詩情豊かな中欧の大自然や古都に出会う鉄道の旅。
ユーゴスラビア連邦からの独立を果たしたスロヴェニアには今、ユリアン・アルプスの絶景や中世の面影を残す古都に惹きつけられるツーリストが後を絶ちません。首都リュブリャーナからボーヒン鉄道や高速列車ICSで、伝説の湖や世界遺産の鍾乳洞、神聖ローマ帝国時代から続く古都を探訪。国交樹立から20年が経ち、ますます身近になったスロヴェニアの魅力を、たっぷりとご堪能ください。
PART2
リュブリャーナ〜ツェリエ〜マリボル
中世以降、ハプスブルク家の支配下にあったリュブリャーナの旧市街には、市庁舎広場を中心に風格ある建物が数多く残されています。広場のバロック様式の噴水には、国の3つの主要河川を象徴する3体の彫刻が施され、街を代表するモニュメントとして特別な存在感を放っています。
かつてはアドリア海とドナウ川を結ぶ物流の拠点であったリュブリャーナにとって、リュブリャニツァ川は重要な水運の大動脈でした。街を潤わせ、人々に安らぎをもたらした、その川を現在は遊覧船でゆったりと楽しむことができます。
大聖堂前の広場で開かれる青空市場には、連日多くの買い物客が集まってきます。ここは野菜、果物、肉、乳製品など、あらゆる食材が揃う、リュブリャーナ市民の台所。リーズナブルな日用雑貨の店も並ぶので、土産物探しにもおすすめです。
首都リュブリャーナには、さまざまなレストランが揃い、国内各地の郷土料理も多彩に楽しめます。伝統的な民族衣装で迎えてくれるSOKOLでは、豚の腸に豚肉と豚の血、ライスを詰めたブラッドソーセージなどが人気です。
スロヴェニアの鉄道は、ハプスブルク時代の1846年、ウィーンとトリエステを結ぶ路線の建設に伴い開業。鉄道博物館には、150年を超えるその鉄道の歴史がぎっしりとつまっています。蒸気機関車は10台以上展示され、鉄道ファンならずとも楽しめます。
リュブリャーナ駅からウロヴェニ国鉄の最新振り子式特急インターシティー・スロヴェニア、通称ICSに揺られ北東に進むと、国内第3の都市ツェリエです。ローマ時代に開かれ、中世以降は神聖ローマ帝国、ハプスブルク家の統治拠点として発達した街は、1846年の鉄道開業に伴い、一層の躍進を遂げました。
堅牢な城壁に囲まれた、スロヴェニア最大の要塞です。見晴らし抜群の丘の上に13世紀に築かれ、この地を統治したツェリエ伯の居城として受け継がれてきました。
13世紀に創建され、14世紀にゴシック様式の尖塔が建ち、19世紀の大改修で現在の姿に整えられました。祭壇の奥を飾る17世紀作の「悲しみの聖母」は傑作と称えられています。
16世紀に完成したハプスブルク帝国の州庁舎です。現在は歴史的な建築物をそのまま活かした、ツェリエ一帯の文化や自然がわかる総合博物館として活用されています。天井の装飾も見応えがあります。
ツェリエ伯の王子の住まいです。地下にはローマ時代の石畳の道が遺跡として残され、当時の彫像や生活道具など、古代の貴重な品々が展示されています。
2世紀に建てられた神殿跡。当時商業で栄えたツェリエは、大理石の邸宅が立ち並ぶ、裕福な都市だったと伝えられています。
偶然出会った、民族舞踊団。農民が教会に出かけるときの正装を身につけ、老若男女の一団が華麗に踊る、スロヴェニア北東部の伝統舞踊を披露してくれました。
ドラヴァ川の流れや丘陵のブドウ畑が美しい、中世の面影が残るスロヴェニア第2の都市です。街の歴史が始まったのは12世紀に丘の上に城が築かれてから。中世は商業、手工業の街として発展し、鉄道が開通した19世紀以降は国内屈指の工業都市として国の経済を支えてきました。
12世紀に城が置かれたマリボル発祥の地。ブドウ畑に囲まれた標高386mの丘の頂からは、歴史の街並みが一望できます。
旧市街に建つマリボル城は、街を囲む城壁の一部として15世紀に建設されました。バロックやロココなど時代ごとに様式異なる装飾が施され、現在はマリボルの歴史や芸術を伝える博物館になっています。
12世紀にロマネスク様式で創建され、その後の改築で現在のようなゴシック様式の大聖堂になりました。マリボルの司教座が置かれ、近年もローマ法王ヨハネ・パウロ2世が来訪した格式ある大聖堂です。
第二次世界大戦時、ナチス・ドイツに併合されたマリボルの歴史が刻まれた広場です。広場には、当時の圧政に抵抗し命を落としたレジスタンスを称える「民族解放マリボルの記念碑」が置かれています。
国内屈指のワインの名産地、マリボルには、ギネスブックに載る世界最古のブドウの木が大切に保存されています。樹齢400年以上のブドウの木からは、今でもブドウが収穫されワインの原料になっています。建物は博物館になっていて、スロヴェニアワインのさまざまな展示が楽しめます。
マリボルのワインはほとんどが国内で消費されるため、海外に出回ることがほとんどありません。そんな他所では味わえない上質なワインを求めて、街のワイナリーには多くの観光客が訪れます。
ハプスブルク家の影響を長年受けたマリボルでは、仔牛をメインにしたシチューや煮込み、ステーキなど、豪華な肉料理を堪能できます。
リュブリャーナ〜マリボル間の中間に位置する鉄道の要衝ジダニ・モスト駅から、国際列車「アルプスの真珠号」に乗車し、南東に約1時間半進むとクロアチア国境の駅ドボヴァに到着します。クロアチアは2013年7月1日にEU加盟を果たしたばかりで、パスポートチェックはこの駅で行われ、スロヴェニアの機関車からクロアチアの機関車へ付け替えが行われ、ザグレブに向かいます。