映画史に残る天才子役の演技に思わず涙
修道士たちに育てられた孤児のマルセリーノ少年が、修道院の奥で見つけた十字架のキリスト像に思いを打ち明ける……。少年の「汚れなき」心を描いた名作。製作は57年前だが、マルセリーノを演じたパブリート・カルボの大きな瞳と愛らしい表情には、時を超えるピュアな輝きが宿っている(カルボは2000年に52歳で逝去)。有名な主題歌「マルセリーノの歌」のメロディーや、かなしさと幸福が交錯する結末は、美しい余韻となって永遠に心に刻まれるはず。
あまりにも無垢(むく)なハートは毒にもなる!?
ノスタルジーを感じさせる画風に、奇妙な体形のキャラクターたち。セリフは極力、使わない。そんな作風で知られるフランスのアニメ作家、シルヴァン・ショメ。彼の作品では純粋無垢(むく)な人物が物語のカギを握るが、本作でも、時代から取り残された初老の手品師を「魔法使い」と勘違いする少女が登場する。ありえないほどピュアな彼女の行動は、手品師に愛と勇気を取り戻させつつ、時には傷つける。温もりと、少々の毒の相乗効果で、まさに大人のためのアニメ!
純朴な高校生がショウビズ界で成長
タイトルのオーソン・ウェルズは映画ファンには説明不要だろう。本作は彼が主宰する劇団に入った高校生のドラマ。ホロ苦くも、さわやかな青春ストーリーだ。ウェルズの怪人ぶりはもちろん、くせ者ばかりの劇団メンバー、そして斬新な舞台演出を、主人公の純朴な視点で楽しめる。主演は「ハイスクール・ミュージカル」などでアイドル俳優のイメージが強いザック・エフロンだが、野心や屈折感をあらわにしつつ、要所で共感を誘いまくる。予想外の名演技!
【斉藤博昭 プロフィール】
ハリウッド王道系とイギリスの憂うつ系作品が大好きな映画ライター。この仕事を続けながらも、規則正しい生活が自慢。仕事で徹夜した回数はゼロ(飲んで徹夜は多い!?)で、基本的に太陽と同じサイクル。2012年もこのペースを守りたい!
追いつめられた青年の悲壮な覚悟に涙
イラク国籍のクルド難民の青年ビラルが、恋人のいるロンドンへ密航を試みるも失敗。最後の手段でドーバー海峡を泳いで渡ろうとする本作。家族に結婚を強いられている恋人に会いたい一念で、冷たく荒れた海で泳ぎを特訓する姿に心打たれずにはいられない。そんな彼を助ける水泳コーチを演じるヴァンサン・ランドンの哀愁漂う存在感も秀逸。フランスの港町が抱える難民問題をリアルに盛り込みながら、青年の一途さに胸が締め付けられる切なく悲しいラブストーリーだ。
事件を解く鍵は変わらぬ情熱にあり!
刑事裁判所を退職した男ベンハミンが、新婚の女性が自宅で惨殺された25年前の忘れ難い未解決事件の記憶をひもときながら、驚くべき新事実を暴いていく。基本はサスペンスだが、ベンハミンがいまだ諦めることのできない女性への思いや共に捜査に当たった刑事たちの執念、そして容疑者とされた男の被害者へのゆがんだ執着など、それぞれが胸に秘めた情熱が本作のキモ。人間の簡単には消えることのない情熱に目を向けた時、ベンハミンがたどり着く事件の結末は恐ろしくもロマンがある。
どんな苦難にもバレエへの思いは勝る
1961年に中国の貧しい農村に生まれたリーが、11歳で親元を離れてバレエの才能を開花させていくも激動の時代を背景に亡命を決意する。実話を基にした本作を観ると、大好きなバレエを続けるために、これほど多くのものを失い、または闘わなければならないのかとがく然とさせられる。が、そうした苦難を乗り越えられたのもバレエへの情熱があればこそなのだ。主演のバレエダンサー、ツァオ・チーのパフォーマンスがたっぷり観られるのも◎。
【今祥枝 プロフィール】
ライター(映画&海外ドラマ、時々ミュージカル)。「BAILA/バイラ」「エクラ/eclat」「日経エンタテインメント!」などで連載ほか。著書に「海外ドラマ10年史」(日経BP社)。1月より某BS情報番組の構成に参加しています。
万に一つのミスも許されない航空交通管制官
ニューヨークにある三つの飛行場を離着陸する何千もの飛行機を、事故を起こさないよう安全に誘導する航空管制官たちを描くドラマ。乗客の命を預かる彼らの過酷な仕事ぶりと、職場で起こりがちな人間関係のゴタゴタがコミカルに展開する。主人公のジョン・キューザックをはじめ、ケイト・ブランシェット、アンジェリーナ・ジョリー、ビリー・ボブ・ソーントンという超豪華な4人がメインキャストを務め、それぞれ濃いキャラを熱演。特にワイルド&セクシーな魅力全開だった頃のアンジーがまぶしい。
セレブがパパラッチを逆取材
ドラマ「アントラージュ★オレたちのハリウッド」の主演でブレイクした俳優エイドリアン・グレニアーが、プライベートに介入してくるパパラッチたちを逆取材したドキュメンタリー。自身を追いまわしていた13歳の少年パパラッチに密着するほか、有名スターへのインタビューなどを通して、現在の加熱するセレブ崇拝文化をあぶり出す。エイドリアン自らパパラッチ修行をしたり、パパラッチ少年の行く末を案じてサポートしたり、上から目線ではない丁寧な取材ぶりがさわやかで後味の良い作品。
エクソシストは学校で養成されている
映画の中だけの話だと思われがちだけれど、現在バチカンにはエクソシスト養成講座があり、そこで学んだ人々が悪魔ばらいの儀式を行っているという。その講座を実際に取材したジャーナリストの手記を基に、サスペンスホラーとして映画化したのが本作。名優アンソニー・ホプキンスが、悪魔の存在に懐疑的だった主人公の青年を導くベテランのエクソシスト役を務めてさすがの怪演ぶりを披露している。近代的な設備でコンピューターを駆使して行われている養成講座や、実際の悪魔ばらいの様子なども見ることができて興味深い。

【古川祐子 プロフィール】
映画関連のイベント取材やインタビューをこなす映画ライター。一番寒いこの時期、なぜか屋外でのイベント取材が多くヒートテックとカイロが欠かせない日々。また、「北の国から」の脚本家・倉本聰さんにインタビューする機会があり、ご本人の重厚なオーラに圧倒されて久々にド緊張してしまいました。
アンジーの美しさにウットリ
ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーが共演を果たしたロマンチック・ミステリー。アンジーの役どころは、お尋ね者の恋人を持つ女性エリーズ。ミステリアス&ゴージャスな立ち居振る舞いで、男性たちを魅了するワケありの美女だ。正直、ストーリー展開もオチもユルユルなのだが、風光明媚(めいび)なベネチアの景観と、ファッション誌から抜け出してきたようなアンジーの美貌(びぼう)はタメ息もの。彼女の魅力を満喫するには最高の一本ですぞ。
ヒロインのある秘密に驚がく!
名監督ニール・ジョーダンの出世作。IRA(アイルランド共和国軍)の戦士が主人公というシリアスな題材ながら、中身は男同士の友情がキモとなる秀逸なヒューマンドラマであると同時に、胸が締め付けられるようなラブストーリーでもある、実に見応えのある作品だ。しかも、ヒロインに関するちょっとしたサプライズが用意されており、公開当時に予備知識なしで鑑賞して心底驚いた記憶が・・・・・・。未見の人はこれ以上の情報を入れずに、まずは観るべし!
女たちの悲喜こもごもに涙
西原理恵子原作の映画化作品には、ある共通点がある。それは、ダメ男に苦労しながらも、たくましく生きる女が登場すること。本作のヒロインなおこ(菅野美穂)も、元だんなに愛想を尽かしたバツイチ女。友人のみっちゃん(小池栄子)は浮気性の亭主を持ち、もうひとりの友人・ともちゃん(池脇千鶴)は夫がギャンブル狂で行方不明に。ワケありぞろいの女たちが、小さな港町で育む友情に心がほっこり。人間のおかしさと悲しさを丹念に描いた秀作。
【斉藤由紀子 プロフィール】
テレビ番組やウェブコンテンツでお仕事中の構成作家・フリーライター。正月にダイビング旅行で楽園モルディブへ。偶然、某芸能人カップル(新婚ホヤホヤ)と同じ飛行機に乗り合わせたのですが、とても幸せそうでほほえましかったです。


「汚れなき悪戯」©1987 VIDEO MERCURY FILMS S.L.A.U/「イリュージョニスト」©2010 Django Films Illusionist Ltd/Cine B/France 3 Cinema All Rights Reserved./「僕と彼女とオーソン・ウェルズ」©CinemaNX Films One Limited 2009/「君を想って海をゆく」©2009 Simaye Mehr./「瞳の奥の秘密」©2009 TORNASOL FILMS - HADDOCK FILMS - 100 BARES PRODUCCIONES - ELSECRETO DE SUS OJOS (AIE)/「小さな村の小さなダンサー」©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia/「狂っちゃいないぜ」©1999 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved./「ティーンエイジ・パパラッチ」©2009 RECKLESS PRODUCTIONS ALL RIGHTS RESERVED/「ザ・ライト -エクソシストの真実-」©Warner Bros. Entertainment Inc./「ツーリスト」©2010 GK Films, LLC. All rights Reserved./「クライング・ゲーム」©Copyright Palace(Soldier’s Wife)Ltd. and Nippon Film Development & Finance Inc. 1992/「パーマネント野ばら」©2010映画『パーマネント野ばら』製作委員会