


パリの赤土は、3年連続同じチャンピオンを祝福した。男子はラファエル・ナダルが出場3回目で全仏負け知らずの3連覇を勝ち取り、女子はジュスティーヌ・エナンが同じく全仏3連覇、通算4回目の優勝、そして6回目の四大大会優勝を果たした。男女共に3年連続同じチャンピオンが誕生するのは、4つのグランドスラム大会史上4度目、そして1968年オープン化以降では初めての快挙である。
フェデラーvsナダル、“頂上対決”への期待で始まり、期待通りその頂上対決で幕を閉じた男子シングルス。四大大会でのセット連取記録が36で止まった以外は、あくまでも順調に勝ち上がってきたフェデラーと、そのフェデラーに全仏直前のハンブルグ大会決勝で敗れ、クレーでの試合連勝記録を81ストップされたナダルによる、決勝戦が行われた。2年連続で同じ決勝カードが実現するのは、1968・69年ロッド・レーバーvsケン・ローズウォール以来。そして1969年はレーバーが大会を制し、年間グランドスラムを勝ち取ることになるのだが…。しかし、2007年のフェデラーは、わずか1セットを奪っただけで2年連続準優勝に終わり、そのレーバー以来38年ぶりの連続グランドスラムもその手につかみとることができなかった。そして大会中に21歳の誕生日を迎えた“赤土王”が、ローランギャロスでの試合成績を21勝0敗へと伸ばし、やはり大会3冠のクエルテンから大きな優勝トロフィーを手渡された。
一方、序盤に降り続いた雨のせいか、低温で体調を崩したせいか、それともやはりクレーの特殊さのせいか、1回戦で早くも第3シードのロディック、第5シードのゴンザレス、そして第8シードのブレークが消える波乱も。1998年全仏王者のモヤは、3年ぶりに準々決勝へ進出して30歳ベテランの健在をアピール。また準決勝でフェデラーの前に屈したダビデンコは、ストレート負けながら3時間1分の手に汗握る好勝負を戦った。特に第2・3セットはタイブレークまでもつれ込み、これまで少々地味な存在だったロシアNo.1プレーヤーは、世界4位の実力と気迫を大いに見せ付けることに成功したと言えるだろう。
ボトムハーフの準決勝に進出したジョコビッチは、女子シングルスで同じくベスト4入りしたヤンコビッチ、準優勝イバノビッチと共に、今大会にセルビア旋風を巻き起こした張本人。ユーゴスラビア紛争の戦火を潜り抜けてきたそれぞれ20歳、22歳、19歳の若き3人は、クレースペシャリスト顔負けのベースラインからのゲーム展開と、コートに溢れるさわやかな笑顔で、セルビア人としてはモニカ・セレスが1996年全豪を勝ち取って以来となる四大大会優勝へと大きく近づいた。残念ながらジョコビッチは男子勝者ナダルに、ヤンコビッチとイバノビッチは女子勝者エナンになすすべなく敗れてしまったが、「目標は世界1位!」と大胆にも言ってのける3人の今後にはますます期待できそうだ。
好調セルビアの女子2人に対して、2001年にフェドカップ優勝を一緒に勝ち取ったクライシュテルスが大会直前に引退したため、ひとりでベルギー女子テニス界の期待を背負ったエナン。プライベートな問題で今年の全豪をスキップしていたが、母との思い出の地ローランギャロスで勝ちたいと願う気持ちと、昨シーズン、四大大会全てで決勝進出を果たした高い実力は、他の誰よりも抜きん出ていた。ちなみにエナンの全仏4回優勝という成績は、最多優勝7回のエバートと優勝6回のグラフに次ぐ3位(オープン化以降)。先人はそれぞれ32歳、30歳まで四大大会タイトルを獲得してきただけに、25歳エナンがいつの日か大会最多優勝を更新する可能性は大いにある。
また肩の痛みにも関わらず、シャラポワはパリで初めての準決勝に進出。「いつか全仏を絶対に勝ちたい」と夢を語る全英・全米女王は、4回戦シュニーダー戦では観客のブーイングにも負けず2時間37分の激戦をタイブレークの果てにもぎ取り、勝負強さと精神的な図太さを見せ付けた。一方、またしても精神面の脆さを露呈し、3回戦敗退を喫してしまったのが地元フランスのモレスモー。もちろん3月に患った虫垂炎のせいで落ちた筋力・体力を、完全に取り戻せていなかったのも原因だろう。
3選手が参加した日本女子からは、ベテラン杉山愛がシングルスで3回戦進出。20歳チェクフェターザに敗れ、全仏では4年ぶりとなる4回戦進出はならなかった。しかし、杉山がスレボトニクと組んだ女子ダブルスでは、強豪レイモンド&ストーサー組との準決勝をフルセットの末破り、2年連続となる決勝進出。モリック&サンタンジェロ相手に優勝こそ果たせなかったが、スレボトニクとペアを組んで初となる四大大会での準優勝。相性抜群とも言えるこの二人が、今後の四大大会で優勝を狙うべく活躍することに期待したい。
また、ジュニア大会に出場した女子選手では、奈良くるみ、秋田史帆がシングルスで2回戦敗退を喫するも、この二人がコンビを組んだダブルスでは準々決勝に進出。ベスト4進出は果たせなかったが、ジュニアでは唯一出場したこの日本女子二人がダブルスのベスト8に名を残した。
大会第11日から開催された車椅子トーナメントでは、男子シングルス初戦(準々決勝)で国枝vs斎田の日本人対決。これを制した国枝が準決勝、決勝をも勝ちとり、今季全豪に続く2つ目のビッグタイトルを手に入れた。また、国枝&斎田コンビの男子ダブルスと、八筬美恵&グラベリエの女子ダブルスが決勝進出を果たし準優勝に輝いた。今季全豪でシングルス&ダブルスの2冠を達成した国枝にとっては、四大大会2連続の2冠達成こそならなかったものの、日本勢が好成績を収めた。