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土曜オリジナルドラマ 連続ドラマW きんぴか

[主演]中井貴一×[原作]浅田次郎 スペシャルインタビュー

中井貴一、浅田次郎
浅田次郎の原点ともいえる小説「きんぴか」に、名優・中井貴一が命を吹き込む。

WOWOWドラマ初登場となる浅田次郎作品。数ある傑作の中から選ばれたのは、浅田の原点ともいえる初期作品で、義理人情を重んじる一本気なヤクザ・阪口健太が主人公の人間ドラマ「きんぴか」だ。そして、その健太役を務めるのは、WOWOW連続ドラマ初主演となる名優・中井貴一。浅田とは「ラブ・レター」「壬生義士伝」「柘榴坂の仇討」に続き、4度目のタッグとなる。今回はコメディータッチの原作をよりシリアスなトーンでドラマ化する。本作に、二人はどんな思いを抱いているのだろうか。「中井さんにはさほど期待していない」とあえて語る浅田、これに対して「コメディこそシリアスを追求する」と語る中井。厚い信頼関係に結ばれた二人が熱く語る!

Q:

中井さんはWOWOW連続ドラマ初主演、浅田さんはWOWOWで原作がドラマ化されるのが
初めて、ということですが、それぞれ意気込みをお聞かせください。

中井貴一(以下、中井):

WOWOWさんは、以前、三谷幸喜監督の「short cut」(2011年、WOWOW開局20周年記念番組)という単発ドラマに出演したことはあるんですが、こういった連続ドラマは初めてになりますね。今、コンプライアンスの問題で表現の自由を奪われつつある時代の中にあって、WOWOWさんのような有料放送は、さほど気を遣わずに取り組めるという点では、とても有意義な時間を過ごさせていただいています。今回、僕はヤクザを演じているんですが、最近は「ヤクザ」というだけで撮影がしにくくなる。エンターテインメントの社会が狭くなりすぎている…という思いもあり、逆にこんな時代だからこそ、あえて「きんぴか」のようなドラマを作る意義があると感じています。

浅田次郎(以下、浅田):

この小説は25年前くらい前に書いたものなので、映像化したいというお話をいただいた時は、正直、「ええ?」って驚きました。ただ、その当時、社会の話題になっていたことが、時代がめぐりめぐって、また同じようなことが出てきている。不思議な感じがしましたね。これはきっと大ヒットするんじゃないでしょうか、映像の神様がついているような気がします(笑)

中井:

今、浅田先生がおっしゃったように、時代は回るというか、元に戻るというか、「きんぴか」は今の時代とピッタリなんですね。ヤクザの組織が分裂したり、安保法案による自衛隊への疑念だったり、あるいは政治家に対する疑惑だったり…あと2年遅くてもダメだったんですよ。まさに今でしょ! ってことなんですよね。その時代背景に「きんぴか」をどうシンクロさせ、生かしていくかが難しいところ。WOWOWさんのドラマは、どちらかというと社会派が多いと思いますが、今回はまったく毛色の違う要素も含まれているので、今、みんなで必死にもがいて作っているところです。

Q:

中井さんと浅田さんは、本作で4作目のタッグ(「ラブ・レター」「壬生義士伝」「柘榴坂の仇討」)となりますが、お互いにどのような印象を持たれていますか? また、本作に懸ける思い、期待することがありましたらお聞かせください。

浅田:

中井さんとは長いお付き合いで、これまでの作品でも素晴らしいお芝居をされていたので、何の不安もなければ、期待に胸を膨らませるということもないです。「あ、中井さんだよね」っていう感じですね。もちろん、安心しておまかせできるというポジティブな意味ですよ(笑)

中井:

いやいや、褒め言葉かどうかということは別にして、僕ら役者にとって、逆に今の言葉が一番ありがたいんですよ。それはどういうことかというと、原作をなぞったら絶対に失敗するとわかっているので、原作者の方から「すごく期待していますよ!」って言われると、プレッシャーにしかならない。むしろ「期待していないので自由に作ってください」と言われたほうが映像化する上で一番ありがたい言葉なんです。

浅田:

中井さんとコメディでご一緒するのは、この作品が初めてですよね? そもそも僕の出発点はお笑いなんですよ。デビューの時から何の疑いもなく、「自分は一生、お笑いでいく」と決めていたんですよ。「きんぴか」は、実はデビュー前の作品。僕が初めて書いた小説で、この後、「プリズンホテル」に続いていくわけですが、なんだか知らないけれど…(シリアスなイメージが先行してしまったことに対して)思うようにならないものですね。今回、その「きんぴか」を映像化していただけるということなんですが、難しいだろうな、とは思っています。というのも、この小説は、あまり動きで笑わせるものではなくて、平文の叙述で笑わせているはずなんですよ。だから、平文の文章のところで笑うものであって、ストーリーの中で笑うのではない。さて、その辺りをどのようにやって演じてくださるのか、というところは興味がありますね。

中井:

その通りだと思います。まさにそこが難しいところだと思いますね。浅田先生の作品をやるときに心掛けていることがあって、小説っていうのは、映像よりも常に上にあるものだと僕は思っているんです。浅田先生は別物だと言ってくださるんですが、映像化するものと、原作を僕は同列には考えていません。浅田先生の小説はとても読み易くて、活字離れの人でも読めてしまうところが魅力なんですが、そのまま映像を見やすく作ってしまうと、絶対に失敗する。僕は「この作品はコメディです」と台本を渡されると、その中のシリアスな部分、悲劇の部分を探すようにしています。つまり、悲劇の部分があればあるほど、コメディとのギャップが生まれるので、お客さんは笑えるんですね。以前、浅田先生の「壬生義士伝」という作品をいただいた時に、まず台本の中で探したのがコメディの部分でした。僕が演じた主人公・吉村貫一郎という人間の普段のおかしさ、滑稽さの中から、人を殺していく、あるいは生きていくことに対するギャップを作ることが悲劇に繋がる、と思ったからなんです。だから「きんぴか」の中にあるシリアスなものを生かしながら、結果、その中にクスッと笑えるものが入ってくればいいわけで。何よりも僕たちは「きんぴか」を陳腐なものにしたくない、という思いで日々格闘しています。

浅田:

ありがとうございます、そう言っていただけるとうれしいですね。

中井:

ただ、原作よりもいささか年を食っちゃっているので、「よーし、俺、天下取りてーからやっちゃうぜ!」みたいなテンションでいくと、おかしな人になってしまう。その辺りは少し大人の「きんぴか」を見ていただくというカタチになります。それだけは先に申し上げておきますね(笑)

中井貴一、浅田次郎
Q:

今回、中井さんは義理堅い一本気なヤクザ・健太(ピスケン)を演じていますが、どこか共感する部分はありますか? また、浅田さんは、中井さんが演じる健太をご覧になってどのような印象を持たれたのでしょうか?

中井:

健太は、役柄的にはヤクザですが、今、日本男子が忘れかけている義理や人情を重んじるアナログな昭和の男。不器用だけれどまっすぐに生きる一本気なところは共感しますね。

浅田:

僕は小説を書くときに、映像を思い浮かべないで書くようにしていますから、「あ、こういうものですか」という感じでドラマや映画を見ています。だから、自分の中に映像のイメージがないので「ここは違うな」っていう風には思わないんですね。ただ、先程、撮影を見させていただきましたが、中井さん、ヤクザが似合うなってしみじみ思いましたね。

中井:

そういえば、以前、ヤクザ映画に出たときに、学生時代の友達から、「やっとお前に合ったものに出たな」って言われたことがあるんですよ。実はずっと体育会系で来ましたから、学生時代の友達はそっちの僕を知っているので、上下関係を大事にするところだったり、一本気なところだったり、共通点がかなりあるのかもしれない。

浅田:

本当に怖くて迫力があるんですよ。だから、もうちょっと時代が違っていたら、「仁義なき戦い」に出てほしかったなぁって思いますね。あ、でも、実際は優しい方なんですよ、すごく(笑)

中井:

共演のユースケ・サンタマリアさん、ピエール・瀧さんも良かったですね。プロデューサーからお二人の名前を聞いた時、既成の俳優さんよりもミュージシャンとして培った独特の感性をお持ちの方と組んだほうが絶対に面白くなると思いました。実際、一緒にやってみて、このキャスティングは絶妙でしたね。例えば、ピエールさんが演じている軍曹役を、既成の俳優さんが「貴様、これは何々ではないか!」みたいに軍隊風に言うと嘘臭く聞こえてしまいますが、ピエールさんが言うと、「あ、これはありなんだな」っていう気になってしまう。ユースケさんも、まぁ、この方がのちに総理になる器かどうかは別として(笑)、線の細い政治家の元秘書役をクレバーにうまく表現している。肚(はら)、腕、頭の3悪党が、仲良しごっこにはならないけれど、いざという時にどこかで手をさしのべる「人間の繋がり」みたいなチーム感が「きんぴか」の魅力でもありますね。

Q:

浅田さんは、映像化のオファーを受ける際、何かご自身の中に「基準」みたいなものがあるのでしょうか?

浅田:

僕は中井さんとちょっと違って、小説が映像より優位に立っているとは思っていないんですよ。僕の書いた小説を違うカタチで表現してくれるわけですから、クリエイターとしては同じ。ただ、脚本が上がった段階で、ストーリーが変わるのは仕方ないにせよ、自分の伝えたかったテーマが変わってしまうと、これは話が違うぞと。それが原因でご遠慮したことは何度もあります。「きんぴか」に関しては、よくぞ、ここまでうまい具合に料理してくれたな、というのが正直な感想ですね。すごく難しい作業だったと思いますよ。そりゃ、原作に忠実にやっていただければありがたいですが、言葉と映像は違うものですからね。

中井:

そういえば、以前、先生にお伺いした時に、産みの苦しみを味わったことがないとおっしゃっていましたが、スポーンと落ちて来るというか。「きんぴか」もそうだったんですか?

浅田:

そうですね。とくに当時は、ほかに連載の仕事もない、ただのブティックのおやじでしたから、小説のことばかり考えていて、神様がポロポロ降りて来てくれた。もっと書きたいけれど、逆に抑制していたほどです(笑)。僕はこの小説を38歳から39歳にかけて書いていましたが、当時は、小説家にもなってなくて、買ってくれる人もいない状態でした。ただ、自分は近日中に「小説家になる」と信じていたので、月に原稿用紙50枚ずつきっちり書いていったんです。49枚でも51枚でもない、月に50枚、1話ずつ。それを1冊で8話、3巻全部で24話。これを自分で「この日までに最高のものを書かなければならない」と思い込み、締め切りを決めて、本番さながらに書いていた。それもずるずると書くのではなく、締め切り5日前から書き始める。自分は売れっ子で、この日までに必ず書かなきゃいけないんだ! と言い聞かせ、暗示にかけるわけです。

中井:

現実にそうなりましたもんね。

浅田:

だから思い込みが大事ですね、人生、思い込みですよ。

中井:

それは役者にも言えますね。舞台に立って自分をイメージしながらセリフを練習しないと何の意味もない。普段、ペラペラと言えていても、本番の緊張感の中でセリフって出てこなくなる時があるので、それはどこまでイメージできているかによって、NGが出るか出ないかが決まってくる。スポーツなんかもそうですよね、練習でうまい人と試合で結果を出す人がいますし。イメージすることはとても大事なことですね。

浅田にとって、事実上のデビュー作といえる小説「きんぴか」。小説家になることを一途に夢見て書いた渾身の作品だけに、思い入れもひとしおだ。「ヤクザが似合うね」と浅田から太鼓判を押された中井は、期待されることにプレッシャーを感じているようだが、このインタビューを改めて振り返ってみると、やっぱり中井のヤクザっぷりに期待せずにはいられない。男気あふれる中井の佇まい、セリフから、いったいどんな「笑い」がこぼれ落ちるのか。さらには、ユースケ・サンタマリア、ピエール瀧と、どんなアンサンブルを奏でるのか。ワクワクしながらオンエアを待ちたい。

(ライター 坂田正樹)

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