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コラム / 海外ボクシングコラム特別編

5階級制覇を狙う「閃光」ドネア
5/31 マカオでフェザー級王座に挑戦

元4階級制覇チャンピオン、ノニト・ドネア(31歳=フィリピン)が5月31日、5個目の王座獲得を狙って中国特別行政区マカオでシンピウェ・ベチェカ(33歳=南アフリカ共和国)の持つWBA世界フェザー級"スーパー王座"に挑戦する。130年になる近代ボクシングの歴史上、5階級制覇を成し遂げた世界チャンピオンはオスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ=6階級)やマニー・パッキャオ(フィリピン=6階級)、フロイド・メイウェザー(アメリカ)ら6人しかいない。「フィリピンの閃光」と呼ばれるドネアは、「7人目」として歴史に名を刻むことができるのか。
そんな注目の一戦を前にドネアの半生を紹介し、ベチェカとの試合を占ってみよう。

スピーディーなパンチのやりとりのなか、突然繰り出す左フックで何人もの猛者をキャンバスに沈めてきたドネアだが、少年時代はいじめられっ子だったという。学校から泣いて帰ることもしばしばで、内にこもるナイーブな子供だったというから意外だ。ボクシングを始めたのは11歳のときだった。「アマチュアの大会でトロフィーをもらってくる兄が父親に褒められているのを見て、自分も褒められたいと思った」のだという。家族でフィリピンからアメリカに移り住んだのも、そのころのことだった。

アマチュアでリングに上がるようになったドネアは、17歳のときに全米選手権で優勝するなど際立った活躍をみせた。結果として出場はかなわなかったが、2000年シドニー五輪のアメリカ最終予選では決勝まで残った。アマチュア戦績は86戦78勝(8KO)8敗という見事なものだった。興味深いのは、KO率が1割にも満たないことである。プロでは34戦32勝(21KO)2敗と高いKO率を誇るドネアにしては、異常に低い数字といえる。
「アマチュア時代はスピードを生かして軽くパンチを当ててポイント奪い、あとはリスクを避けて動くというボクシングを徹したから」とドネアは自己分析している。そんな選手が数年後に戦慄的なKOを量産するのだから分からないものだ。

プロ転向は01年2月、18歳のときだった。2戦目で判定負けを喫した以外は順調に白星を重ね、07年7月にはビック・ダルチニャン(アルメニア)を5回TKOで破ってIBF世界フライ級王座を獲得した。15対1という絶望的なオッズを引っくり返しての戴冠だった。これを皮切りに5年の間にS・フライ級、バンタム級、S・バンタム級で王座を獲得、あっという間に軽量級のスターの座に駆け上った。12年10月にはWBCのS・バンタム級名誉チャンピオン、西岡利晃(帝拳)にも9回TKO勝ちを収めている。昨年4月、WBAチャンピオンのギジェルモ・リゴンドー(キューバ)に判定負けを喫したが、株を下げる内容ではなかった。4階級にまたがる世界戦の戦績は13戦12勝(8KO)1敗というみごとなものだ。

ドネアが大きな注目と人気を集めるのは、彼の試合が常にスリルに富んでいるからだ。スピードで相手をコントロールしておき、フェイントなど様々な仕掛けを用いて罠にかけ、そのうえで破壊力のある左フックを直撃――テクニックとパワーの融合した高度なボクシングは、見る者を飽きさせず非日常的な興奮を与える。ドネア自身も「いつもKOを狙っている」と話している。そして「もちろん今回(ベチェカ戦)もKOを狙う。ただ、これまでとは違う自分を披露できるんじゃないかな」ともドネアは加える。

オッズは5対1で挑戦者有利
8階級制覇を視野に入れるドネア

挑戦者のノニト・ドネア(31=フィリピン)は「KO勝ちで5階級制覇」と宣言するが、自身が描く理想どおりにことが運ぶかどうかは蓋を開けてみないと分からない。なにしろ"スーパー・チャンピオン"のシンピウェ・ベチェカ(33=南アフリカ共和国)は、半年前に51戦不敗だったV18王者クリス・ジョン(インドネシア)を破って王座を奪い取った強者なのである。「いずれは前人未踏の8階級制覇を」と近い将来の夢を口にするドネアだが、ベチェカは楽観視できない危険な相手といえる。

ベチェカはアマチュアで150戦133勝17敗という戦績を残している。02年1月に21歳でプロに転向し、12年のキャリアで28戦26勝(16KO)2敗を記録している。07年5月には長谷川穂積(千里馬神戸⇒真正)の持つWBC世界バンタム級王座に挑戦するために来日。善戦したものの116対112(二者)、115対113という小差の12回判定負けを喫した。その後、S・バンタム級を経てフェザー級に転向、昨年12月に悲願の戴冠を果たしている。遠い距離から左ジャブを突いていたかと思うと急に接近してラフな左右フックを叩きつけ、相手が反撃しようとするとさっと射程外に逃れる――そんな捕えどころのないボクシングがベチェカの持ち味といえる。「V12」、12気筒の高性能エンジンというニックネームがあるように、スタミナも十分だ。自国はもちろんのこと日本、アメリカ、メキシコ、インドネシア、オーストラリアでも試合経験があり、精神的にも逞しい選手といえる。

そんなチャンピオンをドネアはどう分析しているのだろうか。試合を約50日後に控えた4月中旬、トレーニング地のフィリピンから来日したドネアに直接聞いてみた。「ジョンとの試合と、その前の試合(ダウド・ヨルダンに12回TKO勝ち)の映像を少し見たけれど、彼は正統派ではないと思う。動きが複雑で、平均以上のパワーもある。決して戦いやすいタイプではない」と警戒の色をみせている。しかし、そのうえで「トレーナーでもある父親と試合までに相手のことを研究するつもり。これまで私のことを応援してくれた人たちをガッカリさせるような試合はしない。今度の試合では新しい面を披露できるんじゃないかな。楽しみにしていてほしい」と話している。

ドネアにとって今回の試合は極めて重要な位置づけになるが、31歳の天才はすでにその先をも睨んでいる。5月31日のイベントで行われるフェザー級のIBFタイトル戦や、WBAのレギュラー王座の行方にも興味を抱いているのだ。「フェザー級のチャンピオン同士の試合が実現するなら、誰とでも戦うつもり。このクラスでも自分がベストだということを証明したい」と意欲的だ。

それだけではない。ドネアはフェザー級制覇を足掛かりに、さらに上の階級への転向も視野に入れているのだ。「体の成長に合わせて」という条件つきながら「140ポンド(約63.5キロ=S・ライト級)まで制覇したい」というのである。青写真どおりにいけば8階級制覇ということになる。そのスケールの大きな夢に向かうためにも、今回のベチェカ戦では内容のともなった勝利が必要になる。「もちろん、これまでと同じようにKOを狙って戦う。スピードを活かして戦えば大丈夫」とドネアは語気を強めた。

注目の一戦、オッズは5対1でドネア優位と出ている。


Written by ボクシングライター原功

ノニト・ドネア

ノニト・ドネア

©NAOKI FUKUDA

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