映画

この自由な世界で

イギリスの社会派の名匠Ｋ・ローチ監督が、職業あっせんの仕事を独自に始めたシングルマザーの奮闘と苦悩を通して現代の自由化社会の実態と矛盾を鋭く浮き彫りにした秀作。

社会の底辺で厳しい現実と日々格闘する庶民の姿を、彼らに寄り添いながら温かいまなざしでそっと見守り、世界中の映画ファンから熱い支持と賞賛を得るローチ監督。本作では、会社から突然解雇された後、一念発起して職業あっせんの仕事を自ら始めたひとりのシングルマザーの奮闘を通じて、年来のテーマを鋭く追求。当初は社会から搾取される側にあった彼女が、いつしか別の社会的弱者たちを搾取する側に回ったことに気付いて愕然とするさまを皮肉かつ痛切に描き出し、第64回ヴェネチア国際映画祭の脚本賞に輝いた。