思い出は7万2000人の歌声の中のウェールズ戦とハワイのアメリカ戦かな。
あとは震災。釜石でもクライストチャーチでもラグビーは被災地を勇気づけた。

  • 2018/3/30

思い出は7万2000人の歌声の中のウェールズ戦とハワイのアメリカ戦かな。 あとは震災。釜石でもクライストチャーチでもラグビーは被災地を勇気づけた。

日本ラグビー多国籍化の先駆者がアンガスことアンドリュー・マコーミックだ。祖父と父がともにオールブラックスというラグビー王国のサラブレッドは25歳で来日。猛タックルを武器に1996年に日本代表入りを果たすと、1998年には外国人選手として初のキャプテンに就任し、1999年ワールドカップに出場。国内では東芝府中(現・東芝ブレイブルーパス)を3連覇に導き、キャリアの最後は釜石シーウェイブスでプレーした。引退後はコーチを歴任しながら、ラグビーキャリアの最初と最後の地であり、2011年に相次いで震災に襲われたクライストチャーチと釜石の震災復興にも尽力した。太平洋をまたいで楕円球を追った闘将が語る世界のラグビー、そして日本のラグビーとは――。

――ニュージーランド時代はカンタベリー代表で、日本に来てからは日本代表で、たくさんの国際試合を経験しましたね。一番思い出に残っている試合をあげていただけますか。

 やっぱり1999年ワールドカップのウェールズ戦ですね。カーディフのミレニアムスタジアム(現プリンシパリティ・スタジアム)でやった試合だね。ウェールズは1番から15番まで有名な選手が揃っていたし、その相手に前半は良い試合をした。前半が終わったときは15-26。「これは行けそう、勝てるかもしれない」と思ったよ。だけど、ウェールズの後半のカウンターアタックはすごかった。
 もうひとつ、すごかったのはお客さんだね。7万2000人。ニュージーランドでも5万人近いお客さんのもとで試合をしたことがあったけど、ウェールズの7万2000人は全然違った。何よりすごいのは歌声だったね。となりの選手と2-3メートルのところでも声が全然聞こえないんだよ。いいアタックをして相手を抜いたときでも、味方がどこにサポートについているか、声が聞こえないから全然分からない。それでチャンスを生かせなかった場面もあった。すごい体験だったよ。

――印象に残っている試合会場は他にありますか。

 日本代表で一度、ハワイでテストマッチをしたことがある(1999年のパシフィック・リム選手権、アメリカ戦)。ハワイにはそれまで、遊びに行ったことはあったけど、ラグビーをするとは思わなかったよ。会場はワイキキに近いカピオラニ・パークで、お客さんも日本人が多かった。練習のあとは海に入ってクールダウンしたし、ユニークなツアーだった。でも選手たちは、ラグビーパンツのまま海に入っていたし、周りの観光客からは浮いてたな(笑)

――ニュージーランド時代の対戦相手では。

 ニュージーランドに遠征してきたスコットランド、アイルランドとカンタベリー代表で対戦した。スコットランドには有名なギャビンとスコットのヘイスティングス兄弟がいて、僕のトイメンがスコットだった。すごくエキサイティングな試合だった。
 アイルランド戦は試合もだけど、アフターマッチが非常に楽しかった(笑)。クライストチャーチのランカスター・パーク(現・AMIスタジアム)で試合をした後、アフターマッチ・ファンクションで楽しく飲んだ後、アイルランドの選手たちが『もっと飲もう』『いいところへ案内しろ』と言ってきて、クライストチャーチの町の方へ繰り出して、遅い時間まで楽しんだよ。もちろん試合ではお互いに勝ちたいと思って全力を出すんだけど、試合が終わったらお酒を飲むことにも全力を出す。グラウンドで80分間戦うというだけでなく、そこにラグビーの文化というか、ラグビーの心があると思うな。
 あと印象的だったのはアルゼンチン。フォワードがすごかった。スクラムでもブレイクダウンでもめちゃめちゃ激しくくる。特にスクラムは世界一強かった。日本代表が1999年のワールドカップで対戦したときは、フロントローの3人をまとめてハーフタイムで交代させる作戦を使った。それくらいフォワードは消耗した。僕はバックスで良かったと思ったよ(笑)

――アンガスの母国ニュージーランドといえば、オールブラックスの強さは昔も今も特別ですね。

 オールブラックスはちょっと不思議なチームだね。最初のテストマッチでは、相手チームが分析して準備してくるので、相手チームが頑張って、それで良い試合になる。でも次のテストマッチになると、オールブラックスは相手がやってくることに対応して、賢いラグビーをする。対応力、学習能力が素晴らしい。

――今のオールブラックスのスティーブ・ハンセン監督はクライストチャーチ・ボーイズ・ハイスクールでアンガスの先輩ですね(8歳上)。

 子供の頃からよく知っているよ。家族ぐるみで親しかったし、1年くらい一緒に住んだこともある(笑)。オールブラックスを目指していた頃は、同じカンタベリー代表チームで、同じポジション、13番を争うライバルだった。僕が東芝府中に来てからは、ディフェンスのコーチに来てもらった。今から25年前のこと。東芝府中の日本選手権3連覇(1996~1998年度)は、スティーブが教えてくれたディフェンスで勝ち取ったんだよ。
 そして彼の素晴らしいところは、チームの雰囲気、人間関係を良くするところ。本当に素晴らしいよ。たとえば、ダン・カーターは世界でもトップのスキルを持っていて、コーチは何かを教えるわけじゃないけれど、スティーブはダンを気持ちよく、メンタルのいい状態でプレーさせるチームを作るんだ。子供の頃からそうだった。自分が関わったどのチームも、すごく雰囲気のいい、前向きなチームにするんだよ。

――アンガスとスティーブの地元のクライストチャーチは、東日本大震災と同じ2011年に大きな地震に見舞われましたね。

 日本では東日本大震災のとき、ピタ・アラティニやスコット・ファーディーなど釜石シーウェイブスの選手たちが被災者を助けたことが話題になったけれど、クライストチャーチでもたくさんのラグビー選手が被災した人たちを助けたり、泥を掻き出したり、すごく働いた。そんなこともあって、地震の後は、ラグビーの試合でも応援がすごかったんだ。ニュージーランドでは、地元のチームがラグビーで勝つか負けるかで、地域のみんなが元気になったり元気がなくなったりするけれど、あのときのクルセイダーズは思うように練習できなかったり、スタジアムが使えなくなったりした中で、すごく頑張っていた。チャリティー活動もたくさんしていた。だから、昨年のスーパーラグビーで久しぶりにクルセイダーズが優勝したときは、カンタベリーじゅうの人たちがものすごく喜んでいた。日本の東北も同じだけど、震災の被害を乗り越えて、前へ進んでいこうとしている。それをずっと継続している、立ち止まっていないよね。素晴らしいことだよ。

――今の日本代表をどう見ていますか。

 イングランドは以前から、世界のトップに優るとも劣らないポテンシャルを持っていたと思います。そこにエディー・ジョーンズさんという名コーチが行って、僕らにしたときと同じように、もっと素晴らしいコーチングを施しているんだろうと思いますね。そこをぜひ見てみたい、体感してみたいです。良い感じで来ていると思うよ。昨年(2017年)の1年間にすごく良くなった。特に、フランスと引き分けた試合はすごく良い出来だった。今年どうなっていくか、すごく楽しみだね。サンウルブズも面白い存在だよね。日本代表のスタッフが選手を良く見ることができる。トップリーグの試合だけではなく、強い相手とタフな環境で試合をする、試合だけではない姿を見られるからね。ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフも良い人間関係を作ることが得意だし、日本代表の選手が一緒にいられる時間を増やせたことはとてもポジティブなこと。ワールドカップはもう来年だし、グラウンド以外の時間を増やすのはとてもいいことだと思うよ。

――アンガスにとってはジェイミーも長い付き合いですね。

 そそうね。ニュージーランドにいた頃は僕がカンタベリー、ジェイミーはオタゴで、敵同士だったけど、1999年には日本代表で一緒に戦った。当時からリーダーシップがありましたね。彼のいいところは分かりやすいこと。白と黒がはっきりしているから、選手もやりやすいだろうね。人間関係も同じで、複雑なマネジメントはしないで、シンプルに作っていく。面白いよ。

――アンガスはこれからどうラグビーに関わっていきたいと思っていますか。

 僕は25歳までニュージーランドにいて、日本に来てから25年になりました。人生の半分は日本で過ごしていることになりますね(笑)。日本のラグビーをどのレベルでも応援したいと思っている。日本代表、サンウルブズはもちろん、大学も高校も、子供のラグビーもお手伝いしたいですね。
 特に教えたいと思っているのはジュニアレベル。具体的には中学生レベルですね。この年代の子供たちに『ラグビーをやりたい』『ラグビーが楽しい』という気持ちになってほしい。毎朝、起きるときに『今日もラグビーをやりたい!早くスパイクをはきたい!』という気持ちになってほしい。『今日はラグビーの練習ができるぞ。嬉しい!』というワクワクした気持ち。僕が育ったニュージーランドにはそれがあったし、それがオールブラックスの強さを作っている。その感覚を、小学生や中学生が持ってくれたら、日本のラグビーはもっともっと良くなると思っているよ。


アンドリュー・ファーガス・マコーミック
1967年2月5日、ニュージーランド・クライストチャーチ生まれ。ポジションはセンター。カンタベリー代表、ニュージーランド・コルツなどを経て1992年に来日して東芝府中に加入。1996年度から主将として日本選手権3連覇。1996年に日本代表入りし、1998年から主将を務め、1999年ワールドカップ出場など25キャップを持つ。2000年に現役を引退、東芝府中で2シーズンヘッドコーチを務めた後、2002年に釜石シーウェイブスで現役復帰し、36歳までプレーして2003年度に引退。のちコカコーラウエスト、NTTドコモ、関西学院大、摂南大のコーチを歴任。祖父と父はともにオールブラックス。愛称アンガス。現役時のサイズは185センチ92キロ。


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