全米オープンテニス2011
男子はジョコビッチ大本命、混沌の女子はセレナのコンディションがカギ

N.ジョコビッチ 写真:AP/アフロ
A.マレー 写真:Action Images/アフロ
■ ストップ・ザ・ジョコビッチの一番手はマレー!?
今シーズン最後のグランドスラムがニューヨークを舞台に幕を開ける。新王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の勢いは止まるところを知らない。ウィンブルドンでは宿敵ラファエル・ナダル(スペイン)を倒して初タイトルを奪取、しばしの休養を挟んで登場したモントリオール・マスターズで今季9勝目をあげた。マスターズは5勝目になる。ジョコビッチの武器はスピードと、フォアに引けをとらないバックハンドの強さで、両サイドからのカウンターをライン際に展開し、ナダル、フェデラーという長年の2強を退けてきた。フェデラーに3勝1敗、ナダルには5戦全勝(全て決勝戦)……これだけを取れば、「3強」という呼び方は当てはまらないだろう。
今季の快進撃を押し上げてきたのは、フィジカルトレーニングやダイエット効果とも言われるが、やはり積み上げてきた自信にほかならない。そこへきて、全米オープンは本来最も得意なハードコートだ。07年から昨年まで4年連続でベスト4以上に進んでいる。昨年はナダルに敗れて準優勝、残る3度はいずれもフェデラーに屈したが、今となってはそれもジョコビッチ本命視を揺るがすものではないだろう。
一方で、ナダルの落ち込みが心配だ。モントリオール・マスターズでは初戦で敗れた。相手が世界ランク41位にいたイバン・ドディグ(クロアチア)だったことはともかく、ナダルのツアーでの初戦敗退は08年のローマ以来。フェデラーもモントリオールの3回戦でジョーウィルフライ・ツォンガ(フランス)に敗れている。ウィンブルドンに次いでの連敗であり、ここに来て新たな苦手を作ってしまったのは気になる。
では、圧倒的な本命ジョコビッチに死角はないのか。実はアンディ・マレー(イギリス)が善戦している。全米オープンの前哨戦となるシンシナティの決勝でも勝利するなど、ハードコートでジョコビッチとの対戦成績は4勝4敗。さらにはジョコビッチと同じく今季グランドスラム全てでベスト4以上に進出している。また、ジョコビッチに5勝4敗で勝ち越しているのが、ランキング(8/22付け)を11位まで上げているツォンガだ。強烈なサーブに、器用さも持ち合わせ、昨年の全豪でジョコビッチをフルセットで倒した準々決勝は印象的だった。
打倒ジョコビッチのもう一つの難しさは、ジョコビッチが勝ち上がりながらどんどん調子を上げていく点だ。早い段階で対戦するほうがチャンスもある。そういう意味で、当たれば期待できる下位シードといえば、2年前の優勝者で、故障からほぼ復帰したフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)か。懐の深いショットは球筋が読み難い上に、南米選手にとっては全米の舞台はウィンブルドンより大きなモティベーションになる。
デル ポトロとほぼ同世代の錦織圭は、ウィンブルドン後にデビスカップを戦い、そこから肩の痛みを訴えて大会をキャンセルした。シンシナティで元気に復帰しているが、ゲンのいい全米だけに何らかの話題を提供してくれるのではないか。

C・ウォズニアッキ 写真:アフロ
P・クビトバ 写真:アフロ
■ 本命不在の女子シングルス 新世代の台頭必至!
女子は波乱が続きそうだ。前哨戦のひとつトロントの『プレミア5』ではトップ3全員が3回戦までに敗退。女王カロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)は初戦敗退、2か月ぶりの復帰戦となったキム・クライシュテルス(デンマーク)は予選上がりのジェン・ジー(中国)との2回戦を途中棄権し、昨年全米準優勝のベラ・ズボナレワ(ロシア)もアグネツカ・ラドバンスカ(ポーランド)との3回戦を突破できなかった。そういえば全仏でも上位4シードが誰もベスト4に残らず、ウィンブルドンにいたってはトップ3シードが全員3回戦までに姿を消している。そんな中で今年のグランドスラム優勝者も、全豪がベテランのクライシュテルス、全仏はアジア初のリー・ナ(中国)、ウィンブルドンは古豪チェコの新鋭ペトラ・クビトバ、と激しく入れ替わった。
荒れ模様の背景にあったのが、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)とクライシュテルスの故障だろう。柱を失ったドローが荒れるのは常だ。故障が長引くクライシュテルスが全米欠場を発表したが、その一方でセレナが本命候補に躍り出てきた。ウィンブルドン前にほぼ1年ぶりに復帰し、夏のハードコートに入るやスタンフォード、トロントと2大会連続優勝。アメリカの凋落が囁かれる中、過去3度優勝のセレナへの期待が膨らんできる。サプライズは十分にあり得るだろう。シンシナティ大会は右つま先のケガで欠場したが、「残念だけど、いい休養になるかもしれない」と前向きだ。
ほかに、ナンバーワンに君臨しながらメジャータイトルのないウォズニアッキも、全米は一昨年に準優勝、昨年はベスト4と最も自信のある大会に違いない。パリから中国に夢を運んだリー・ナ、クビトバの左右のハードヒットもここにフィットするし、アンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、サビーネ・リシツキ(ドイツ)といった若手に加え、フランチェスカ・スキアボーネ(イタリア)からスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)に至るまで、勝っておかしくない選手は10指に余る。
日本選手への期待も大きい。本戦ストレートインは、森田あゆみ、クルム伊達公子、土居美咲の3人。ウィンブルドン1回戦でタミラ・パスゼック(オーストリア)に12ゲーム連取の逆転負けを喫した森田は、ショックを乗り切ったようだ。7月末のスタンフォードではアナ・イバノビッチ(セルビア)、ラドバンスカを倒した。伊達は40歳と11か月で通算10度目の全米に臨む。昨年は秋に500ポイント近く稼いでいるため、今年の全米はプレッシャーのかかる終盤に向けての大事なステップなのだが、直前のシンシナティで予選を勝ち上がりながら棄権したのが気になる。左手の甲にヒビが入ったらしいが、全米に間に合うか。ウィンブルドンで2勝デビューを飾った20歳の土居はラストインで初の全米出場。左利きの特性に磨きをかけてこのチャンスを生かす飛躍を楽しみに、展望を締めくくりたい。











