−大会レポート−
アジア初のグランドスラム優勝ならず。クライシュテルスが全豪初優勝
2011/01/29
中国の、アジアの、テニスの歴史的な瞬間は、ついに訪れなかった。グランドスラムのシングルス表彰式にアジアの選手が立ち、スピーチをしている……それだけで十分にセンセーショナルなシーンだったが、勝者であれば、世界中に与えるインパクトは計り知れなかった。そしてそのチャンスは小さくなかった。
稀に見る既婚者同士の女子決勝。8度目のグランドスラム決勝を戦うキム・クライシュテルスと、その舞台を初めて経験するリー・ナ。その差だろうか、リーは立ち上がりの8ポイントを続けざまに失った。あとで「まったく緊張はしていなかった」と言い放ったが、確かに立ち直りも早かった。第3ゲームでブレークバックし、2-3からは4ゲーム連取。クライシュテルスが今大会初めて失ったセットだった。
全米オープン3度の優勝を誇る元女王も、一度崩れ始めると、強気なショットが時にまったく入らなくなる。深く、見るからに重そうなショットで攻めていたリーとしては、2セットで勝負を決めたかった。その第2セットは、最初の4ゲームが全てデュースにもつれた末にブレークゲームになった。40-15からキープできなかった第1ゲーム、不用意なミスを続けて攻撃の手が緩まった第7ゲームが悔やまれる。ここからクライシュテルスが流れをつかみ、第1セットとは逆のパターンで、今度はクライシュテルスが2-3から4ゲームを連取した。
豪快なショットで追い詰めるが、クライシュテルスはトレードマークの“開脚打ち”を使って苦し紛れに返してくる。そうした逃げのショットに対してリーの決定打が出なかった。特にオーバーヘッドの対処の甘さが第2セット以降、自身の足を引っ張った。
最終セット第4ゲーム、リーは40-15からダブルフォールト絡みでブレークされ、3-1としたクライシュテルスはここから畳み掛ける。第5、第7、第9ゲームと3度あったクライシュテルスのサービスゲームでリーが奪ったポイントはわずか1。リーにブレークバックのチャンスはなかった。
「もう終わったこと。もうすぐ旧正月だし、しばらく家族とゆっくりして次の大会に備える」。リーは笑顔さえ見せながらさばさばしていたが、3セットとも最初のサービスゲームをブレークされるなど、立ち上がりの淡白さは敗因のひとつだろう。「1セットは6ゲーム取らないといけない。最初を落としたからって何?」と強気に答える28歳だが、そのメンタリティは明暗どちらに転ぶかわからない。
一方、「最後の最後まで激しい試合だった」と、ほっとして涙を浮かべたクライシュテルス。10代の頃、オーストラリアのニューヒーローだったレイトン・ヒューイットのガールフレンドだったこともあり、オーストラリアのファンから「オージー・キム」と呼ばれるほど可愛がられた。過去に準優勝1度、ベスト4が4回。「やっと本当の『オージー・キム』になれたかしら」とはにかむ元女王の前に、激しい中国旋風は止んだ。
文・山口奈緒美(やまぐち・なおみ)








