25th

WOWOW

PC版

ご加入はこちら

Excite Match エキサイトマッチ~世界プロボクシング スペシャルページ

コラム

バックナンバーを開く▼

その他

バックナンバーを開く▼

コラム / 海外ボクシングコラムVol.39

長期計画派と短期急落型に大別
~ 減量 PART2 ~
デラ・ホーヤはパッキャオ戦で痛恨の失敗

前回に続いてテーマは「減量」である。ボクサーが試合をするためには、タイトルマッチならば階級に合った規定体重をつくらなければならないし、ノンタイトル戦であっても相手と約束した体重を守らなければならない。これは絶対のルールである。ゆえにボクサーはときとして地獄のような減量苦に苛まれることになるのである。

50.8キロのフライ級、あるいは53.5キロのバンタム級の体重をつくるために20キロ近い減量が必要だったファイティング原田は、「飲みはしなかったけれど」と前置きしたうえで、「減量期はトイレの水も飲みたかったほどだった」と話す。
また、同じく20キロ近い減量を強いられた元世界ライト級王者ガッツ石松は「バケツ一杯の水に1,000万円出しても惜しくなかった」と水分枯渇状態のボクサー心理を話している。いずれも有名な話である。

長谷川穂積(真正)もバンタム級時代はひと一倍、減量には苦労した方だ。「減量に入ると眩暈や就寝中のこむら返りなどは当たり前ですよ。半身浴後に立ち上がろうとして気を失ったこともありました」

ボクサーはリング上で相手と対峙する前に、それ以上の強敵と向かい合っているのである。

ところで、ひとくちに減量とはいうが、選手によって体重の落とし方は異なる。大別すると、試合の45日~30日前から計画的に徐々に減らす“長期計画型”と、試合直前の10日~5日で飲食量を極端に抑えて一気に落とす“短期急落型”がある。

前者には、元WBC世界スーパー・ライト級王者の浜田剛史(現WOWOWエキサイトマッチ解説者)や、現WBC世界スーパー・バンタム級王者・西岡利晃(帝拳)などが該当する。「計画に沿って食べながら体重を落とすことでコンディションを崩すリスクが低く抑えられるんです」と浜田氏はプラス面を説く。そして「減量期が長いわけですから、根気もいるんです。自己管理のできる意志の強い人向きだと思います」とも加える。
確かなデータがあるわけではないが、数の上では日本は“短期急落型”の方が多いようだ。元WBC世界スーパー・フライ級王者の川嶋勝重は、計量直前の数日間はほぼ絶食だった。「5日も食べなければ4キロや5キロは落ちますよ」と平然と話していたものだ。
川嶋と3度拳を交えた元同級王者・徳山昌守も同型だった。「52.1キロまで落とさなければならないのに、試合数日前で56キロあって体脂肪率は4%(2.2キロ相当)。どうやっても計算が合わないんですよ」。最後は絶食によって筋肉量を落としていたことになる。

“短期急落型”は体調を崩すリスクも高いが、調整がうまくいけば文字どおりリターンも大きい。計量後の大幅なリバウンド(反動による体重回復)が望めるのだ。飲食量や体調管理意識の違いにもよるが、軽量級ながら一晩で5キロ~7キロの増量がある場合は、直前に急に体重を落としたケースが多いといえる。
反対に“長期計画型”は比較的リバウンドが小さい。時間をかけて胃を慣らしたため計量後の飲食可能量が限られてしまうのである。

その典型が08年12月、マニー・パッキャオ(フィリピン)と対戦した際のオスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)だ。7年ぶりのウェルター級ということを過度に意識したのか、デラ・ホーヤは試合1ヵ月前からリミットの体重に下げ、そのウェートを保ったままトレーニングを続けていたと伝えられる。145ポンド(約65.7キロ)で無事に計量をパスしたものの、一晩でのリバウンドはわずか2ポンド(約900グラム)に留まった。スピードを重視したため極度に飲食をセーブしたとも考えられるが、試合でのパワー、スピード、覇気の欠落を考えると体重調整に大きなミスがあったと考える方がより自然だ。長期間にわたって体重をセーブしたために、体力そのものが失われてしまったのだろう。

このように体重調整(減量)の成否は、勝負のカギになることも少なくないのである。

(敬称略)

<以下、つづく>


Written by ボクシングライター原功

©NAOKI FUKUDA

▲ページTOPへ