25th

WOWOW

PC版

ご加入はこちら

ふたがしら 撮影道中記

  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10

第一回 四月十七日

『ふたがしら』を
楽しむポイント1

オノ・ナツメ×中島かずき 真逆のふたつの個性が作り出す
新感覚時代劇盗賊エンターテインメント『ふたがしら』

6月からスタートする連続ドラマW初の時代劇盗賊エンターテインメント『ふたがしら』。オノ・ナツメ(原作)×中島かずき(脚本)×入江悠(監督)×松山ケンイチ(主演)という豪華な才能が集まり、期待が高まります。

これから10回に渡り、『ふたがしら』の魅力にいろいろな角度から迫っていきますのでどうぞおつきあいください!

第1回目は、『ふたがしら』の根幹を成す、原作者・オノ・ナツメの世界とそれを脚本化した中島かずきの世界について。おふたりが京都の撮影所に見学にいらしたレポートも交えてお届けします。

場面写真

弁蔵と宗次、そのもの!オノ・ナツメ感嘆

「撮影を見に来るのを楽しみにしてたんですけど、すごく楽しい!」

オノさんは京都撮影所で終始瞳をキラキラさせていました。

撮影は中盤に入った頃で、入江悠監督いわく「手さぐりで撮影してきたなか、ようやく弁蔵(松山ケンイチ)と宗次(早乙女太一)の人物像が見えてきた」と、強い手応えを感じていた時期でした。

話数の順番ではなくバラバラに撮っているため、この日は5話(最終回!)で、弁蔵が盗みに入る家の情報を得るために主人と飲み比べをする場面。東映京都撮影所のスタジオの中に立て込まれた座敷のセットで撮影を見たオノさんは、「酔ってご主人に絡んでいるところを見て、弁蔵がいる!と思いました。まさに弁蔵そのものだし、それに対する宗次の無表情な態度もまさに宗次!漫画が動くとこうなるんだと嬉しくなりました」と絶賛です。

オノさんが描いた『ふたがしら』は、若い盗賊が自分たちの一味をつくるべく、次第に成り上がっていくドラマ。まだ何者でもない弁蔵と宗次が頂点を極める前の不完全な若者の成長劇という側面と、盗みという反社会的なフィルム・ノワールの側面の二つの魅力が匂い立ちます。

「漫画だと、ふたりはまだかっこいいところにたどりつく前段階ではあるのですが、松山さんと早乙女さんが演じてくださると、全然かっこ良くて(笑)。漫画では表現できない、実写ならではの役者さんの色気に惹きつけられます。着物の着こなしもステキです」とオノさん。作戦だったはずなのに結局へべれけに酔ってしまうこのシーンの弁蔵の有り様は、ささやかなシーンではあるものの、脚本の中島かずきさんも入江監督もさりげなくこだわった部分。松山さんが弁蔵の酔った動きのアイデアを自ら出し、現場を沸かせていました。

オノさんは中島さんの脚本について、「原作を無駄なくまとめてくださって、ひとつひとつのエピソードが、伏線として生かされ、最後にちゃんとつながっていくことに驚きました」と信頼を寄せていました。

場面写真
場面写真

中島かずきが力を入れたシーンとは?

脚本を手掛けた中島かずきさんは、「最初にプロデューサーから脚本のオファーがあったとき、オノさんの作風はオフビートで、ぼくはオンビートと真逆だから、オノさんの世界観を壊さないだろうか?と思ったりもしましたが、ぼくが脚本を書いた舞台『蒼の乱』(14年)に出演した松山ケンイチさんが主演を務めるというのもあり、また、盗人ものはぼくも昔から好きな世界で、憧れていた『必殺』シリーズの初期などを思い出しながら楽しんで書きました」と語りました。

松山さんも早乙女さんも、中島さんが座付き作家をつとめる劇団☆新感線の舞台『蒼の乱』に出演しており、中島さんは、ふたりの個性を加味しながら『ふたがしら』の脚本を書きあげたということです。
「『蒼の乱』で、ふたりのやりとりがちょっとだけあったので、あれを全編描けたのは楽しかったです。ふたりをイメージしながら、一直線で無鉄砲な弁蔵と、クールでつっこみ役の宗次を思いきり描きました」

原作と少し違うところについては、「原作をリスペクトし、作家が大事にしているところを大事にした上で、原作ではムードになっている部分に少し説明を加えています」とのこと。例えば、盗みの場面の描き方。
「オノさんはわざと漫画ではそこは描いてないとも聞いたのですが、せっかく泥棒ものをやるからには泥棒シーンをディテール含めてアイデアをもって描きたいというのはありました。入江監督も『ミッション:インポッシブル』が好きで、ああいうのがやりたいとおっしゃっていたんですよ」
こうして、表の顔は町人でありながら、盗賊という裏の顔を持つ男たちの騙し合いの頭脳戦と、華麗なる盗みのテクニックが炸裂する痛快盗賊エンターテインメントが生まれました。

また、舞台等で時代劇をたくさん描いている中島さんが撮影現場を見た印象は、「ろうそくの炎のゆらめきを生かしているような照明が良かった。もっといまどきのフラットな画面なのかと想像していたら、奥行きと陰影のある画になっていて出来上がりが楽しみです」とのこと。入江監督や中島さん、そしてオノさんが昔好きだった時代劇の雰囲気も盛りこまれているようです。

弁蔵、宗次の「ふたがしら」のように、入江監督と中島さんの「ふたがしら」体制で、それぞれの才能と個性が掛け合わさって、よりパワーアップしたドラマ『ふたがしら』にどうぞご期待ください!

場面写真
場面写真

ライター 木俣 冬

第二回 五月一日

『ふたがしら』を
楽しむポイント2

入江悠監督が初めて挑む時代劇は、
さまよえる若者たちの旅物語

WOWOW初の連続時代劇『ふたがしら』のみどころをお伝えするレポート連載第2回は、入江悠監督の登場です。

2009年、映画『SR サイタマノラッパー』に注目が集まりシリーズ化もされた入江監督は、最近では『日々ロック』や『ジョーカー・ゲーム』など意欲的に映画作りをしています。

同時にテレビドラマも多く撮っていて、WOWOWでは『同期』『ネオ・ウルトラQ』に次いで今回が3作目となります。

監督は、3月から4月にかけて東映京都撮影所での撮影を終え、4月末現在、編集作業中。その最中に取材を受けていただきました!

場面写真

弁蔵の熱さと宗次のクールさが際立った

――いま、どれくらい進行していますか?

入江 1話は、あと音をつけるだけです。

――早く完成を見たいです。どんな感じに仕上がっていますか?

入江 例えば、盗みのシーンはテンポよく、心理的な駆け引きなどの人間ドラマ部分はじっくり見せるなど、速いところとゆったりしたところの緩急あるものになったと思います。物語の展開自体は速くて、1話のなかに見どころが盛りだくさんですよ。脚本の中島かずきさんが原作にないエピソードも盛り込んでくれているので、相当内容が濃くなりました。

――映像化するとき生かした原作の魅力を教えてください。

入江 男ふたりのバディものであり、しかも彼らが江戸、川崎、大阪と旅をしていくところが面白さだと思っています。弁蔵と宗次は、わりとふわふわとノープランで流されるように生きていて、その姿は、現代の若者と近いところがあるような気がするんです。僕なんかもそうで、30代になってもモラトリアム気分が抜けない。いま自分がいるところからどこかに行きたいと漠然と思いながら、でもなかなか行けないという気分を、弁蔵と宗次の姿に重ねながら、最終回で彼らがどれくらい成長するか、楽しみにしていただきたいと思います。

――ドラマと原作の違いはありますか?

入江 中島さんの脚本は熱くて決め台詞も多いです。原作だと裏側になっている登場人物の熱さを前面に出していますし、コミカル度は漫画よりあがっていると思います。特に、弁蔵はまっすぐ熱い男で、それが空回りするところが魅力で、ドラマはその部分が、松山ケンイチさんの演技も相まって強調されています。そんな弁蔵を、宗次役の早乙女太一さんがつねにクールに見つめることで、ふたりのキャラクターの個性が際立ちました。

場面写真
場面写真

昔ながらの時代劇をリスペクトしながら、新たなトライも

――監督にとってはじめての時代劇です。

入江 もともと時代劇は大好きで、いつか時代劇を撮ってみたかったので、今回お話を頂いたときは嬉しかったし、僕が好きだった時代劇の要素を取り入れていこうと考えました。例えば、マキノ雅弘監督に代表される東映プログラムピクチャーなどが好きで、マキノ監督の『次郎長三国志』シリーズなどを意識して、松山さんと早乙女さんにも事前にDVDを見てもらいました。それから、『必殺』シリーズの初期や『雲霧仁左衛門』の世界のような、陰影の深い画を意識しています。そのいっぽうで、旅ものですから、自然は美しく撮っています。場所の変化や季節の移り変わりを感じるものにしたいんです。

――4月上旬、撮影所で雪降らしもやっていました。

入江 大変だからと反対されたのですが、季節感を出すためにどうしてもやりたくて(笑)。

――いろいろトライされているんですね。

入江 旅する時代劇は、昨今では『水戸黄門』くらいしかないですし、しかも若者が主人公の時代劇というのも最近はあまりないですから、『ふたがしら』はかなりの挑戦作になると思います。

――音楽も異色な感じです。

入江 生楽器のジャズやファンクのノリを取り入れることで、『死刑台のエレベーター』のような音楽と映像のぶつかり合いが出ればと思っています。

場面写真
場面写真

クランクアップしてから、松山ケンイチさんと今回できたこととできなかったことをつぶさに出し合い、反省会をしたという監督。時代劇はまだまだ掘り下げていけると展望をおもちのようです。真摯に熱く創作に向き合う監督は、撮影中も、現場で装置の飾り込みが急遽変更になった際、スタッフと一緒に道具を運んでいました。それについて監督は「僕が手伝うことで少しでも現場の進行が早くなるなら手伝います。昔の東映の監督は、儀式のように、まずセットの床を磨くところからはじめていたと本で読んだことがあって。日本家屋は磨けば磨くほど美しくなりますし、汚せば汚すほど味わいも出ますし、手をかけたくなる気持ちはよくわかります」と語ってくれました。丁寧にひと手間もふた手間もかけて作品をよりよくしていく、昔の時代劇作りから受け継いだ精神が、『ふたがしら』からも滲み出てくるはずです。

ライター 木俣 冬

第三回 五月十五日

『ふたがしら』を
楽しむポイント3

弁蔵と宗次のビジュアルイメージの作り方

『ふたがしら』道中記3回目は、弁蔵と宗次のビジュアルイメージの作り方をスタッフさんのインタビューを交えながら、
ルポします。
まずは時代劇を象徴するカツラ。
町人マゲで月代を剃った(額から頭頂部に髪の毛がない)スタイルで、いかに粋に、いかにかっこ良く見せるか、職人さんの細部へのこだわりが伺えます。

場面写真

時代劇では男性の役者さんのヘアメイクを手掛ける「美粧」と女優さんのヘアメイクを手掛ける「結髪」と担当が
分かれています。
今回、美粧の大村弘二さんにお話を伺いました。「江戸時代、町人たちのマゲは曲がっているのが粋という美意識がありました。弁蔵と宗次は、町人マゲの『いなせの袋付き』と呼ばれるカツラを着用しています。野性味ある弁蔵は、多少マゲが乱れても気にせず、いつもざっくりバサッとさせています。一方、宗次はいつも油をつけて端正に整えているという違いでキャラクター性を出しています」と教えてくれました。劇中、松山さん演じる弁蔵がマゲを曲げる、いなせな仕草に注目です。ちなみに、このカツラの毛は人毛とのこと!

カツラの扱いで気を遣う部分はカツラと地肌の境目。
「カツラをかぶる前に頭に羽二重という布を巻くため、布と額の差が出てしまうので、それをパテ上のもので全部埋めます。それを専門用語で『つぶし』と言います。びん付け油、おしろい、砥の粉などいろいろ混ぜ合わせ、季節によって固さを変えながら、鍋いっぱいに作っておくと1000人分くらいの量になります」と語る大村さん。

場面写真
場面写真

撮影では本番前、現場付きの美粧スタッフさんが松山さんや早乙女さんに駆けよって額のあたりを何度も入念にカツラの境目をつぶします。表情が動くとどうしても境目が動き目立ってきてしまうからです。そのため、役者さんも表情を動かさずに、じっとつぶし作業を待つ必要があるのです。
「フィルムからデジタルになり、いまでは4Kにまで技術が発達したことで、画像が鮮明になればなるほど、『つぶし』の作業は困難になっていきます」と言う大村さん。デジタル技術の発展と人間の手技の闘いでは、長年の研鑽がものを言います。大村さんは髪結い暦32年のベテラン。20代の頃、北大路欣也さんに声をかけられてその出演作を担当するようになり、現在に至ります。
大村さんによる、松山さん早乙女さんの眉や目の繊細な強さのあるメイクにもぜひ、ご注目ください。

さて、性格の違う弁蔵と宗次の対比を際立たせるもうひとつの要素は着物。今回、衣裳スタッフさんとは別に和装スタイリストの桝藏順彦さんが参加し、弁蔵、宗次、甚三郎(成宮寛貴)、おこん(菜々緒)の4人分の着物を担当しています。

入江監督から「弁蔵はやんちゃでラフ、宗次は粋でニヒル、ふたりの対比が出るように、また、回を追うごとにふたりが成長していくところを、生地や柄で表現してほしい」とリクエストされた桝藏さん。回を追うごとに内面が成長して変化していく様子が着物を見ただけでも感じられるように構成されています。コウモリ柄、ドクロ柄、花札柄…京都の織物作家である桝藏さんが用意した着物はどれも珍しい柄ながら上品で、見ていて心が沸き立ちます。
「松山さんは、ワイルドさを出すために着崩しているのですが、大河ドラマで時代劇も経験して着物に慣れているからか、安っぽかったり柄が悪くなったりし過ぎず、程よいところを見極めるのが非常に巧いです。早乙女さんは、松山さんと逆に端正に着ていただいていますが、とくに無地で薄い色の着物の着こなしが素晴らしい。普通、弱々しく見えてしまうところを早乙女さんは凛と見せていました」と桝藏さんはふたりの着こなしのセンスを絶賛しました。

各話ごとの衣裳チェックはオンエア後の道中記でさらに詳しくお届けする予定ですので、お楽しみに。

この素敵な着物を着付けているのが、衣裳の古賀博隆さん。松山さんや早乙女さんの着こなしの巧さは、古賀さんと現場に付いている服部典子さんの着付けよるところも大きいようです。
「着付けのポイントは、襟元。松山さんは大きく開けて、早乙女さんはきちっと閉めています」と古賀さん。
松山さん、早乙女さんの着付けはもちろん、菜々緒さんへの着付けも鮮やか。頭身が高く、手足も首もとても長く、いわゆる着物を着る日本人体型とはかけ離れている菜々緒さんの襟の抜きや帯の巻き方などが巧みで、盗賊一味の親分の妻らしい艶っぽさがよく出ています。

場面写真
場面写真

古賀さんは、アクション俳優から衣裳の仕事に転向した異色な経歴の持ち主で、これまで膨大な作品の衣装を手掛けてきました。今回、松山さんの着物で馬柄の一枚だけは、京都撮影所に保存していた昔の着物です。
「衣裳合わせのとき、監督が気に入ってそれを使うことになりました。昔の作品の着物もほぼ保存してあります」という古賀さん。東映京都撮影所は1926年からある歴史ある撮影所で、映画に関する様々な資料や撮影のノウハウの宝庫です。着物も貴重な時代劇の歴史のアーカイブのひとつ。古賀さんはじめスタッフの方々がとても丁寧に着物を取り扱っているから、昔のものをいまに生かすこともできるのです。

古賀さんが今回こだわったのが盗賊装束です。盗賊一味にとって、泥棒装束は正装のようなもの。一見、同じに見える黒装束が、一味によって、すべて色合いや帯を変えて変化をつけているそうです。
「江戸の赤目一味を黒、大阪の夜坂一味を紺色にしています。ふたつの組は反目するので、黒同士だとわからなくなりますから。着物の袖もシルエットで見分けがつくように変えています」

自分たちの一味をつくる弁蔵と宗次が、どのような盗賊装束に身を包むのか、そのあたりも意識して、作品をお楽しみください。

ライター 木俣 冬

第四回 五月二十九日

『ふたがしら』を
楽しむポイント4

オープンセットで時代劇を撮影していると活気づく

「オープンセットで時代劇を撮影していると活気づく」そのように、今回、東映京都撮影所の方々は『ふたがしら』の撮影を大いに歓迎してくれました。
じつは、東映京都撮影所のオープンセットで江戸モノの本格時代劇の連続ドラマが撮影されるのは久しぶりということ。近年、時代劇作品の製作が減っているため、残念ながらオープンセットでの時代劇撮影が少なくなっていたのですが、今回、入江悠監督が目指す“正統派時代劇の良さを取り入れながら現代の空気感を感じる”『ふたがしら』の撮影に、東映京都撮影所は大きな力を貸してくれました。撮影道中記4回目は、東映京都撮影所と、京都の職人さんの技に焦点をあてます。
60年以上の歴史が続く、京都で一番歴史のある太秦の東映京都撮影所。現在稼働している11のスタジオと、53.000㎡の広大な敷地のなかに江戸の街並みを再現したオープンセットがあり、オープンセットは、宿場町や遊郭、長屋、御池のある船宿、城の大手門、白壁などの様々な建造物が建てられています。

場面写真

江戸、平塚、川崎、大阪と旅する主人公・弁蔵(松山ケンイチ)、宗次(早乙女太一)の成長記でもある『ふたがしら』は、このオープンセットを、ときに江戸、ときに大阪に見立てながら、目一杯使って撮影されました。
例えば、大阪の活気溢れた盛り場を、弁蔵と宗次が二日酔いで歩く三話の一場面。通称「二丁目」と呼ばれる区域(オープンセットでは撮影場所がわかりやすいように区画を指定してあり、南北の通りは西から東へ順に0丁目、一丁目、二丁目、三丁目、四丁目と呼ばれています)で、大阪らしく賑やかに屋台が建てこまれたところを、エキストラの方々が町人に扮して闊歩していきます。奥行きのある通りを賑やかにみせるために、助監督が、どんつきの建物の2階の窓に遊女を配し、通りをのぞいているように演技指導しているのを見た入江監督は「良い感じです!」と笑顔を見せました。
この場面、商人の街=大阪ということで、町人たちの活気が重要です。録音技師の佐俣マイクさんが「『雰囲気』(ガヤガヤした声)もらいます」とエキストラさんの声を別に録る場面も。松山さんたちの芝居中も、この『雰囲気』を出すときもありますが、あまりに元気がよくて松山さんたちの台詞がかき消されてしまうこともあり、佐俣さんは『雰囲気もう少し落としてやー』と声をかけ、松山さん、早乙女さんが「いま、聴こえました?」と芝居の確認に来ていました。街の喧騒に混じった弁蔵、宗次の場面で、音で街のリアリティーを表現するのに皆で腐心しているのです。また、入江監督は佐俣さんに時代劇特有の言葉遣いに関してアドバイスをもらったと感謝していました。

現場でひとときも立ち止まることなく動き回るスタッフ集団、それが照明部です。あるときは屋根のうえに、あるときは水路のなかに、照明スタッフが風で煽られながらも、畳一畳くらいもある大きなレフ板を、毅然と持ち立ち続けています。彼らを率いる「かしら」である照明技師は『大奥』(CX)、『大奥~誕生』(TBS)などを手がけた川南秀之さん。カツラをつけた役者さんや街並のセットなどが川南さんの繊細な照明で、美しく重厚感ある世界観が構築されていきます。とくに、昔ながらの時代劇の照明は、昼間のロケでも太陽光を遮ったうえで、照明を当て虚構の世界を作りあげてきたそうです。また、特にこの作品は闇の中で仕事をする盗賊たちを描くため、闇の美しさや黒の艶の表現にはこだわっており、時にはスモークをたくさん焚いて陰影を作り出します。
さらに悩ましいのは、今年の京都の太秦の天気。にわか雨が降ったり、時雨れたり、あられが降ってきたり…。そのうえで、川南さんは1カット1カット、めまぐるしく変化する天候を読み、キャラクターの心象風景やストーリーに惹きこむ照明をつくっていくのです。

場面写真
場面写真

それにしても、変わりやすい天気のため撮影が中断してしまううえに、今年の3月の京都はダウンコートが必要なくらいの寒さで急激に冷え込みました。にもかかわらず、連日撮影を続けるスタッフとキャストたちの忍耐力と集中力には凄まじいものがありました。こんなとき、オープンセットのなかで待機できるのも助かります。建物のなかは、俳優の待機場や機材置き場としても活用されているのです。
突然降ってきた雨が止むのを待つ間、入江監督は、美術スタッフと相談して、次の場面を撮影する通りの途中に、団子屋をつくることに。それまで、うどん屋だった建物を解体し移動、中の道具を入れ替えて、あっという間に団子屋が出来上がりました。
オープンセットには床下に車のついた可動式の建物もあって、その機能も活用して街の雰囲気を変えることもあります。『ふたがしら』は江戸から大阪へと主人公が旅する作品のため、撮影所から外に出てロケを行うこともあるほか、オープンセット内では建物を動かしたり、撮影アングルを工夫したりして、街並みに変化をつけていきます。限られた空間のなかで、ひとつとして同じ街を作らないようにするには、大変重要となるのが、美術です。美術は入江監督と同世代の松崎宙人さん。美術スタッフの装飾で、オープンセットはまったく違う街に生まれ変わります。今回、江戸の街は寒色系の装飾、大阪へと西に進むにつれ暖色系の装飾になっていくという色彩設計をしています。今回、オープンセットで東から西へと移動していくのを表現するため、監督と撮影、照明、録音、美術の各パートのスタッフとアイデアを出し合い、光量や音の変化、装飾の色彩で移動感を表現していく大きなコンセプトが作られました。

オープンセット以外でも美術チームが作り出す「ふたがしら」の世界が、オノ・ナツメさんの原作に流れる「粋」な世界観を存分に表現しています。沖縄の文様が大胆に配された襖や、若冲を思わせるような構図の掛け軸、さりげなくキャラクターのモチーフに関連した水墨画など、ひとつひとつの選び抜かれたセンスある美術品が、粋で洒脱な作品世界を形作っているのです。現場に撮影見学にいらした原作者オノ・ナツメさんは、松崎さんの選んだ上部分がアール状の曲線を描く床の間が「珍しい」と注目していました。これは、撮影所の倉庫の奥深くから引っ張りだしてきたものだそうで、長年の蓄積を生かしながら、新しい発想に転換していけるのも、歴史ある撮影所の賜物でしょう。
佐俣さん、川南さん、松崎さんは京都のスタッフ、入江監督、撮影カメラマンの冨永さん、チーフ助監督の吉田さんは東京のスタッフと、今回、京都、東京の混成チーム。京都のノウハウを大いに生かしながら、これまた新しい方法論を創造していこうという柔軟な姿勢で制作が行われました。

場面写真
場面写真

この撮影の様子を、一般のお客さんも目撃しています。東映京都撮影所のユニークなところは、オープンセットが撮影に使われるのみならず、ふだんは一般公開されていること。時代劇の街並のテーマーパーク「東映太秦映画村」(こちらのオープンは1975年)を観に行ったら、映画やドラマの撮影が目と鼻の先で行われていた!なんてラッキーなこともあるのです(撮影の予定は前日に公式サイトでわかるようになっていますが、なかには見ることができない作品もあります)。撮影中は、映画村のスタッフさんが常備している「おしずかに」と書いた特製扇子を見学客の方々に見せて、協力を仰ぎます。いい緊張で撮影するスタッフと俳優、笑顔で静かに見守るお客様たち、皆で作品を作り上げる一致団結感も東映京都撮影所の魅力。これからも、豊かな技術や知識、経験のもと、撮影所の伝統を継承してほしいと願ってやみません。『ふたがしら』も、伝統のバトンを受け取り、先に繋げる走者のひとりです。

ライター 木俣 冬

第五回 六月五日

『ふたがしら』を
楽しむポイント5

松山ケンイチさん、早乙女太一さん
インタビュー

『ふたがしら』の放送開始もだいぶ近づいてきました。道中記5回目は、東映京都撮影所の撮影中に行った、松山ケンイチさんと早乙女太一さんのインタビューです。撮影中のヴィヴィッドなお気持ちをお読みください。

場面写真

――まずは、作品の魅力を教えてください。

松 山 盗賊、相棒、若者の成長譚、時代劇……とぼくの好きな要素がつまっています。原作を読んですぐ、これを映像化したい!と思ったくらい魅力的でしたし、それを、中島かずきさんが再構築した世界観がまたすばらしくて、演じていて幸せです。

早乙女 時代劇というと、侍中心のものが多いなか、盗賊が主役ということは新鮮です。ぼくがいままで舞台でやってきたものとも全然違う、いなせな町人の時代劇を楽しみながら演じています。

――ご自分の役をどう解釈していますか?

松 山 まっすぐで男気がある男ですが、本人は自分のその性格をわかっていない。そここそが彼の魅力だと感じています。それは演じていて気づいたことで、例えば、弁蔵は酒癖が悪くて、飲むとすぐに暴れて、そのときは、それこそ"鬼"みたいに強いけれど、素面のときはだいたいやられてしまう(笑)。強いのか弱いのかわからない、そういうつかみどころのなさが弁蔵なのだと思います。

早乙女 宗次はつねにクールでかっこよくふるまっていて、ひとに感情を読ませないミステリアスなところがあります。でも、じつは何も考えてないのかもしれないとぼくは解釈してみました。最初はそうだった彼が、旅をしながら変わっていくのかもしれない。ぼく自身も、宗次の変化を楽しみにしながら演じているんです。

場面写真
場面写真

――原作だとふたりが年をとったところまで書かれていますが、そういうところまで意識しているんですか?

松 山 『さらい屋五葉』ですね。そこでは、ふたりが"ふたがしら"として盗賊一味を束ねたあとが描かれているけれど、『ふたがしら』のふたりは自分未来を知らないから、意識しないように、『さらい屋五葉』のことはなるべく忘れるようにしています(笑)。

――『ふたがしら』のタイトルどおり、弁蔵、宗次のコンビが魅力です。どんなコンビですか?

松 山 なんといっても、弁蔵と宗次のコンビが面白くできているなと感じています。とくに面白いのはふたりの変化の過程で。ふたりは旅をしながら、いろいろなひとと関わることで変化していくので、いろいろな方向から演技のアプローチをしていきたいと考えています。

早乙女 その旅の過程が、順撮り(時系列に沿って撮ること)ではなく、1話から5話まで入り乱れながら撮っているんです。いままでぼくはこういう経験をしたことないので不思議な気分を味わっています。

――松山さんと早乙女さんのご共演経験は?

早乙女 舞台『蒼の乱』(14年、劇団☆新感線)で共演しています。脚本が中島かずきさんで、そこでもなんとなくキャラ的に雰囲気が似ていました。

――お互いの印象を教えてください。

松 山 早乙女太一くんは、まちがいなく、ふつうの役者の何倍も時代劇の所作や知識をわかっている役者さん。ぼくにとっても、今回、太一くんが必要だったし、いてくれて実際助かっているところが多いんです。

早乙女 『蒼の乱』では4ヶ月近くいっしょで、そのときも芝居についていろいろなことを教えてもらいましたし、今回はとくに、ぼくは映像の経験値が少なく軸も出来上がっていないので、ほとんど松山さんに頼っています。松山さんからは自由に役を発想していいとアドバイスされて、宗次がじつはなにも考えてないかもしれないという解釈もその影響です。例えば、二日酔いしたふたりが歩いているシーンで、澄ましているけどじつは弁蔵よりも悪酔いしているふうに見せたくて、美粧さんにお願いしてマゲを乱しました。

――中島かずきさんの脚本の魅力を教えてください。

松 山 中島さんの台詞をしゃべっていると自然に気分が高揚するほど、熱さを表現できる脚本家で、ぼくはそれがすごく好きなんです。

早乙女 ストーリー運びがわくわくして、台本を読んでいて楽しいです。

――入江悠監督の演出はいかがですか?

松 山 ぼくら俳優やほかのスタッフのアイデアをよくとりいれてくれて、それで気分を乗せてもらっている部分もあると思います。監督のやりたいこともすごく面白いんですよ。例えば、俳優がひと芝居終えたあと、紙がふぁさっと飛んできて、それを拾ってからカットがかかるという演出があって、紙の飛び方がいいかんじになるまで何回も撮り直したことがありました。俳優の芝居がよくても紙の飛び方が悪いとNGという、ぼくらのコントロールがきかない部分はやっていて大変ではありますが、何か挑戦している感じがしていいですよね。

早乙女 カットを細かく割らずに、芝居を長く撮ってくださるので、映像に慣れていないぼくにはありがたいです。シーンを細かく割らずに通していただけると、気持ちが途切れないので助かります。

場面写真

――京都撮影所はいかがですか?

松 山 年期の入ったオープンセットにはそれだけで充分説得力あるうえ、脇を、主に時代劇の所作に慣れていらっしゃる京都の俳優さんが固めてくださっていて。こうして確立された時代劇の世界のなかで芝居ができることが心地よいですし、そこに甘えることなく、自分も浮かないようにやらなくてはと思わされます。

早乙女 ふだんの舞台だと、平面的な背景が多いなか、世界がいっきに360度に広がって、単純にわくわくしています(笑)。撮影所中に、貴重な時代劇の道具や建物がいっぱいあって見ているだけでも楽しいです。

――オープンセットやロケ、4月に近いというのに寒くないですか?

早乙女 寒いです(笑)。

松 山 寒くないわけがないじゃないですか(笑/この日は撮影中何度も雨が降り、それだけでなく霰のようなものまで降った)。でも、この作品は熱いので、寒くさせないようにがんばっています。

――演じていれば熱くなっていく?

松 山 演じていても、体は寒いよね(笑)。

早乙女 ハンパじゃないです(笑)。

松 山 でもね、そういう圧があったほうが、反発みたいなものが強く出て面白いんですよね。そういうところも楽しんでいますよ。

早乙女 そうですね、きょうもすごく寒くて、体が震えることで、二日酔いの芝居がすごくしやすかったと思います。

ふたり 爆笑

松 山 そうそう、もしぽかぽかした感じだったらそれなりの演技になっちゃう気がするな。身体が弛緩しちゃうと、気持ちも緩んでしまうものだから。というふうに、寒さもいいふうに働いてくれてますよ(笑)。

――身体といえば、盗賊アクションはいかがですか?

松 山 中にはアクションもありますが、盗賊ですから、ど派手な感じではなく、主にひたすら走っています。

早乙女 地味といえば地味ですよね、なにしろ "忍んでる"わけだから。こっそり見張って、こっそり盗んでいます。

松 山 派手なことしていたら捕まるよね(笑)。

早乙女 ぼくは、いままで舞台でさんざん派手な殺陣をやってきたので、音を立てないように動くことが意外と難しくて。

松 山 そう、難しいよね。でも、こういう地味な動きのほうが意外に筋肉を使うんですよ。ゆっくり動いて足がつりそうになりましたから(笑)。でも、こういう隠れる所作って、子供のときにかくれんぼを楽しんだ感覚を思い出してワクワクしますよね。気分はゲーム『メタルギアソリッド』の世界ですね。

場面写真

――放送を楽しみにされている方々にメッセージをお願いします。

松 山 今回、WOWOW はじめての連続ドラマとしての時代劇が実現できたのは、『ふたがしら』がいままでと違った時代劇だからだと思うんです。昔ながらのテイストも引き継ぎつつ、これまでにない独特な味わいをもった時代劇をぜひ楽しんでいただきたいです。

早乙女 いろんな個性豊かな登場人物がいっぱい出てきて、それを見るだけでも楽しい作品と思いますので、是非見ていただきたいです。

松 山 成宮寛貴さんもイケイケな演技をしているし(笑)、強烈な出演者のなかで、ぼくらも埋もれないようにがんばっていますので、どうぞお楽しみください。そして、ぼくはこの作品、続編もやりたいので、そのためには、みなさんに見ていただかないとならないので、ほんとうにお願いします!

ライター 木俣 冬

第六回 六月十二日

『ふたがしら』を
楽しむポイント6

第一話の撮影現場のエピソード

いよいよ、放送開始する『ふたがしら』。第一話の撮影現場のエピソードをお届けします。

第一話は、弁蔵(松山ケンイチ)と宗次(早乙女太一)が世話になった盗賊一味・赤目から飛び出して、自分たちの一味をつくるために西へと旅に出るところが描かれます。
道中記第五回のインタビューで、松山さんと早乙女さんが、目立っては仕事にならない盗賊役なので、派手なアクションは少なめだと語っていましたが、一話では、旅の途中、襲ってきた追っ手をやっつける場面で暴れ回る立ち回りのシーンがあります。その場面は撮影所を出て世界遺産のひとつである仁和寺でロケが行われました。

場面写真

撮影所のすぐそばに、自然が豊富な、時代劇に絶好のロケ地がたくさんあるのが京都のいいところ。これが東京だと早朝から車で何時間もかけて移動する必要があるのですが、京都では撮影所まわりにロケ地が数多く存在します。
この日は朝8時半に撮影所出発、9時にはもう撮影が始まっていました。
木漏れ日が美しい木々の間に、松山さん、早乙女さんが佇み、それを撮影隊が取り囲んでいます。まずは段取り(芝居や動きなどを確認する作業)。お寺の脇の庭で、弁蔵、宗次が歩いていると追っ手たちが匕首を握って襲ってきますが、松山さんと早乙女さんは俊敏にかわしていきます。擬斗(アクション指導)を手掛けるのは東映剣会(とうえいつるぎかい)の殺陣師、清家三彦氏。東映剣会とは、東映京都撮影所の時代劇を支えてきた殺陣の超一流集団です。斬り掛かる動作、かわす動作、様式美が随所に貫かれながら、独自のキャラクターの芝居として成立しているか、清家さんが監督と相談しながら、立ち回りのすべての動きをつけていきます。

場面写真
場面写真

弁蔵と宗次が初めて立ち回るこのシーン。松山さんは落ちていた枝を使って相手を押さえつけるという力技を出し、早乙女さんは右に左にひらりひらりと優雅に相手の攻撃を交わしながら思わぬ機転で身を隠します。しかし、監督はなかなかOKを出しません。何度か撮影を繰り返すと、追っ手役の俳優のリアクションが大きくなっていき、臨場感が高まります。
早乙女さんは動くたびに着物の裾がめくれてちらりと白いふくらはぎがのぞくのが色っぽく、熱くて剛毅な役の松山さんは、股引がみえるくらい豪快に足をあげて相手を蹴ります。対照的なふたりは左右に分かれて独自の闘いを繰り広げ、それがレールに載ったカメラによりゆっくりと捉えられていきます。
鮮やかにふたりの違いが出ていて、それでいて、不思議とふたりのコンビネーションができている印象を与えます。バラバラな個性で噛み合うことのない二人のだけど、お互いを補完しあっている、この共闘シーンによって、やがて"ふたがしら"となっていく関係性が見事に演出されています。
弁蔵、宗次の攻勢に逆上した追っ手が反撃に出て、傷をつけられた弁蔵が「こんなところで終わってたまるか」と啖呵をきるシーン。脚本のト書きにある「目が据わる」のとおり、凄みのある表情をする松山さん。この迫力は、ぜひ本編の放送でお楽しみください。

さらに、一話で注目いただきたい役者が二人います。
一人は、弁蔵が昔なじみの亀吉役の駒木根隆介さん。入江組常連で、『SRサイタマノラッパー』シリーズのMC IKKU役を演じて注目され、「ふたがしら」ではまったく違うキャラクターを演じています。亀吉の名前にちなんだ亀の甲羅柄の羽織もよく似合っていまいました。

場面写真

そしてもう一人は、日本一の斬られ役であり、「五万回斬られた男」の異名をもつ東映剣会の福本清三氏。久しぶりの東映京都撮影所での時代劇撮影ということで、このたびカメオ出演が実現。時代劇が大好きな入江監督も憧れの福本さん出演に感激していました。福本さんがどのシーンに出ているか、ぜひ楽しみに観ていただきたいと思います。
このドラマの楽しみのひとつは、ひと癖もふた癖もある俳優の顔。弁蔵たちの前に、様々な顔つきの男たちが続々登場します。全員クセものというのも、「ふたがしら」の特徴です。
果たして亀吉は弁蔵たちの敵か味方か?いよいよ「ふたがしら」放送スタートです!

場面写真

第一話で印象的なのは、弁蔵の蝙蝠柄の着物。盗賊のヒーローということからバットマンをイメージして、和装スタイリストの桝藏順彦さんが用意したもの。バットマンはダークヒーローですし、西洋では不吉なイメージがありますが、アジア、とくに中国では、古来から吉祥文様とされています。つまり縁起の良い文様なのです。
じつはこれ、正確には着物ではなく浴衣。でも、一般的な浴衣ではなく、ろうけつ染でつくられた奥州小紋という超高級品。しかも限定2点しかない稀少なもので、それをアクションシーンにも惜しげもなく使っていたとは、『ふたがしら』ツワモノです。

ライター 木俣 冬

第七回 六月十九日

『ふたがしら』を
楽しむポイント7

いよいよはじまったWOWOW時代劇
『ふたがしら』

いよいよはじまったWOWOW時代劇『ふたがしら』。タイトルバックのホーン・セクションのかっこいい響きに、気分が高まります。“ふたがしら”による盗賊一味を目指す旅をはじめた弁蔵(松山ケンイチ)と宗次(早乙女太一)。江戸から大阪に向かったものの、2話の彼らは、あと少しで箱根の関所というところで、とある目的で再び江戸に引き返すことに。
このドラマ、弁蔵、宗次の股旅モノの側面があるため、歩いているシーンが多いのが特徴です。撮影所のある京都・太秦周辺はロケにもってこいの自然がたくさん残っているとはいえ、草木と道と空ばかりですから、美術スタッフさんが毎回、さりげなくお地蔵さんを配置するなどして道中にも、変化を加えています。

場面写真

江戸に戻るふたりが、3人組の盗賊(川口覚、永沼伊久也、山本道俊)に襲われる街道シーンのロケは、通称「酵素」と呼ばれる場所でおこなわれました。

嵯峨酵素風呂という施設周辺の山中を指し、京都の時代劇では頻繁にロケがおこなわれるとのこと。弁蔵、宗次を追いかけてきた三人組の盗賊は、威勢はいいがかなりへっぴりごしという愉快なキャラクター。この三人組のひとり、子乃助役の川口覚さんは、世界的演出家・蜷川幸雄さんの若手俳優を集めた劇団・さいたまネクスト・シアターで主役を演じてきた役者さんです。

朝、キャスト、スタッフがバスに乗って、酵素風呂の途中の山林で下り、撮影準備開始。雨上がりでそこここにぬかるみがありますが、スタッフがほうきではいて地面をならし、さらにその上に近くで集めてきた落ち葉をかぶせ、あっという間に道をつくっていきます。

場面写真

木漏れ日や鳥の声が響くのどかな風景のなかで、俳優さんたちは、わらじを履いてスタンバイ。
京都の撮影では、俳優さんはいつも自分で椅子を持ち歩いて、待機中はそれに座るのだそうです。松山さん、早乙女さんも自分で椅子を持ちながら現場を移動します。
街道を歩いていくところではスモークが大活躍。カメラに映らない土手の上や下に、バケツをスタンバイ。中で落ち葉を焚いてスモークをつくります。あまりに燃えの状態がよくて煙がもくもく沸いてきたため、スタッフが「山火事(起こさないよう)頼むで」と声を掛け合います。このスモークのニュアンスにもこだわって、ありすぎても駄目、なさ過ぎても駄目と、スモークの絶妙な加減を狙って、何回も撮り直していました。風の向きを見ながら、タイミングを監督が注意深く見極めて「いま、いいですね」「上のほうに溜まっていい感じです」など確認を経て、スタートの声がかかります。スモークが焚かれて靄がかかるなか、木漏れ日が差し込み、神々しささえ感じるほど美しいシーンとなりました。

ふたりが盗賊たちに囲まれて並んで立つこのシーン。

弁蔵はカメラに向かって正面に立ち、宗次は斜めに立っているのが印象的でした。早乙女さんに聞くと、「物語の最初のうちは、まだ弁蔵と仲良くないので、ちょっと距離を置いて立ちたかった」とのこと。立ち姿や構図で、ふたがしらの距離感が表現されているこのシーン、物語のなかでも、「ふたがしら」として弁蔵と宗次がどうありたいかを言い放つ大事なシーンです。松山さん自身も、このシーンで弁蔵が放つセリフに、「かっこいい人間とは?」「かっこいい男とは?」という弁蔵の生き方の美学が反映されていて、非常に印象的だったと語っていました。ぜひ、ご注目ください。
ふたりがいよいよ自分たちの目標が明確になっていくのと同時に、彼らの心意気が魅力的に見えてくる2話。どうぞお楽しみください。

場面写真

Pick up!今回の着物:おこんの襦袢

弁蔵、宗次のバディ関係が魅力の『ふたがしら』ですが、赤目一味のおこん(菜々緒)と甚三郎(成宮寛貴)の大人の関係も毎回ドキドキさせられます。

原作のムードが反映された、ふたりの色っぽい駆け引きのシーンは、プロデューサーたっての希望だったとか。脚本の中島かずきさんも入江悠監督も、チャンバラ時代劇やスパイもの、バンドものなど、これまで、ザッツ男子の世界!な作品をつくってきていて、色っぽいシーンには照れがあるようでしたが、大胆でセクシーな、大人っぽいシーンになりました。
演じる成宮さんと菜々緒さんたちのお芝居はどうだったかと監督に伺ったところ、「おふたりとも照れがなくて思い切りがよく、非常に大胆で恰好良いシーンになったと思います」とのこと。

場面写真

2話で、おこんが着ている襦袢、紫地に大きな白い円がポップですが、これ、よく見ると、円のなかに白いウサギがいるのです。かっこいい印象のおこんの、隠された女らしさ、愛らしさが垣間見える気がしますね。

場面写真

ライター 木俣 冬

第八回 六月二十六日

『ふたがしら』を
楽しむポイント8

一癖も二癖もあるキャラクターが一気に登場して、盗みや騙し合いのスリルがますます加速!

WOWOW 連続ドラマ初の時代劇『ふたがしら』、ご好評のなか、早くも3話へ。弁蔵(松山ケンイチ)、宗次(早乙女太一)がいよいよ大阪にたどりつき、夜坂一味に参加します。夜坂一味のご隠居役は品川徹さん、ご隠居のお付きの芳役に村上淳さん、いまの頭・鉄治郎役に橋本じゅんさんなど、一癖も二癖もあるキャラクターが一気に登場して、盗みや騙し合いのスリルがますます加速していきます。

場面写真

夜坂は、亡くなった赤目のお頭・辰五郎
(國村隼)が一目置いていた一味。

辰五郎と甚三郎(成宮寛貴)が彼らと対峙する回想シーンが3話に登場します。強烈な印象を残すのは、夜坂一味が夜、千両箱を担いで水路を走る華麗なる盗みシーン。ロケ地は、1200年前、嵯峨天皇の離宮として建立された大覚寺の周囲を取り囲むお堀。とっぷり日が暮れた頃から撮影準備が始まり、真っ暗ななか、お堀の中に、照明を入念に設置、俳優が走りやすいように、砂利の地面も馴らし、堀に水をかけて艶を出していきます。

この日は日中雨も降り、夜は3月にも関わらずマイナスの気温まで下がりました。そんななか、夜坂一味は水中をわらじで走らなくてはなりません。品川徹さんは79歳の高齢ながら、他の役者さんの先頭にたって水路に降りていきます。さすがにテストのときは、皆、長靴をはいて走ることになりましたが、本番は短いシーンとはいえ、痺れるほどの冷たい水路を走るという、かなり過酷な撮影になりました。

走る一同を、お堀の上から國村隼さんと成宮寛貴さんが鋭い目つきで見つめます。黙って立っているだけで貫禄があり、声を発すれば、夜のお堀に重みのある声がよく響く國村さん。その背後に立つ成宮さんは、できる男の雰囲気を出しながらも、身分をわきまえ、頭を立てている感じがさりげなく漂います。ふたりが隠れた暗闇から浮かび上がるカット。画面左下の影から現れる國村さんの動線がかっこいい構図で決まり、「完璧。素晴らしい」と喜ぶ入江監督。

場面写真

國村さんと成宮さんと夜坂一味が対峙する場面。
夜坂一味が、お頭を真ん中にして、ズラリと並ぶカット。

ひとりひとりが、さりげない距離感とカラダの角度をつくって立ちます。品川さんや橋本さんは舞台出身の俳優なので、瞬時に空間のなかでバランスをとり、かつ自分の存在感も残す、そういうやり方が身に備わっているのだなと思わせます。夜坂一味の全員集合カットは、何かしでかしそうな只者ではない感、かつ関西一を誇る一味の貫録が漂い、ワクワクします。

ちなみに、橋本さんは、『ふたがしら』の脚本家・中島かずきさんが座付き作家をつとめる劇団☆新感線の看板俳優のひとり。劇団では、肉体を駆使したパワフルな役を演じることが多い橋本さんが、『ふたがしら』では肉体表現を抑制したことで醸し出される渋味を効かせた演技を見せてくれます。

場面写真

さて、その夜坂一味は、盗賊であることを隠し、表の生業は船宿を経営している設定。この船宿の外観は、映画村オープンセットの池のあるセットで行われました。そこで、ちらりと映る船宿の入り口脇に置いてあるお地蔵さんにご注目ください。船の舳先を屋根のようにして、その中にお地蔵さんが祀ってあるのですが、美術の松崎宙人さんに伺ったところ、「昔の資料を調べていて、東海道の宿場に実際にこういう船地蔵というものがあったらしいことがわかって、大阪にあったかはわかりませんが、あってもいいかなと思って作りました」とのこと。船宿を守るお地蔵さんに船を使うのは、生活習慣が滲み出ていて、そこに暮らす人々のリアルをさりげなく感じさせ、歴史民俗学的観点からも興味深い掘り下げ方です。

「時代ものの漫画を読むと、既存の映画のスチールか何かを参考にしているだけだったり、ほとんど想像で描いてリアルでないものもよくありますが、オノ・ナツメさんの作品は、描線が極めてシンプルですが、当時の様子をちゃんと調べたうえで、簡略化しているのがわかるんです。だからこそ、今回は、奇をてらった美術ではなく、スタンダードなものにしてみました。時代劇の美術には、あえて新奇なデザインを施す楽しみもありますが、当時の風俗を再現する楽しみもあります。今回は、オノさんの原作に刺激され、後者のモチベーションがいっそう高まりました」と語ってくれました。

リアルといえば、ご隠居の家。こちらは梅宮大社の池の中に立った、茅葺き屋根の茶室を使い、小道具などは装飾スタッフが飾り込んでいます。端正に整えられた庭はセットではできない説得力。画面に鯉が入ったり入らなかったりしているのは、池を泳ぐ鯉にスタッフが餌を与えてカメラ外からコントロールしている努力の賜物です。

江戸と大阪では、空間の広さや小道具の形も違いを表現しているとのこと。赤目と夜坂の屋敷には、ともに「縁起棚」(芸人や水商売の家などにある縁起を祝うための神棚)がしつらえてありますが、松崎さんが地域性の違いを出しているそうです。弁蔵、宗次の鮮やかな活躍は、こういったディテールに支えられているのです。

Pick up!
今回の着物:宗次の歌舞伎俳優の隈取り柄

場面写真

この着物は本来、襦袢(下着)としてつくられたもの。当時の町人男性用の着物には柄ものはほとんどないそうで、その代わり、下着や着物の裏に凝っておしゃれを楽しんでいました。なぜ、見えないところに凝るのかというと、「限られた女性と会うときの自己表現のため」と着物スタイリストの桝藏さん。

この歌舞伎の隈取りマークには特に深い意味合いが。胸などの重要なカラダの位置に、とくに気に入っている隈取り模様を入れているとか。ものすごく気合いを入れたオシャレなのです。「昔のひとの見栄の張り方はかっこいいんです」と桝藏さん。「好きな人に会うとき、その日、着物を脱いで、襦袢を見せられるかどうかもわからないのですけど、準備だけは入念にしてはるんです。しかも、見せられなくてもくじけない(笑)。潔いいいし、その覚悟だからこそ、いざというとき見せることもできるんです」。
オシャレと恋愛の心得として、参考にしたいですね。

場面写真

ライター 木俣 冬

第九回 七月三日

『ふたがしら』を
楽しむポイント9

第4話は弁蔵の故郷、夜坂一味内部の人間もようが描かれるエピソード満載な1時間

WOWOW連続ドラマ初の時代劇『ふたがしら』、残すところあと2話となりました。4話は、大阪の夜坂一味に世話になっている弁蔵(松山ケンイチ)と宗次(早乙女太一)が、一時、弁蔵の故郷を訪ねたり、夜坂一味内部の人間もようが千々に描かれたりと、エピソード満載な1時間になっています。撮影は、『ふたがしら』ルポではすっかりおなじみの東映京都撮影所のオープンセット、太秦近郊京でのロケのほか、松竹撮影所や滋賀県みなくちこどもの森(弁蔵の家の外)などあちこちで行われました。

場面写真

4話の見どころのひとつに、弁蔵、宗次が彼岸花の群生の前で語り合うシーンがあります。

タイトルバックにも印象的にあしらわれている彼岸花は、『ふたがしら』にとって重要なモチーフになっています。この彼岸花に関して脚本の中島かずきさんは、原作にはない台詞を足していて、それがまたじつに説得力のあるものとして効いてきます。中島さんは、脚本を書くにあたって彼岸花について調べ、そこで知り得た事柄にこの作品に符号する部分を見つけて台詞に盛り込んだそうです。

オノ・ナツメさんと中島さんが撮影所に見学にいらしたときは、このシーンの撮影ではなかったのですが、時期はたまたま春のお彼岸でした。彼岸といっても、彼岸花は秋の花。残念ながら春には咲いていません。
彼岸花は、弁蔵が故郷に帰るシーンで印象的に登場します。場面としては大量に咲いていないといけないので、美術部総出で、大量に造花を飾り込みました。目的もなく、宙ぶらりんに彷徨ってきた、ふたがしらの二人も、この彼岸花の前で思いをひとつにしていくのです。
弁蔵の故郷で、弁蔵の父・作蔵を演じるのは、名脇役の蛍雪次朗。農家として畑仕事で家族を養ってきた父親と、家を飛び出て以来初めて故郷に足を踏み入れる息子との男同士の決まり悪いやりとり、照れ隠しゆえの悪態など、素直になれない親子に笑わせられながら、ほろっと泣ける、味わい深いシーンになりました。

場面写真

4話ゲストではほかにも、堀部圭亮さんが参加。

これまた短いシーンのなかに、武士の威厳とちょっとしたユーモアの両方を見せてくれます。
弁蔵が大阪の街を歩いていて、堀部さん演じる大月とばったり出くわし逃げ去るシーンの撮影は、東映のオープンセットで行われました。松山さんは撮影前に腰を右に左に動かして準備運動。松山さんは元々、陸上部ということもあり、脚力があり、堀部さんの顔を見るなり猛スピードでダッシュするときのその速さと瞬発力はかなりのもので、通りすがりの笠屋さんを蹴散らす勢いを見せました。
その様子を映すカメラは、まず弁蔵たちが歩く(走る)通りに面したセットの店舗の軒下にスタンバイ。そのあと、弁蔵が曲がる道にカメラを据えて、弁蔵の顔寄りと背中寄りの両方を撮っていきます。その傍らで、コミカルな演技をする松山さんを、早乙女さんがあくまでもクールな空気で見つめる姿はもはや定番ですが、4話ともあって、宗次にも少し変化が見えてきます。心が近づいてきている心情をちょっとした立ち方で感じさせているのです。

場面写真

弁蔵と宗次の結束が徐々に強くなっていくのと対比して、夜坂一味の芳と鉄の関係がぎくしゃくし
亀裂が入っていく様が描かれる4話。

ご隠居(品川徹)のお付き芳役の村上淳さんと、お頭・鉄次郎役の橋本じゅんさんのWじゅんさんがお寺の境内で反目し合うシーンの撮影が、大覚寺の脇で行われました。
この日はあいにくの雨。激しい豪雨が過ぎ去るのをしばらく待って、小降りになると入江監督は撮影を決行。撮れるだけ撮ろうと攻めの姿勢に、スタッフも俳優も一斉に集中します。日没前ということもあって撮っている間にどんどん空が暗くなっていき、ついには肉眼では真っ暗に。画面の明るさを司る照明の川南秀之さんとVEの三坂裕之さんが助け合い、なんとか撮り切ることができました。

場面写真

そんなときでも入江監督はまったく動じていません。できあがった映像は、暗雲立ちこめる二人の関係性にぴったりな空模様となり、ここでも職人技を見ることができました。そこに映し出された芳と鉄が互いの本心を探り合う渋みあるこのシーン。
村上、橋本の芝居の巧さもありながら、緊迫感あるシーンになったのは、天候や状況など様々な要素が助けになっていたのかもしれません。

Pick up!
今回の着物:お紺の帯の締め方

場面写真

お紺の帯は「お太鼓結び」。江戸時代の終わりの頃に登場した締め方なので、史実的には合っていないのですが、着物スタイリストの桝藏さんは「帯をきれいに見せたほうがお紺らしくなる」とあえてこれを選んだそうです。帯が際立っても、そこばかりが浮いてしまわないように、衣裳スタッフが巧みに着付け、菜々緒さんの長身を生かして美しいバランスを保っています。
 着物姿がいつも艶やかな菜々緒さん、1話に続いて4話でも入浴シーンが登場。長年「水戸黄門」のお銀こと由美かおるさんの入浴シーンを担当し、湯気の立て方、お湯の濁らせ方を見事に熟知しているスタッフが熟練の技を披露しています。ぜひ、こちらも注目してみてください。

ライター 木俣 冬

第十回 七月十日

『ふたがしら』を
楽しむポイント10

ラストは、弁蔵(松山ケンイチ)と宗次
(早乙女太一)が思いきり大胆で、
緻密な盗み仕事を見せてくれます。

『ふたがしら』も早いものでついに最終回を迎えます。ラストは、弁蔵(松山ケンイチ)と宗次(早乙女太一)が思いきり大胆で、緻密な盗み仕事を見せてくれます。夜坂一味が集結して作戦を開始していくさまは、すっかり耳に馴染んだSOIL&”PIMP”SESSIONSの楽曲と相まって、気分が最高潮に高まります。

今回の大きな挑戦として、オーソドックスで正統派なアプローチに挑んだ映像に音楽でワイルドかつ現代的な空気感を出そうと試みたそうですが、みごとに一体化し、お互いを引き立てる相乗効果を生んでいます。かつて『必殺仕事人』も『鬼平犯科帳』も静かな画面にトランペットやギターの熱情の調べが躍動感や色気を加えていましたし、『ふたがしら』でもジャズサウンドで夜の狂騒が描かれ、疾走感と緊張感がより一層盛り上がります。

場面写真

最終回は、その楽曲に乗って、夜坂一味が真っ暗な闇の中をひたひたと走り出します。

腰を落として走る「盗人走り」で、何度も何度も走るのは、なかなか体力が要るようです。「ふたがしら」では、この「盗人走り」が象徴的に描かれています。
第一話では赤目の走り、辰五郎が憧れた夜坂の走り、そして弁蔵と宗次ふたりの仕事での走り、現夜坂一味での初めての走りなど、同じ暗闇を走るというシーンでも、隊列の見せ方やカメラアングルなどで、一味のあり方や、盗人としての信条の違いなどを表現しています。
最終回は、果たしてどんな一味でどんな盗人走りを見せてくれるのか?ぜひご期待ください。

盗み仕事前の大事な「仕込み」仕事にも注目です。4話ラストで鉄の号令で潜入捜査することになる夜坂一味。ふだんは船頭や髪結い、古着屋など表の顔をもって生活している点を活かし、弁蔵と宗次はターゲットである伏見両替屋・松野屋の屋敷へ植木屋に扮して潜り込みます。屋敷は東映京都撮影所の第8スタジオに建て込まれました。

場面写真

縁側で屋敷のご新造さんが髪を結ってもらっていて(夜坂一味の卯之助が既に潜入している設定)弁蔵は、腰を低くして営業スマイルを見せます。それに比べて宗次は変装しているにもかかわらず雇用者に媚びる様子はいっさいなく、クールですっと立っているマイペースっぷり。

この場面、台本ではわずか5行しかなかったのですが、ご新造さんと卯之助の台詞なども増やして少し膨らんでいます。庭師を連れてくる人物も増え、彼らが弁蔵たちを庭に招き入れるとき、どういう言葉を使うのがふさわしいかその場で検討がはじまりました。結果、京都の方言のなかに相手を低く見ているニュアンスまで加味した「こっちやで」に決定。

弁蔵と宗次が、縁側の様子を見計らいながら、そっと蔵のほうへ移動するカットはこれまた台本にはなかったのですが、ご新造さんと卯之助がおしゃべりしている姿越しに撮影されることになりました。入江悠監督はふたりにアドリブで会話を続けるように要求。この芝居によって卯之助がご新造さんの注意を引きつけ、弁蔵たちの仕事をしやすくしているチームプレーを感じます。夜坂のなかでも、ひと際印象に残るオネエキャラ卯之助を演じた山本辰彦さんは、東映太秦映画村に所属する俳優さんで、映画村のアトラクションなどでは武士役としても活躍しています。

弁蔵たちが庭から忍び込む蔵の間は、美術スタッフが力を入れて作りました。 「盗賊の話だけに、5話中、いくつも蔵が出てきて、合計10パターンくらいあります。そのなかで微妙な違いを出している」と美術の松崎宙人さん。「とくに後半はもう最後だし、予算を使いきる勢いで(笑)、思いきり大胆に作り込んでいます」とのことです。

場面写真

そして、いよいよ、夜、その蔵に夜坂一味が盗みに入る場面。

弁蔵が鍵を開けるシーンは松山さんの美しい指先の繊細な動きを狙って撮っています。仕事には繊細な弁蔵ですが、その一方で、両替屋との飲み比べのシーンでは豪放なところを見せつけます。こちらは弁蔵がすっかり酔いつぶれているところを端的に表す松山さんの足の動きに注目。そして、その様子にあきれながらも淡々と酒を飲み作戦を決行する宗次の表情にも注目です。植木屋のシーンといい、このシーンといい、旅をして成長しているふたりですが、性格は変わらないようで。

場面写真

二転三転する展開、巧妙な駆け引き、宿敵との対決、仲間たちとの別れと新たな旅立ち・・・

脚本家の中島かずき節が炸裂した最終話。この50分にたくさんの伏線や意表をつく展開、駆け引きが盛り込まれ、入江監督の鮮やかな演出によってクライマックスへと突入していきます。入江監督がどうしてもやりたかった雪降らしの場面も、名場面となっていますのでお楽しみに!
弁蔵、宗次ふたりのコンビネーションも絶好調!「赤目」の辰五郎の魂を受け継ぐ弁蔵、宗次が、「脅さず、殺さず、汚え金を根こそぎいただく」と大暴れする最終回、どうぞお見逃しなく!

Pick up!
今回の着物:甚三郎の蜘蛛柄

場面写真

1話からずっと、静かな狂気を増幅させてきた甚三郎。最終回ではその欲望が爆発します。「大悪」になっていく甚三郎に用意されたのは、蜘蛛柄の襦袢。悪のイメージといっても、どぎついものでなく、薄いブルー地に白い蜘蛛が上品にあしらってある幽玄なイメージ。甚三郎の佇まいの魅力が、深い悪の道を表現しているのです。

甚三郎役の成宮寛貴さんはファッションセンスの良い方なので、1~5話まで、用意された着物を見事に着こなしていたと衣裳スタイリストの桝藏さん。 着こなしの難しい薄いピンク地でも垢抜けさせてしまうその力を絶賛していました。

ライター 木俣 冬

撮影道中記を読んで、WOWOWポイントをGET!
松山ケンイチ・早乙女太一サイン入り
ポスターに応募しよう!
プレゼント
WOWOWポイントをGETするにはオンラインID登録(無料)が必要です。 登録はこちらから >

TOPへ戻る