【世界に挑戦する日本人】侍・柴崎岳が挑むバルセロナ戦を「情熱と冷静の間」で正しく理解する

  • 2017/08/24

text by 木村浩嗣

柴崎の挑戦の意味と現在地

リーガに挑戦する日本人として何が大事か?と問われれば、「チームの調和を崩さないこと」と答える。日本ではおそらく、ゴールだ、アシストだ、決定機演出だ、と言われているのだろう。背番号が10だからそう騒がれるのだろうが、背番号だとかアタッカーとしての本分なんて実はどうでもいいことなのだ。

柴崎岳にとってリーガ挑戦は始まったばかり。それは所属するヘタフェも同じである。リーガ・エスパニョーラは甘くない。甘ければヘタフェは降格をしていないはずだし、もっと日本人選手がいるはずではないか。世界最高峰のリーグの中でヘタフェがいかに調子外れにならず、レベルの高い選手たちの中で柴崎がいかに協調していくか。これが今の段階では求められている。

そういう意味で、リーガ・エスパニョーラ2017−18 第1節敵地でアスレティック・ビルバオと引き分けたチームとそれに大いに貢献した柴崎は、実に素晴らしい一歩を踏み出した、と言える。

ここで言う「貢献」とは、[4−4−2]のセカンドトップという本人の希望(トップ下)とは異なるポジションで、DFラインや相手のキーマン、ベニャに忠実にプレスを掛け、1対1の対応で2度ボールを奪い返し、逆に相手のプレスに対して少ないタッチで裁いてボールを失わないという、クレバーな対応をしたことを指す。

ヘタフェはボールをポゼッションしないカウンターチームとして設計されている。それが昇格チームが世界一のリーグで生き残るためにボルダラス監督が選んだ道である。当然マイボールの時間、つまり攻撃の時間は短くなる。チーム戦術的に優先されるのはボールを持たない時間に何をやるか、きちんと守れるか、ボールを奪い返せるかである。セカンドトップである柴崎もアタッカーである前にまずディフェンダーでなければならないのだ。
アスレティック・ビルバオ戦での柴崎は、そんな戦い方と見事に調和していた。チームメイトとの和を崩すことなく監督の与えた役割にも違和感なく、チーム全体の流れに乗っていた。傑出していたわけではなくゴールやアシストだってないからスポーツ紙の採点で高得点となることはないが、ボルダラス監督は間違いなく高評価したはずだ。

昇格チームの新加入選手でありながら、デビュー戦で監督にこれからも使ってもらえるプレーができたことが、リーガ1部初挑戦の日本人としていかに凄いことかを我われ観戦する側はもっと自覚すべきだろう。

見る側に求められる正しい理解

柴崎はリーガの凄さを理解している。

トップ下のこだわりとか10番のプライドとかにこだわっていてはここではやっていけないことを。想えば7カ月前、スペインにやって来た彼は体調を崩し練習もまともにできなかった。それがあっと言う間に2部テネリフェの切り札となり、今は1部リーグでレギュラーの座をつかみかけている。これだけの適応力と成長力はやはりクレバーである所以だろう。

そんな柴崎の前にバルセロナが立ちはだかる(放送日時:9月16日(土)よる11:00[WOWOWライブ])。いきなりサッカー界の頂点にいるチームと当たるのだから、日本での注目度と期待はいやが上にも高まっているに違いない。

だが、柴崎にとっては今はまだ「ただの1試合」であるはずだ。夢は抱くだろうし興奮もするだろうが、その前後のレガネス戦、セルタ戦も同じくらい大事だ。いや、もっと言えば毎日の練習すら柴崎にとっては戦いであるはずなのだ。

今年3月エイバルに乾貴士を訪ねた。「もっと温かい目で見守ってほしい」と柴崎に応援エールを送る彼の表情は、実に晴れ晴れとしていた。リーガ挑戦2年目にしてつかんで離さないレギュラーの座。信頼する監督と出会え良いチームメイトに支えられ地元の人たちに愛されて、「今が人生で一番楽しいかもしれない」とまで口にしていた。ノーゴールだったのが玉にキズだったが、話を聞いた監督も本人も「良いプレーができている」と心配していなかった。果たしてその2カ月後、彼はバルセロナ相手に鮮烈な2ゴールを叩き込む……。

すべての大きな成功は日々の小さな成功の積み重ねである。カンプノウでの2発は派手ではあったがサプライズではなかった。エイバルと乾の上昇の軌跡を追っていれば、そういうことも当然起こり得た。

バルセロナと初めて顔を合わせる柴崎にももちろん活躍してほしいが、それは彼の歩みの延長線上にしか起こり得ない。監督とチームメイトに信頼され続けた結果として柴崎が成長した末に偶然ではなく「必然」として、世界を驚かせる(が、本人は驚かない)ビッグプレーが生まれるのだ。

世界に挑戦する日本人。彼らを応援する我われにも世界水準の見方が求められている。

プロフィール
木村浩嗣:編集者、コピーライター等を経て1994年からスペイン・サラマンカへ。98年、99年とスペインサッカー連盟のコーチライセンスを2年連続で取得し、7年間少年チームを指導。06年9月に帰国して、『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年12月からスペイン・セビージャに拠点を移し、特派員兼編集長となる。15年7月、編集長を辞しフリーとしてスペインサッカーを追いつつ、2014-15シーズンにセビージャ市王者となった少年チームを率いている。

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