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コラム / 海外ボクシングコラムVol.112

<世界のトップボクサー>
病魔をノックアウトした「ミラクルマン」
ダニエル・ジェイコブス(アメリカ)II

10年7月31日、ラスベガスでWBO世界ミドル級王座決定戦に臨んだジェイコブスは4回まで主導権を握っていたが、5回に逆転のTKO負けを喫してしまった。ロープを背負った状態から脱しようとジェイコブスが踏み出した瞬間、ドミトリー・ピログ(ロシア)の右カウンターを浴びたのだ。ジェイコブスは半回転しながらキャンバスに沈み、屈辱のレフェリー・ストップを言い渡された。

それでも「金の卵」は腐ってはいなかった。
5ヵ月後の再起戦で5回TKO勝ちを収めると、翌11年3月には格下を1回で仕留め復調をアピールした。

病魔はそんな矢先に襲ってきた。トレーニングの最中、足に痛みを感じて引きずるようになったのだ。「最初は単なる筋肉痛か肉離れだと思った」というジェイコブスだったが、やがて歩行するために杖を必要とする状態になり、そこに至って精密な検査を受けることになった。医師から告げられた病名は骨肉腫だった。足の麻痺は背骨周辺の腫瘍が原因だというのだ。すぐにジェイコブスは入院し、手術を受けた。医師はのちの世界王者に「もう何日か診察に来るのが遅かったら腫瘍が大きくなり、命にかかわる危険性があった」と明かしたという。

手術の甲斐あってジェイコブスは快復。再び健康体を手にしたニューヨーカーは、医師の反対を押し切ってリングに戻る決意を固める。12年10月、ジェイコブスは大勢の支持者が見守るなか、ブルックリンで1回TKO勝ちを収めて1年7ヵ月ぶりに戦線復帰を果たした。

ここからはまさに「ミラクルマン」そのものの快進撃といっていいだろう。5回終了TKO勝ち、4回TKO勝ちを収めたあと13年8月には世界ランカーのジョバンニ・ロレンソ(ドミニカ共和国)を3回TKOで屠りWBC米大陸王座を獲得。自力で世界上位に戻ってきたのである。そんなタイミングでWBA王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)が「スーパー王者」に昇格、ジェイコブスに王座決定戦のチャンスが巡ってきたのだった。ボクシングの神様のお祝いだったのかもしれない。そして前述のようにジェイコブスはジャロッド・フレッチャー(オーストラリア)を圧倒、5回TKO勝ちで悲願の世界王座を手に入れた。

ベルトを腰に巻いたジェイコブスは、歓喜のなかで叫んだ。「これは奇跡だ。入院中は息子が生きがいだったが、いまはリングで戦うことが次のモチベーションになった。強い気持ちを持っていれば何でも勝てるということをボクシングが教えてくれた」


Written by ボクシングライター原功

ダニエル・ジェイコブス

ダニエル・ジェイコブス

©NAOKI FUKUDA

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