パッキャオの後継スター メキシコの若獅子アルバレス
5/7 WBCミドル級王座の初防衛戦
2016.05.06
6階級制覇の実績を持つスーパースター、マニー・パッキャオ(フィリピン)が4月9日の試合を最後に引退したが、ボクシング界には次なるスターが控えている。そのトップにいるのがWBC世界ミドル級王者のサウル・カネロ・アルバレス(25=メキシコ)である。
20歳でWBC世界スーパー・ウェルター級王座を獲得し、25歳で2階級制覇を成し遂げたメキシコの若獅子は5月7日(日本時間8日)、アメリカのネバダ州ラスベガスで元WBA、IBF世界スーパー・ライト級王者、アミール・カーン(29=イギリス)を相手にWBC世界ミドル級王座の初防衛戦に臨む。
髪の毛が赤いことから「カネロ(シナモン)」の愛称で呼ばれるアルバレスは25年前、メキシコのハリスコ州で生まれた。8人兄弟の末弟で、妹がひとりいる。13歳のときに兄に連れられてボクシングジムに行き、それが縁でグローブをはめることになった。ちなみに7人の兄のうちリゴベルト、リカルド、ラモンの3人はプロボクサーになり、なかでもリゴベルトは石田順裕(グリーンツダ)からWBA暫定世界スーパー・ウェルター級王座を奪い取った男として知られる。つまりアルバレスは兄弟世界王者でもあるのだ。
アマチュアで45戦41勝4敗(44勝2敗など諸説ある)の戦績を残し、アルバレスは05年10月にプロデビューした。日本ならば高校1年に相当する15歳3ヵ月という若さだった。5戦目に4回引き分けを経験したが、それ以外は順調に勝利を積み重ねていった。
年間3〜5戦をこなす選手が多いなか、アルバレスは06年=7戦、07年=7戦、08年=8戦、09年=7戦とハイペースでリングに上がり続けたのだから、もともと体が頑丈なのだろう。この間、北米王座、ユース王座など数々の地域タイトルを獲得して世界ランキングを駆け上がっていった。
初めて世界王座を獲得したのは11年3月のことだった。WBCがパッキャオから剥奪して空位になったスーパー・ウェルター級の王座決定戦に出場したアルバレスは、マシュー・ハットン(イギリス)に大差の判定勝ちを収めて戴冠を果たした。5年前、すでにパッキャオからアルバレスへと王座は引き継がれていたわけだ。この王座は元世界王者たちを相手に5度防衛。その後、WBA王者にも勝って王座統一を果たした。
こうした勝利を含めアルバレスは11年のプロ生活で48戦46勝(32KO)1敗1分というみごとな戦績を残しているが、その唯一の敗北が13年9月、フロイド・メイウェザー(アメリカ)に喫したものだ。メイウェザーに4150万ドル(当時のレートで約41億5000万円)、アルバレスに1200万ドル(約12億円)の報酬が保障されたスーパーファイトだったが、23歳のアルバレスはメイウェザーの鉄壁の防御を崩せず判定で敗れた。しかし、そこから再び這い上がり昨年11月、4階級制覇王者ミゲール・コット(プエルトリコ)を破って現在の王座を手に入れている。
その王座の初防衛戦が5月7日、ラスベガスで行われる。アルバレス、カーンともミドル級では体重が軽いこともあり、試合は当該階級のリミットよりも5ポンド(約2.26キロ)軽い155ポンド(約70.3キロ)の契約体重で行われることになっている。04年アテネ五輪の銀メダリスト、カーンはスピードがあるだけに侮れないが、オッズは3対1でアルバレス有利と出ている。馬力とパワーで勝る王者がカーンを捻じ伏せてしまうだろうという見方が多い。アルバレスはその予想と期待に応え、豪快なKO勝ちで新しい時代の幕開けを印象づけることができるか。
Written by ボクシングライター原功