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第82回アカデミー賞授賞式 総評
第82回アカデミー賞はニール・パトリック・ハリスのラスベガス並みの豪華なレビューで幕を開けた。日本人の視聴者には、「この人は誰?」という瞬間だったかもしれないが、実はニール、子役時代にドラマ「天才少年ドギー・ハウザー」で一躍人気者になった有名人。ニールの華やかなショーを引き継いで、ゴンドラに乗って登場したスティーヴ・マーティンとアレック・ボールドウィンも、辛口のジョークで会場に座っているセレブたちをネタに笑いをとって、見事なホストぶりを見せた。
まさに時代を切り開く、女性たちのエネルギーを感じさせてくれた今年のアカデミー賞。コメディエンヌとしての顔を封印し、主人公に壮絶な虐待を加える鬼母役を熱演したモニークは、大方の予想通り、助演女優賞を受賞! オスカー像を握り締めた彼女が夫に向かって、「時には人気のある仕事ではなく、正しい仕事もしなければならないことを教えてくれたあなたは正しかったわ!」と叫んだ時、人気コメディエンヌのモニークにとって、今までのイメージをも壊しかねない今回の役柄への挑戦が、どれだけ恐ろしく、大きな挑戦だったかが伝わってきただろう。
そして、映画「しあわせの隠れ場所」で主演女優賞に輝いたサンドラ・ブロック。実力派ぞろいの候補者の中で、ハリウッドでプロデューサーとしても活躍するパワフルウーマン、サンドラの名前が呼ばれると会場からは大きな歓声が上がった。
だが、今回のアカデミー賞が世界中の女性たちに希望を与えた年として、後世に語り継がれていくことを決定づけたのは、キャスリン・ビグロー監督が、映画「ハート・ロッカー」で監督賞を受賞した瞬間だろう。歌手であり、女優のバーブラ・ストライサンドの「ついに時代は来ました」という言葉で、受賞者はすぐにわかった。史上初となる女性監督のアカデミー賞監督賞受賞! 対抗馬であり、ビグロー監督の元夫でもある映画「アバター」のジェームズ・キャメロン監督は歓声を上げ、立ち上がった。歴史的な瞬間に、会場の全員がスタンディングオベーションで沸き、興奮さめやらぬ中での、作品賞の発表。またもや映画「ハート・ロッカー」の名前が呼ばれ、会場は総立ちとなった。
最終的には、イラクの前線で戦う爆弾処理班の過酷な姿をリアルに描いた映画「ハート・ロッカー」が6部門を制した形になった、第82回アカデミー賞授賞式。2003年から始まり、終わりの見えないイラク戦争。アメリカでは、多くの若者が、今なおイラクという戦地に出向き、命を落としている。いつまで、アメリカは血を流し続けなければいけないのか? 映画「ハート・ロッカー」が評価された裏側には、そんな思いが込められているように感じた。

各賞の発表以外にも、ジョン・ヒューズの追悼や、華やかなダンスショーなどアカデミー賞らしい心に残る場面がある一方で、今年の授賞式は何かが大きく邪魔をしていたように感じられた。それは、スピーチの最後に必ずかかるアカデミー賞のテーマソング。例年にも増して、受賞者が小さなメモを取り出し、製作者たちの名前を読み上げるだけで精一杯のスピーチが多かった中、あっという間におなじみのテーマソングが流れ、途中でスピーチを止めた受賞者もいるほどだった。

全身全霊を懸けて仕事をしてきたからこそ、受賞をすれば感極まり、涙を流す。映画「プレシャス」で脚色賞に初めてノミネートされ、初受賞となったジェフリー・フレッチャーが涙を流しながらしたスピーチは、多くの人々の感動を誘っていた。アカデミー協会は、「泣くこと」を禁止する前に、製作者たちの名前がいっぱい詰まった、あの小さなメモ書きを禁止する方がいいのではないだろうか? そんな印象も残った。






