大陸横断鉄道や初取材のアセラ・エクスプレスでフロンティア・スピリットをたどる旅。

鉄道大国アメリカ

大統領選が注目される今、「自由、平等、フロンティア・スピリット」の源泉を訪ねてアメリカ合衆国を縦横断します。東海岸に建国の軌跡を訪ねてフロリダへ南下。そして西部開拓史に思いを馳せつつ大陸横断鉄道で西海岸へ。コロンブス・デーなど秋の祭も楽しみながら、アメリカの文化と歴史を俯瞰する旅です。

[PART3]中西部の荒野を行く シカゴ〜カンザスシティ〜サンタフェ

中西部の荒野を行く シカゴ〜カンザスシティ〜サンタフェ

シカゴ 摩天楼が天を突くアメリカ第3の都市
摩天楼群

シカゴの摩天楼は、古典からモダンまで建築の見本市です。1888年完成のルッカリーは、世界最古の鉄骨高層ビルで近代摩天楼建築の原本。1930年のシカゴ商品取引所は、かのエンパイアステートビルと並ぶアールデコの超高層ビル。ウォータータワーは、1869年からミシガン湖の水を街に供給してきた給水塔。道路拡張で取り壊しの危機も、市民の猛反対によって逆に道路がカーブすることになったそうです。

シカゴルッカリー
シカゴルッカリー
シカゴ商品取引所
シカゴ商品取引所
摩天楼群
摩天楼群
CTAトレイン

公共交通機関が充実しているシカゴ。CTAトレイン(Chicago Transit Authority)の高架鉄道と地下鉄が、街を網の目のように走っています。通称「L」と呼ばれる高架鉄道に囲まれたダウンタウン中心部は「ループ」と呼ばれ、観光名所やミュージアムが集中。街歩きを楽しむと同時に、ジェットコースターのように軋む音を響かせ、高層ビルの壁ギリギリを走るLの車窓も味わってみましょう。

摩天楼の隙間を走る
摩天楼の隙間を走る
電車の走行音もシカゴ名物
電車の走行音もシカゴ名物
ユニオン駅

コリント式の列柱が壮麗なユニオン駅。1881年開業と歴史は古く、ニューヨークのグランドセントラル、ワシントンDCのユニオンに匹敵する規模の駅として誕生しました。1940年代には、毎日300もの列車が行き交い10万人が利用。そんな鉄道黄金期を物語る待合室は、高いアーチ天井や豪華な装飾がまるで神殿のようです。映画『アンタッチャブル』の名シーンでおなじみの階段は、この傍らにあります。

ユニオン駅
ユニオン駅
待合室グレイト・ホール
待合室グレイト・ホール
名シーンの舞台となった階段
名シーンの舞台となった階段
ル・マルナティーズ・ピッツェリア

シカゴ名物といえばディープ・ディッシュ・ピザです。まずは、鉄鍋で運ばれてくることにびっくり。切り分けると、そのボリュームにまたびっくり。5cmほどの深さの生地にたっぷり具が詰まって、タルトのような見た目です。この店はシカゴN0.1との呼び声高く、こんなに具がいっぱいでも生地はカリカリ、中身はトロ〜リ!焼き上がりに数10分かかりますが、ぜひ食べてみたい一品です。

ル・マルナティーズ・ピッツェリア
ル・マルナティーズ・ピッツェリア
ディープ・ディッシュ・ピザ
ディープ・ディッシュ・ピザ
ヘミングウェイ生誕の地

郊外の町オークパークは、文豪アーネスト・ヘミングウェイの故郷。木立に囲まれたクイーン・アン調の瀟洒な家で、彼は幼少期を過ごしました。タフなイメージとは対照的とも思える、花柄のインテリアは母の趣味だそうです。実は今年、資金難のヘミングウェイ財団は、この家を地元住民に約53万ドルで売却しました。新しい持ち主はここに家族と住み、年1回は一般公開すると報じられています。

ヘミングウェイの生家
ヘミングウェイの生家
ダイニングルーム
ダイニングルーム
ヘミングウェイのベビーベッド
ヘミングウェイのベビーベッド
カンザスシティ アメリカの真ん中に位置するジャズ・シティ
ホールマーク・ビジターセンター

グリーティングカードの世界企業、ホールマークの本社に併設。歴代商品の展示やカード制作の過程、ウィンストン・チャーチルら著名人が描き下ろした原画などが見られます。ノーマン・ロックウェルの絵は1951年の大洪水の後、壊滅的な被害にも負けずに立ち上がる街の姿を象徴的に描いたもの。ちなみに、カードの絵柄を一覧できるよう雛壇状に並べる商品ラックは、ホールマークが開発したそうです。

ホールマーク・ビジターセンター
ホールマーク・ビジターセンター
ノーマン・ロックウェルの絵
ノーマン・ロックウェルの絵
チャーチルが描いたジャマイカビーチ
チャーチルが描いたジャマイカビーチ
ブルールーム

禁酒法時代も100を超すナイトクラブがあったこの街は、大陸を演奏旅行するバンドの経由地でもあり、ジャズ文化が花開きました。あのカウント・ベイシーやチャーリー・パーカーもここで活躍したのです。近年、一度は廃れたカンザスシティ・ジャズを復活させようと、1997年にアメリカン・ジャズ博物館が誕生。館内のブルールームは、ビッグ・ネームから若手実力派まで出演するジャズクラブの名店です。

ジャズクラブのメッカ、18th &バイン地区
ジャズクラブのメッカ、18th &バイン地区
ブルールーム
ブルールーム
熱を帯びるセッション
熱を帯びるセッション
旧畜産取引所

ジャズと並ぶ名物が、肉。かつて街の畜産取引所は世界最大級を誇り、1日6万4千頭もの牛を扱っていました。肉が豊富に流通すれば、味を競うようになるのは自然の流れ。バーベキューやステーキはどこで食べてもハズレがありません。1949年創業のゴールデンオックスは、畜産取引所と歴史を同じくする老舗。開拓時代の牧場主の肖像が飾られ、カンザスシティ経済を畜産が担っていた時代を感じさせます。

旧畜産取引所
旧畜産取引所
1パウンドのリブアイステーキ(約500g)
1パウンドのリブアイステーキ(約500g)
ゴールデンオックス
ゴールデンオックス
ユニオン駅

1914年にできた立派な駅舎は、昔の写真や鉄道の模型が展示され、ノスタルジックな雰囲気があります。1917年には1日218本の列車が行き交いましたが、50年後には約6本まで減少。一時は隣の小さな駅舎を鉄道が使い、ユニオン駅はプラネタリウム、映画館、科学博物館などを備えた複合レジャー施設に変貌しました。しかし2002年には鉄道駅の機能も戻り、本来の駅らしい賑わいを取り戻しています。

ユニオン駅
ユニオン駅
駅構内
駅構内
サウスウエスト・チーフ号

8州に跨るシカゴ〜ロサンゼルス間、約3,644kmを2泊3日かけて結ぶ長距離鉄道。旧サンタフェ鉄道の名列車、スーパー・チーフ号の名をアムトラックが引き継いだものです。アメリカの大動脈ルート66に沿って、穀倉地帯、砂漠、ロッキー山脈を越えていく、まさに西部開拓者の足跡をたどる旅。川幅2kmという大海のようなミシシッピ川、中西部の荒野、地平線まで道1本ない大草原の眺めは壮観です。

サウスウエスト・チーフ号
サウスウエスト・チーフ号
サウスウエスト・チーフ号
サウスウエスト・チーフ号
ミシシッピー川
ミシシッピー川
車窓に続く大トウモロコシ畑
車窓に続く大トウモロコシ畑
食堂車
食堂車
ラウンジカー
ラウンジカー
サンタフェ 先住民とスペイン統治時代の文化の融合地
サンタフェ・サザン鉄道

アムトラックのラミー駅からサンタフェ駅を結ぶ鉄道は、全長29km、約1時間半の短い旅です。1873年に建設が始まり、1876年にはコロラド州プエブロまで、1880年にサンタフェまで開通し、さらに西へ進む予定でしたが、サンタフェを囲む山々に阻まれ断念。南端のラミーから改めて西へ伸ばしていったそうです。標高2,118mの高地にあるサンタフェ駅は、州都らしからぬひっそりとした佇まいでした。

サンタフェ駅
サンタフェ駅
サンタフェ・サザン鉄道
サンタフェ・サザン鉄道
乾いた大地が広がる
乾いた大地が広がる
サン・ミゲル教会

ニューメキシコが独立したのは50州中47番目ですが、歴史の深さなら負けてはいません。イギリス入植の10年も前にスペイン系移民によってサンタフェの街はでき上がっており、さらに数百年前から先住民が独自の文化を育んでいたのです。アメリカ最古のサン・ミゲル教会は1600年頃に建設され、アメリカ最古の住宅は800年以上前のもの。アドビ建築の土壁が青空に映え、サンタフェを象徴する光景です。

サン・ミゲル教会
サン・ミゲル教会
アメリカ最古の家
アメリカ最古の家
ホテル・ラ・フォンダ

1820年代に開業した歴史的ホテルで、ビリー・ザ・キッドも厨房で皿洗いとして働いたといわれています。外観は日干しレンガを積み上げ、土で覆った伝統的なアドビ建築。ロビーは重厚な丸太の梁と、磨き上げられた木製床が美しく、壁にはさまざまなアメリカ先住民アートが。スペイン風のパティオ(中庭)はメインダイニングとして使われ、古きよきアメリカ料理、ニューメキシコ料理が味わえます。

ホテル・ラ・フォンダ
ホテル・ラ・フォンダ
メインダイニング
メインダイニング
ロビー
ロビー
ジョージア・オキーフ美術館

アメリカを代表する現代アートの巨匠、オキーフの作品を135点以上収蔵。彼女は後半生の40年を、サンタフェの北西約100kmにあるアビキューという村で過ごし、その象徴ともいえる動物の骨の絵を多く遺しました。「骨は自分にとって、生きている動物よりもっと生きた存在に思える」。この言葉は、乾いた荒野に自らを隔絶するように創作に没頭した、彼女ならではの視点なのかもしれません。

ジョージア・オキーフ美術館
ジョージア・オキーフ美術館
ニューメキシコ時代に描き続けたモチーフの1つ、動物の頭蓋骨
ニューメキシコ時代に描き続けたモチーフの1つ、動物の頭蓋骨
ネイティブ・サウンド

アメリカ先住民文化、スペインとメキシコのラテン系、アングロサクソンの白人文化が混ざり合ったサンタフェの町。中でも建国の歴史よりもずっと古くから息づいている、先住民文化がとても大切にされています。スカイ・レッドホークさんは自分の店「ネイティブ・サウンド」で楽器や工芸品、アクセサリーを紹介するほか、演奏家としてイベントに出演するなどして自らの文化を後世に伝えています。

スカイ・レッドホークさん
スカイ・レッドホークさん
彼の店、ネイティブ・サウンド
彼の店、ネイティブ・サウンド
シカゴ カンザスシティ サンタフェ