情熱の国の魅力を再発見する、イベリア半島鉄道の旅。

スペイン大紀行

サッカーの最高峰リーガ・エスパニョーラでも知られる情熱の国スペイン!初取材の高速列車ユーロメッドを始め、AVEやアルコ、アルビア、アルタリアを乗り継ぎ、イベリア半島を6回に渡って縦横断。芸術の街バルセロナからバレンシアへ。そしてスペイン最盛期の栄華を体感できる古都を巡り、首都マドリードから、ラ・マンチャ、アンダルシアへと駆け抜けます。世界遺産、音楽、踊り、食…スペインの魅力を満喫する鉄道大紀行です。

[PART1]芸術の都より地中海に沿って バルセロナ〜モンセラット〜タラゴナ〜バレンシア バルセロナ モンセラット タラゴナ

[PART1]芸術の都より地中海に沿って

バルセロナ ガウディ建築があふれる、芸術の街
モンジュイックの丘

標高173m。バルセロナ湾が一望できるモンジュイックの山頂は紀元前3世紀から戦略的な要塞として扱われてきました。現在の要塞は17世紀に築かれたもの。反骨精神の証として州の旗が掲げられています。この丘には入り江を見渡せるロープウェイでも、フニクラと呼ばれるケーブルカーでも行くことができますが、いずれも1929年のバルセロナ万博の際に建設されたもの。交通手段が整ったことで、その後オリンピックをはじめ、さまざまな世界的イベントが開かれてきました。

フニクラの駅
フニクラの駅
窓ガラスが大きなロープウェイのゴンドラ
窓ガラスが大きなロープウェイのゴンドラ
オリンピックスタジアム
オリンピックスタジアム
サグラダ・ファミリア贖罪教会

19世紀後半、中央政府に伝統文化を抑圧されたカタルーニャの人々が起こした芸術復興運動「モデルニモス」。この時流に乗り、遺憾なく独創性を発揮したのがガウディでした。中でも、ガウディがモンセラットの岩山からも着想を得たという壮大な建築物、サグラダ・ファミリア贖罪教会は、ガウディ建築の集大成とされ、今でも彼の設計を元に、時代時代の建築家たちによって、建築が受け継がれています。

サグラダ・ファミリア 東の門・誕生のファサード
サグラダ・ファミリア 東の門・誕生のファサード
礼拝堂
礼拝堂
ステンドグラス
ステンドグラス
グエル公園

丘に広がるこの公園は自然と芸術が調和した新時代の住宅地としてガウディが設計しましたが、あまりの斬新さに買い手がつかず建設はあえなく中止。しかし、現在は公園として開放され、人々に憩いと安らぎを与えています。広場を取り巻く手すりやベンチには、ガウディの一番弟子であったジュジョールの装飾により、色鮮やかな破砕タイルが施されています。

グエル公園
グエル公園
破砕タイルの装飾
破砕タイルの装飾
ヤシの回廊
ヤシの回廊
バルセロナ市内

カタルーニャ州の州都であるバルセロナはスペイン第2の都市。10世紀からおよそ400年に渡り、地中海貿易の一大拠点として栄えました。大航海時代の扉を開いたクリストファー・コロンブスが時の女王、イサベル1世と夫のフェルナンド2世に新大陸発見の報告に訪れた街としても有名です。温暖な気候に恵まれ、市場には四季を通じて様々な大地の恵み、新鮮な魚介類が溢れています。市場の一角にはバルと呼ばれる庶民のレストランが並び、市場の食材を使った小皿料理(タパス)で素材本来の味が存分に楽しめます。

コロンブス像
コロンブス像
サン・ジュセップ市場
サン・ジュセップ市場
バルのタパス
バルのタパス
モンセラット 奇岩が連なる、キリスト教信仰の聖地。
モンセラット登山鉄道

「のこぎり」の意味を持つモンセラットは、キリスト教の聖地であり、奇岩が聳える景勝地。世界各国から多くの人たちが訪れます。ギザギザとした岩山の中腹に佇むのが信仰の聖地モンセラット修道院。そこへ年間50万人もの人々を導くのがモンセラット登山鉄道です。1892年に軌間100ミリで建設され、全長5キロ、断崖に沿って急斜面を登り、終点までの標高差は550mにも及びます。鉄道はアプト式のラックレールを使って高度を上げ、切通しを抜けるたびに風景が変わっていきます。

モンセラット登山鉄道
モンセラット登山鉄道
急勾配を登る
急勾配を登る
ピレネー山脈を望む
ピレネー山脈を望む
モンセラット修道院

聖母マリアをまつる、サンタ・マリア・モンセラット修道院は、カタルーニャ地方の人々にとっての心の拠り所。9世紀にキリスト教徒たちが岩山に暮らし、修道生活を営んだことに始まります。300年後、山中の洞窟で羊飼いが黒い聖母マリアの彫像を発見し、修道院が創建されました。敬虔な信者が捧げた蝋燭や香の煙で燻されて黒ずんだこの像は、ナポレオンによる侵略の際にも市民の手で守り抜かれ、現在も祭壇の奥に祀られています。訪れた人々はマリアが差し出す玉に触れ、深い祈りを捧げます。

礼拝堂
礼拝堂
黒いマリア像(ラ・モレネータ)
黒いマリア像(ラ・モレネータ)
エスコラニア少年聖歌隊
エスコラニア少年聖歌隊
タラゴナ ローマ時代の繁栄をしのばせる、世界遺産の街。
タラゴナ市内

バルセロナからユーロメッドで約50分。地中海に臨むタラゴナは2000年以上の歴史を誇る世界遺産の街です。紀元前3世紀にローマ人が進出して港町を建設、金や銀などの鉱物資源や大麦、ワイン、オリーブなどの農作物をローマに運ぶ積み出し基地として賑わいました。ローマ時代にはイベリア半島で最大の都市となり、当時の繁栄を物語る貴重な遺跡が今も至る所に残されていますが、旧市街に見られる中世の石造りの街並みの美しさは圧巻です。

石造りの街並み
石造りの街並み
地中海の新鮮な海の幸
地中海の新鮮な海の幸
貴重な遺跡が点在する(ローマ円形競技場)
貴重な遺跡が点在する(ローマ円形競技場)
タラゴナ大聖堂

12世紀から300年を費やして現在の姿になった大聖堂。入り口には聖母マリアを中心に聖人たちの彫像が飾られています。中でも聖母マリアとともに祭られているのがタラゴナの守護聖人、1世紀に迫害を受けながらも布教を続けたサンタ・テクラ。8世紀以降、イスラム教徒が支配したタラゴナを、ようやくキリスト教徒が奪還したのが400年後の12世紀のこと。以来、困難な時にも信仰を守り抜く誓いとして、サンタ・テクラが祭られました。

大聖堂
大聖堂
聖母マリアの彫像
聖母マリアの彫像
守護聖人 サンタ・テクラ
守護聖人 サンタ・テクラ
タラゴナの食を楽しむ

近海に豊かな漁場が広がるタラゴナでは、古くから活気溢れる漁港として栄えてきました。水揚げされた新鮮な地中海の魚たちは、次々と市場に運ばれ、地元のレストランに運ばれます。魚介類は大きくはありませんがその味はまさに絶品。種類豊富な貝類や、手長エビ、イカ…ヨーロッパでは「悪魔の魚」と言われて敬遠されるタコも、スペインではお馴染みの料理です。また、スペインの代表的な料理である「パエリア」を米ではなくパスタで作るのもカタルーニャ地方ならでは。米を忘れた漁師が採れたての海の幸を使って船で作ったのが始まりと言われる、名物料理です。

パプリカをまぶした焼きダコ
パプリカをまぶした焼きダコ
パスタのパエリア
パスタのパエリア