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コラム / 海外ボクシングコラムVol.104

<世界のトップボクサー>
2階級制覇達成の「欧州のキング」
アルツール・アブラハム(アルメニア/ドイツ)II

プロ転向からわずか2年4ヵ月、19戦目(全勝17KO)でIBF世界ミドル級チャンピオンになったアブラハムは当時26歳。このクラスには3団体統一王者ジャーメイン・テイラー(アメリカ)もいたが「アブラハムの方が強いんじゃないか」という声は少なくなかった。

そんなアブラハムに大きな試練が待ち受けていた。エディソン・ミランダ(コロンビア)を相手にしての3度目の防衛戦のこと。序盤、26戦全勝(23KO)という無類の強打を誇るミランダのパンチを浴びたアブラハムは4回にアゴを骨折。その後、バッティングを受けるなどしたため口から鮮血を滴らせながら戦いを続けなければならなかった。試合途中でドクターのチェックも入ったが、アブラハムは棄権することを断固拒否、最後まで試合を続けた。相手がローブローなどの反則で計5点のペナルティを受けたこともあり、アブラハムは3対0の判定勝ちを収めてベルトを守り切った。勝利への執念、ハートの強さには多くのファン、関係者が驚かされたものだ。
「キング」の異名は伊達ではない。これと前後してアブラハムはドイツ国籍を取得している。

治療のため8ヵ月のブランクをつくったもののアブラハムは07年5月には戦線に復帰。元世界チャンピオンのラウル・マルケス(アメリカ)らを相手にベルトを守り続け、09年には防衛回数を二桁の10に伸ばした。これを機に「キング」はさらに大きな夢を求めてS・ミドル級に転向した。

しかし、身長175センチ、リーチ183センチのアブラハムにとってS・ミドル級はハンディキャップの多い階級でもあった。

世界チャンピオンふたりを含むトップ選手6人が参加した注目のイベント、「スーパー・シックス」に参戦したアブラハムは、初戦こそ勝利で飾ったが、2戦目に11回反則負けを喫し、次戦も判定負け。あっという間にキャリアにふたつの黒星が記録されてしまった。さらに再起戦を挟んでアンドレ・ウォード(アメリカ)のテクニックの前にも完敗した。

ガードを固めて圧力をかけ、強引に強打を叩きつける戦闘スタイルは豪快だが、緻密さには欠ける。相手に研究され、その弱点を突かれることが増えた。「もうアブラハムは終わった」とも囁かれたが、本人は戦闘スタイルを変えようとはしなかった。気の強さとともに生来の頑固さも併せ持っているようだ。

それでも12年にはロバート・スティーグリッツ(ドイツ)を破って2階級制覇を達成。翌13年、スティーグリッツとの再戦で負傷による4回TKO負けを喫し33歳で無冠に戻ったが、今年3月には3度目の対決で勝利を収めベルトを奪回。そして2ヵ月後には初防衛戦に臨むなど、まだまだ元気なところをみせている。「コンディションさえ万全なら誰にも負けない。40歳までチャンピオンでいるつもりだ」とあくまでも強気だ。 「引退したら故国アルメニアにボクシング・スクールをつくる」というアブラハムの夢の実現は、まだまだ先のことになりそうだ。


Written by ボクシングライター原功

アルツール・アブラハム

アルツール・アブラハム

©NAOKI FUKUDA

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