。あんなに素晴らしい風景が続く鉄道は、他にはないと思えるほど感動的でした。我々は毎回番組で凝った構図の鉄道の映像を必ず1ヶ所入れるようにしていますが、スリランカではこの黄金海岸沿いを狙って空撮を決行しました。ゴールの街並みの俯瞰を含め、結果的には上出来の映像が撮れましたが、実は取材現場は大変だったんです。当初飛ぶはずだった日は、小型ヘリでは海側からの撮影ができないとNGが出て、代わりに大型ヘリで飛ぶ予定にした帰国直前の1日は、残念ながら雨。飛んでもいい映像が期待できない中、ぎりぎりの判断で飛んでみると、数分後にウソみたいに雨が上がったんです。タイミングよく我々が乗った同型の列車が眼下に走ってきて、これで、日本で待つスタッフに最高のお土産を持ち帰ることができるとホッとしました」。
Q天候以外にロケで苦労されたことはありますか?
A「特にないですね。シンハラ語を話せる通訳とタミル語を話せる通訳を用意するなど、現地のコーディネーターは万全の態勢でしたし、観光立国として世界中から観光客を受け入れている最中、撮影許可もスムーズに取ることができました。ミャンマー同様、スリランカも仏教国で、列車が遅れ約束の時間に遅れても、寺院のお坊さんは怒ることなく待っていてくれたり。周りの人たちにも恵まれて、ストレスのない取材ができました」。
Qでは、中でもここは良かったと思う場所を教えてください。
A「仏教文化をテーマにしたパート2では、仏教文化の三角地帯と呼ばれるキャンディ、ポロンナルワ、アヌラーダプラの3ヶ所が重要でしたが、個人的に惹かれるものがあって世界遺産のシーギリヤをスケジュールに組み込みました。圧巻でしたね。ジャングルの中にポコッと突き出たテーブルマウンテンに広がる王宮は、まさに天空の要塞。兄弟の諍いの末に創建された王宮は、今はもう遺跡でしかないんですが、1500年前の歴史が鮮明に想像できるような不思議な空間でした。360度を見渡せる王宮に立つと、王がいかに自分の生にこだわったか、人間臭さのようなものを感じずにはいられませんでした。絶壁の窪地に描かれた妖艶なシーギリヤ・レディも、何の目的で描かれたかは考古学的には解明されていなくても、それを描かせた王の気持ちが即座にわかるような気がしました」。
Qリゾートと仏教という2つの側面から、スリランカの今を考察する企画がユニークです。
A「そうですね。車窓の風景もパート1とパート2では顕著な違いがあり、その風景から知り得ることも多々ありました。仏教文化の三角地帯をめぐる内陸では、どこでも水田と貯水池が交互に出てくるんです。事前に資料を読み取材に臨みますが、これほど溜め池があるとは思ってもいませんでした。そして大抵人は水辺に街を作り、文化が発展していくのに対し、スリランカの王様は先進の治水事業によって乾燥地帯に水をもたらし、人を集め、街を発展させたのです。しかも2500年も前にそうした都が築かれたという事実に、民族の英知や歴史の濃厚さを感じましたね。ちなみにスリランカの寺院には近年、日本の仏教界からも多くの寄付があると聞きました。仏教が生まれたインドに仏教遺跡がほとんどない中、スリランカにはその黎明期を語る史跡をはじめ、貴重な仏教遺跡が数多く残っています。それゆえ仏教界にとってスリランカは非常に重要な地域となっているのです」。
Qではスリランカをもう一度、旅するならどう過ごしてみたいですか?
A「アーユルヴェーダを体験してみたいですね。本来は数日間かけて毒素を抜き、それからいいものを体内に入れていくのがアーユルヴェーダです。それを同じホテルに滞在し、じっくり体験するなんて、なんとも贅沢な旅だと思います。ただ、鉄道での移動は外したくないですね。言葉は通じなくても乗り合わせた人々とのふれあいからその国を知り、現地の人たちの生活感みたいなものを享受できるのは、鉄道ならではの旅の醍醐味です。それに!スリランカの鉄道は基本的に窓もドアも開けっ放しで、風が吹き抜けるあの開放感はサイコーに気持ちいいんですよ」。