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コラム / 海外ボクシングコラムVol.113

<世界のトップボクサー>
打倒パッキャオを狙うシンデレラ王者
クリス・アルジェリ(アメリカ)I

ここ10年以上にわたって世界のボクシング界を牽引してきたマニー・パッキャオ(35=フィリピン)が11月23日(米国時間22日)、中国特別行政区マカオでWBO世界ウェルター級王座の初防衛戦に臨む。その相手に抜擢されたのが、1階級下のS・ライト級WBO王者のクリス・アルジェリ(30=アメリカ)だ。今年6月、6対1のオッズを引っくり返してルスラン・プロボドニコフ(30=ロシア)から王座を奪ったアルジェリだが、世界的な知名度、実績という点では必ずしも十分とは言い切れない。しかし、「パッキャオに勝てば大きく将来が開ける」と、前回以上の番狂わせを起こすことに自信をのぞかせている。

6月14日、ニューヨークのバークレイズ・センターに集まった観客の多くは、地元出身のアルジェリがプロボドニコフに挑戦するとあって大きな期待を胸に抱いていた。ところが、試合開始から3分も経たないうちに半ば失望に代わってしまった。王者のパンチを浴びてアルジェリが2度のダウンを喫してしまったからだ。ダメージは軽度だったが、いきなりの3失点は致命的とも思われた。

しかし、アルジェリは諦めずに局面の打開を図り、徐々に得意のアウトボクシングで王者を惑わせていった。試合に備えマルコス・マイダナ(アルゼンチン)やブランドン・リオス(アメリカ)といった典型的なファイターとスパーリングをこなしたことがプラス効果をもたらしたといえる。勝負は判定に持ち込まれ、ひとりのジャッジは117対109という大差で王者に軍配を挙げた。プロボドニコフの攻勢点が高く評価されたのだろう。しかし、残る二者は114対112の小差ながらアルジェリの勝利を支持した。178センチの長身と183センチの恵まれたリーチを生かしたアウトボクシングが全般的に試合を支配したと判断したのだ。試合後、右の周辺を大きく腫らした30歳の新王者は冷静に戦いを振り返った。「1ラウンドにダウンを喫したけれど、それからがスタートだと考えを切り換えたことがよかった。8ラウンド以降は右目も塞がりかけていたけれど、相手の左フックに気をつけて戦った。彼のリズムを断ち切ることができたのが勝因だと思う」

75万ドル(約8100万円)を得たプロボドニコフに対し、アルジェリの報酬は10万ドル(約1080万円)だったが、この勝利によってパッキャオへの挑戦が決まったのだから、大きな収穫があったといえる。

アルジェリは1984年3月2日、イタリア系の父親とアルゼンチン系の母親のもと、ニューヨーク州ハンティントンで生まれた。フルネームは「クリストファー・マーク・アルジェリ」という。10歳の中国拳法を始め、15歳で段位を取得。16歳のときにはキックボクシングを始め、高校ではレスリングにも勤しんだというから、格闘技全般が好きなのだろう。その後、キックボクシングではISKAという団体のウェルター級世界王座と、WKAという団体のS・ウェルター世界王座獲得という実績を残している。

こうした一方、アルジェリはインテリとしても知られている。大学で栄養学の修士号も取得しているのだ。ちなみに戴冠から3ヵ月後の9月、母校で講演した際には1万1000人もの後輩や関係者、ファンが集まったと伝えられる。

相手との距離を保ちつつ冷静かつ正確さが求められるアウトボクシングは、頭脳明晰なうえ体格にも恵まれたアルジェリには最適な戦闘スタイルなのだろう。


Written by ボクシングライター原功

クリス・アルジェリ

クリス・アルジェリ

©NAOKI FUKUDA

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