UEFA EURO 2012TMに合わせて開催国を紹介。

ポーランド周遊1200キロ ウクライナ周遊2000キロ

今回は、ついに開幕する4年に1度のサッカーの祭典、ユーロ2012に沸く2つの開催国を訪問。同じスラブ文化圏でありながら、西欧と隣接し独自の文化を築いてきたポーランドと、今なお色濃いスラブ文化が息づくウクライナを紹介します。現役のSL路線など見どころも多い鉄道旅を、表情豊かな東欧の文化、美しい自然風景とともにお届けします。

[ポーランドPART2]古都を巡ってタトラ山地へ ワヴロツワフ〜クラクフ〜ザコパネ

古都を巡ってタトラ山地へ ワヴロツワフ〜クラクフ〜ザコパネ

ヴロツワフ 交易や金融を担ってきた水の都
旧市場広場

オープンカフェや大道芸人で賑わう、ポーランドを代表する中世広場の1つ。繊細な装飾が目を引く市庁舎は、1290〜1505年にかけて建設・改築を繰り返し、現在のゴシック様式に落ち着いたそう。中は博物館として公開されています。お堅い建物と思いきや、壁面には聖人の像などに混じって「酔っぱらい夫と怒る妻」などユーモラスな彫刻もあり、1つひとつに見入ってしまいます。

市庁舎
市庁舎
SPIZ

市庁舎の地下にあるSPIZは、郷土料理がおいしいビアレストラン。まずはポーランドの国民食、ジューレックを。発酵ライ麦を使った酸味のあるスープで、この店ではパンの器で出てきました。骨付き豚肉の料理、ゴロンカは食卓を豪華に飾る一皿。1kgサイズが当たり前で、これを1人でたいらげる人も多いというから驚きです。ニシンのマリネはタマネギのサワークリーム和えを添えるのが定番だそう。

老舗ビアホールSPIZ 店内
老舗ビアホールSPIZ 店内
ジューレック
ジューレック
ゴロンカ
ゴロンカ
ヤヴォル平和教会

17世紀半ば、30年戦争終結の証として、カトリック派のハプスブルク家はシレジア地方のプロテスタントに教会の建設を許しました。が、石材の使用禁止、尖塔など教会建築の様式も禁止、建築期間は1年など厳しい条件を提示。これに対し1655年、木造でありながら伝統的な石造りの聖堂に負けない壮麗な教会を完成させたのです。収容人数6000人以上、5層の回廊は約200点もの絵画で彩られています。

ヤヴォル平和教会
ヤヴォル平和教会
教会内部
教会内部
シヴィドニツァ平和教会

豪華絢爛な内装に目を奪われるこの教会も、ヤヴォルと同じ経緯で建設されたもの。ともに2001年、世界文化遺産に登録されました。釘を一切使用せずに3500本のオーク材で建てられ、回廊は4層、約7500人を収容。全体の95%が建造当時の姿を留めており、大理石のように見える祭壇や彫像もすべて木製というから驚き。天井や壁面の絵画は、聖ヨハネが黙示録の中に記した情景が描かれています。

シヴィドニツァ平和教会
シヴィドニツァ平和教会
教会内部
教会内部
クラクフ ポーランド王国の栄華をしのばせる古都
フロリアンスカ門

11世紀から約600年間、ポーランド王国の首都として栄えたクラクフ。他の主要都市と異なり大きな戦災は逃れたため、歴史的建造物が多く残っています。旧市街を囲んでいた城壁がわずかに残っているのは、13世紀に建てられたフロリアンスカ門。その前には15世紀の円形砦、バルバカンがあります。円形砦はワルシャワを含めヨーロッパに3つしか残っておらず、現存する中では最大です。

フロリアンスカ門
フロリアンスカ門
中央市場広場

中世から残る広場としてはヨーロッパ最大で、東京ドームとほぼ同じ広さ。中央のルネッサンス様式の建物は14世紀の織物取引所で、衣服や布地の交易が行われていました。今は土産や民芸品のショッピングモールとなり、2階は国立美術館です。旧市庁舎は1820年に取り壊され、塔だけが残りました。広場が巨大なので大きさの感覚が狂いそうですが、塔は約70m、23階建てのビルと同等の高さがあります。

中央市場広場
中央市場広場
旧市庁舎の塔
旧市庁舎の塔
聖マリア教会

1222年建造のゴシック様式教会。最上階の窓から1時間ごとに吹かれるファンファーレは、いつも演奏の途中で終わってしまいます。これは昔、敵の来襲を告げようとラッパを吹き鳴らしている最中に、矢で討たれた兵士の故事に倣っています。主祭壇は国宝。彫刻家ヴィオレット・ストウオシが12年かけて1489年に完成させました。これがどれほど巨大かというと、中央の人物像だけで2.7mもあるそう。

聖マリア教会
聖マリア教会
ヴィオット・ストウオシ祭壇
ヴィオット・ストウオシ祭壇
ヴァヴェル城

ヴィスワ川のほとりに建つ、歴代国王の居城。70もの居室がある王宮や3つの礼拝堂を擁する大聖堂から成り、地下の墓所には歴代国王や英雄が眠っています。大聖堂はポズナニからの遷都に先立だって1020年に着工。18世紀まで王の戴冠式が行われていました。数世紀にわたる増築でゴシック・ルネッサンス・バロック様式がミックスされ、複数のチャペルが融合した独特なスタイルとなっています。

ヴァヴェル城
ヴァヴェル城
ザコパネ スロバキア国境に面した山岳リゾート
グバウフカ山

スロバキアとの国境にある、タトラ山地一帯は国立公園。冬はスキー、夏は登山やハイキング、パラグライダーなどを楽しもうと、国内外から年間300万人が訪れます。標高1136mのグバウフカ山は、上りはケーブルカーで約5分、下山は半日かけてハイキングというのがお決まりのコース。山頂から望むザコパネの町、その向こうに連なるタトラ山脈の眺めは、胸のすくような素晴らしさです。

グバウフカ山ケーブルカー
グバウフカ山ケーブルカー
山頂からの眺め
山頂からの眺め
クルプフキ通り

ザコパネのメインストリート。木工品のように見えるのは、スモークチーズの屋台です。オスチペクという羊のミルクで作るチーズで、塩気が利いた独特の風味とシコシコの歯ごたえで美味。通りの北端には、ザコパネ・スタイルと呼ばれる伝統的な木造建築が多数。山小屋風の素朴な造りとカントリー調の装飾がかわいらしく、実はこの様式をお墓にも取り入れているので、教会とともに一見の価値があります。

クルプフキ通り
クルプフキ通り
ザコパネ・スタイルの旧木造教会
ザコパネ・スタイルの旧木造教会
名物のスモークチーズ
名物のスモークチーズ
プシェミシル

ザコパネからクラクフに戻り、ポーランド鉄道PKPが運営するインターシティに乗車。一路ウクライナへ向かいます。国境の駅プシェミシルでは、車両の台車交換作業に遭遇しました。ポーランドの線路幅は標準軌、ウクライナは広軌のため、乗客を乗せたまま車両を持ち上げ、車輪の付いた台車部分を差し替えるのです。ちなみにこの地方で一番美しい街といわれるプシェミシル、駅舎も宮殿のように瀟洒です。

車両の台車交換作業
車両の台車交換作業
ヴロツワフ クラクフ ザコパネ